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大阪市の神社と狛犬 ➎福島区⑤恵美須神社~かち網中奉納の石造狛犬~

大阪市福島区の地図と神社

大阪市には、現在24の行政区があります。淀川のすぐ南側には5つの区がありますが、福島区は此花区と北区に挟まれる位置にあり、大阪都心6区の一つになっています。かつてはこの辺りも難波八十島と呼ばれる地域でした。
福島区には、狛犬のある寺社が6つあります。(地図参照)
恵美須神社は、JR環状線野田駅の東300mほどのところに鎮座しています。由緒書や鳥居には「恵美須神社」とありますが、普通は「野田恵美須神社」と呼ばれています。

野田恵美須神社

■所在地 〒533-0004 大阪市福島区玉川4-1-1
■主祭神 事代主大神・天照皇大神・八幡大神
■由緒  社伝によると、永久元年(1113)、当地を開発した最初の地に大神を勧請して氏神としてお祀りしたのが、当社の起源だとされている。神社に保存されている御影石の石柱には「ゑみすのみや」と刻まれ、その側面には「永久三乙未年三月」(1115)と彫られているので、創建がこの頃であるのは間違いなさそうだ。

「ゑみすのみや」石柱

狛犬1

■奉献年 明治四十年五月(1907)
■鋳工  不明
■材質  青銅製
■設置  拝殿前

野田恵美須神社 拝殿と青銅狛犬
拝殿前青銅狛犬(阿形)
拝殿前青銅狛犬(吽形)
拝殿前青銅狛犬(阿形の尾)

拝殿前に、台座に「明治四十年五月 氏子中」と刻まれた青銅狛犬が安置されている。鋳工(鋳物師)の名前が見当たらないが、小顔で精悍な狛犬である。阿形の小さく開けた口の上下にはびっしりと歯が並び、小さく舌が見える。吽形は閉じた口から4本の牙がのぞき、頭上には立派な角がある。
尻尾は、5本の直毛が伸びやかに立ち上がり、その下に4本が円を描くように外側から内へ曲がる。
かつては境内に青銅製の神馬もあったそうだが、そちらは金属供出に遭い、この狛犬は免れた。

狛犬2

■奉献年 安永八年亥六月廿日(1779)
■石工  不明
■材質  花崗岩
■設置  東門前

野田恵美須神社 東門前鳥居と狛犬
安永8年奉献の石造狛犬(阿形)
安永8年奉献の石造狛犬(吽形)

東門前の鳥居のそばに置かれている花崗岩製の古い狛犬。台座に「安永八年亥六月廿日」(1779)とある。安永年間の狛犬は、大阪に5対残るだけで、その中の貴重な例といえる。保存状態もいい。阿形は垂れ耳、吽形は立ち耳(左耳欠損)で小さな角がある。住吉型の雰囲気が残る一方で、四角い獅子舞顔の上宮型の趣も感じられる。

かち網中

「かち網中」とその仲間の人々の名前が刻まれている。
東門近くに掲げられている説明板

第一台座の側面に彫られている文字は「かち網中」。「かち」とは「徒歩」のこと。摂津国のこの辺りの、島や州がある浅い川では、「かち網漁」と呼ばれる漁法が行われていた。2隻の船を鵜縄でつないで魚を追い込み、徒歩で川に入った人たちが網で魚をすくいとる。この漁をする仲間が「かち網中」である。第二台座には、かち網中の人たちの名前が刻まれている。

「摂津国漁法図解」 かち網漁

狛犬3

■奉献年 不明
■石工  不明
■材質  砂岩?
■設置  境内社:金刀比羅社神殿前

境内社 金刀比羅社
金刀比羅社前狛犬
金刀比羅社前狛犬(阿形)
金刀比羅社前狛犬(吽形)

野田恵美須神社の境内には、熊野社・金刀比羅社・稲荷社が祀られている。これらのうち、金刀比羅社の神前に小さな狛犬が安置されている。像高は30cmにも満たない小さなもので、表面の色が濃く、瓦のような色合いだが、砂岩製だと思われる。奉献年は不明である。

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