アジア紀行~インドネシア・バリ島男3人漫遊編⑪~
push-bike
夜に降り出した雨が明け方まで続いた。空が暗いので、朝になっても起き上がる気がしない。ふと夜中に起きた事件を思い出す。
バスルームの方から突然大きな音がするので目が覚めた。急いで起きて見に行くと、トイレのタンクの下にあるパイプが壊れている。接続部分からすごい勢いで水が噴き出していた。あたりはすでに水浸しだ。あわてて元栓をさがして止水する。何とか水は止まったが、これでトイレの水洗は使えなくなった。バケツに水を汲んで流すしかない。朝になったら、宿の誰かに修理を頼もう。時計を見ると2時だった。
そして朝。ベッドを出て、昨日の出来事を伝えて、テラスで朝食にする。雨は止んでいた。
さて、本日の予定は・・・。はなから決まった予定などないのだが、昨日遠出をするつもりで自転車を借りに行ったがなかったので、今日は朝から借りに行くことにする。
こちらでは店先に「push-bike」と書かれている。motorbikeに対して、ペダルを足で漕ぐ自転車を指す。近くの「JOKER」という店に行くと、すでに全部借り出されて一台もない。焦る。2軒目の「THREE BROTHERS」という店は大丈夫だった。3台でRp.15000。簡単な地図をもらって、出発。
Goa Gajah~Yeh Pulu
ウブドから自転車で行けそうな場所、ということで、目指したのはGoa Gajah(ゴア・ガジャ)とYeh Pulu(イェ・プル)。私は何度か行ったことがあるが、いつも車かバイクだった。自転車は初めて。YとM君はもちろん初めてだ。
さあ、出発だ。最初は疲れもなく快調である。まず南に進み、プリアタンのほうに左折する。建設中のARMA(アグン・ライ・ミュージアム)の辺りで、偶然アグンさんと出会う。ここには美術館だけでなく、新しいホテルやレストランもできるそうだ。ほぼ完成しているレストランに招かれて話をしていると、アグンさんの奥さんもやって来る。コーラとお菓子をごちそうになっているうちに、1時間以上過ぎてしまった。
太陽はもう真上にある。アグンさんたちと別れて、3人でGoa Gajahに向かう。「ゴア・ガジャ」というのは、「象〈gajah〉の洞窟〈goa〉」という意味だ。
バリ島にゾウはいないが、約100年前にこの洞窟を発見したオランダ人が、石窟入口の主要彫像がゾウに似ていると思って「象の洞窟」と名付けたという。また、ヒンドゥー教の神ガネーシャの石像にちなんで名付けられたともいわれる。
ここは聖域なので、サロン(腰巻き)がないと入れない。拝観料と合わせてRp.2,150を支払う。今ではRp.50,000の拝観料をとるらしい。
鬼が巨大な口を開けているような入口から中に入ると、まっ暗な空間にいくつかの石像があった。ゴア・ガジャの周辺は古代遺跡で、沐浴場も発掘されている。
ゴア・ガジャの次はイェ・プル(Yeh Pulu)に向かう。距離的には1kmほどだろうか。道の左右はほとんど水田である。
「イェ・プル」は、「水〈Yeh〉の樽〈Pulu〉」という意味で、湧水があったことに由来する。13~15世紀ごろの遺跡で、約25メートルに渡って浮彫のある岩の壁が続く。物語の場面のようでもあり、日常を描いたもののようでもある。
ガネーシャ像の前にはいつも同じお婆さんがいて、必ずお布施を要求される。写真を撮ると撮影代も要求してくる。たいした額ではないが、これがこのお婆さんの生活の糧になっているようだ。
イェ・プルから今度は山手のほうへ自転車で向かうつもりだったが、詳しい地図がなく、道に迷ってしまった。途中でおかしいと気づき、来た道を引き返す。かなり走ってきたので、戻る道は足にこたえた。せっかく緑豊かなあ田園地帯を走るのだから、ゆっくり楽しみながらペダルを踏むことにする。
ウブドに戻る
しばらく走ると見覚えのある景色になり、やがて建設中のARMA辺りまで戻って来た。この近くに「hare om」という店がある。アグンさんのところで出会った男性がすごくいいイカット(バリ島伝統の絣織物)のシャツを着ていたので、ほめると「hare om で買った」と教えてくれたのだ。場所をきいてあったので、立ち寄ることにした。
ここは以前、友人のバルティがいっしょにやっていたドイツ人の店で、その人が亡くなった後、娘さんが経営を継いでいるらしい。表に看板もなく、知らないと見過ごしてしまうが、いいものがたくさんある。
迷いつつ、イカットのシャツを2枚選ぶ。お金をあまりもっていなかったので、keepしておくように頼む。
クブクに戻ると、M君とYはすでに到着していた。3人で「hare om」に行き、keepしてあったイカットのシャツ2枚($70)と、お土産用にスカーフを3枚($33)買った。M君も気に入ったシャツとスカーフを購入している。
タナロット寺院(Tanah Lot)
午後4時過ぎ、アグンさんのドライバーのマデがクブクに来てくれた。昨日、タナロットの夕日を見に行く約束をしていたのだ。
我々3人と同じクブクに泊まっているハナさんもいっしょに車に乗る。どこをどう走っているのかさっぱりわからないが、1時間ほどでタナロットに着いた。
タナロット寺院は、海の中に船のように浮かぶ断崖の上に立ち、その向こうはインド洋である。寺院の彼方の大洋に沈む夕日を見るために、大勢の人がこの時間になるとやって来る。
西の空から海に向かって、刻々と日が沈んでいく。しかし雲が夕日を隠してしまう。残念だけど、これもまた美しい。
6時半頃、帰途につく。西の空はまだ茜色が残っているが、やがて夜の闇に包まれていった。
7時半、クブクに到着。マデはプリアタンに帰っていく。
アグンさんにお礼を言おうと思って、クブクのワヤンに電話をしてもらうが、不在だった。奥さんが電話口に出たのでお礼をいうが、うまく伝わったか心配だ。
夜はYのリクエストでメキシコ料理のレストランに行く。バリは欧米の観光客が増えているので、いろんな国の料理がある。
YとM君の2人は美味しそうに食べているが、自分にはちょっと胃の負担が大きかった。
外に出ると風が強くなっている。今夜も雨が降るかもしれない。
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