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アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて⑫最終回~

アンボン島最終日

日本を出てこの日で10日目になる。
シンガポールからインドネシアのジャカルタに入国してからは、
ジャワ島~スラウェシ島~アンボン島~セラム島~アンボン島
と、島々を移動してきた。
セラム島まで行ったのは、巨大チョウ「トリバネアゲハ」を探すのが目的だったが、残念ながら出会うことはできなかった。我々が足を踏み入れたのは、マヌセラ国立公園のほんの端っこ、縁の部分だけ。それでも、ここだけでしか味わえない貴重な体験ができたと思う。

大きなアゲハはいたが、トリバネアゲハではなかった。

当初は、セラム島でもっと長居をする計画で飛行機のチケットを用意してきたが、予定よりかなり早くアンボン島に戻ることになった。そして今日の午後にはそのアンボン島を後にして、バリ島に向かうことになっている。

アンボン散策

8時前に目が覚める。まだ眠っている頭の裏側のほうで、今日の行動を考える。午後2時頃には空港に向けて出発しなければならないが、昼過ぎまでは予定がない。港周辺はすでに歩いたので、反対の山側に向かうことにする。
今ならGoogleマップでこんな地図も出せるが、当時は知るすべもなかった。

中央左の赤いマークが宿泊していた Hotel Amboina

簡単な朝食をすませる。ホテルを出て東に向かって歩いていくと、道が昇り坂になってきた。ちょうど町の背後にある丘に続いているようだ。少しのぼっただけでも眺望がすばらしい。民家の前を通り過ぎ、地元の人とすれ違うこともある。

スラマッ パギ(Selamat pagi )「おはようございます」

このあいさつの言葉だけで、人々の表情がやわらぐ。必ずあいさつが返ってくる。子どもたちが集まってきたり、大人が話しかけてきたりもする。写真を撮ると、とてもうれしそうな顔をする。
一軒の家の前にいた人たちの写真を撮ろうとすると、続々と子どもたちが集まって来た。え~、これって一家族?。。。なわけないよね。

この場を離れがたい気持ちを抱きながら、さらに山道を行く。何か薄い円形のものをヤシの葉に載せて、天日で干している。粉物を円形に薄く引き延ばして作った食べ物だろうか。

子どもたちも、当然のように手伝いをする。小さい弟や妹の子守も年上の子の役割だ。

ときどき振り返って海側の美しい展望を確認しながら、やがて頂上とおぼしき所にたどり着いた。大きなパラボラアンテナと塔がある。役人らしい制服姿の男性がいたので尋ねると、電話用のアンテナらしい。日本語で「もしもし」と言うのがおもしろかった。

汗をかいた顔に吹く風が涼しくて気持ちがいい。しばらく景色を楽しんだあと、別の道をたどって丘を下る。すぐに汗がふき出る。腕や首の日焼けした皮膚が水ぶくれのようになって皮がむけ始めている。むける前のぶくぶくした皮の下に汗がたまり、気持ちが悪い。
下りは行きの半分の時間で町に戻ってきた。やはり下界は暑い。ホテルに帰り、すぐにシャワーを浴びる。室内は冷房が効いていて、じっとしていると寒くなるが、温度調節があまりきかない。この寒暖差はからだによくないな。


さらばアンボン、さらばジャニス

ベッドの上でくつろぎながら、そろそろ用意をしなければと思っていると、部屋の電話が鳴った。ガイドのジャニスだった。迎えにやって来たという。
急いでフロントにおりて、チェックアウトをする。3人分のこの日の宿泊費はRp.105,000だった。
まだ少し早いが、ホテルを出発する。空港までの車は、今回もヨンキーが運転してくれる。もちろん無料ではない。これも彼らの仕事の一つだ。

来たときに空港から乗ったタクシーは、Poka~Galala間はフェリーで移動したが、今回はぐるっと回って空港まで行く。2016年には、島の北側と南側を結ぶメラプティ橋(全長1,140m)が開通して便利になったが、この旅をしたときには、まだなかった。

14:30 パティムラ空港に到着。ガイドのジャニスとは、いよいよお別れだ。ちょっと頼りないガイドだったが、彼がいなかったら今回の旅はできなかった。写真を送ると約束して握手する。
搭乗手続きをして、イミグレーションに移動する。パスポートを提示すると、係の人が台帳のようなものに記録している。目を上げると、日本の赤軍派の手配写真が貼ってあった。

アンボンからバリ島のデンパサールまでは、スラウェシ島のウジュンパンダンを経由して所要時間は3時間45分。1時間のマイナス時差があるので、時計では2時間45分後に到着することになる。
アンボン出発が16:00なので、デンパサール空港到着は18:45。
さらばアンボン。そして、さらばセラム。

エピローグ

私とM君と息子のYの3人の、「巨大チョウトリバネアゲハを求めて」という、ほぼ無計画な旅は、こうしてひとまず終わりを迎えました。しかし旅はまだ続きます。この続きは「バリ島」編に移る予定です。


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