「みどり」と「まっちゃ」の残したものは・・・
「みどり」と「まっちゃ」って?
小3の孫曰く、「みどりは『美緑』、まっちゃは『真茶』と書くの。」
「みどり」と「まっちゃ」は、この夏、彼女が飼育していたカブトムシの名前だ。
7月に入った頃、家の前の廊下で一匹のカブトムシを拾った。立派な角を持ったオスのカブトムシだった。どこかから飛んできたのだろう。まさに落ちているものを拾ったとしか言いようがないかたちで、我が家の飼育箱におさまった。
昨年買ったカブトムシゼリーの残りがあったので、それを与えると、美味しそうに食べた。食いしん坊のカブトムシで、庭でできたミニトマトもきれいに食べた。
この子は名前をつけることがないまま、クマゼミが騒がしく鳴くある朝、動かなくなってしまった。孫が庭の片隅にお墓を作った。
その頃、孫が学校から小柄なオスのカブトムシをもらってきた。ほとんど時を同じくして、我が家のベランダに一匹のカブトムシが迷い込んできた。こちらはメス。
孫はこのメスのカブトムシに「みどり」、オスのカブトムシに「まっちゃ」という名前をつけた。なぜこの名前なのかわからない。尋ねると、瞬間のひらめきらしい。
かくして、「みどり」と「まっちゃ」の夫婦生活が始まった。
彼らは餌を食べるとき以外は、ほとんどマットの中に潜り込んでいる。飼育箱の蓋を開けて上からのぞいても、姿が見えないことがほとんどだ。秋の虫のようにいい声で鳴いて耳を楽しませてくれるわけでもなく、時折見せる姿だけを楽しみに、夏休みの一日一日が過ぎていった。
二匹がともにマットの上や餌のところに出てきているのを見た記憶がない。カブトムシは夜行性の昆虫だから、夜中は外に出てきているのだろうか。結局、「みどり」と「まっちゃ」の写真を撮ることがなかった。
夏休みも終わり、9月に入ったある日、角のあるカブトムシがマットの上で動かなくなっていた。「まっちゃ」だ。二匹とも餌をあまり食べなくなって、ほとんど潜ったままだったので、もうそろそろかなと予測はしていたが、ついに「みどり」だけが残されることになった。「みどり」の無事を確認するためにマットを掘り起こすと、小さな白い粒がいくつか現れた。卵だ。急いで土をもとに戻す。
しかし残された「みどり」も、9月の中頃、エサ台の木の横で手足を縮めてじっとしていた。
孫は、「みどり」を庭の楓の木の根元に埋めた。
「みどり」と「まっちゃ」の残したもの
主のいなくなった飼育箱だが、あの白い粒が気になった。あれから2週間は経っているから、もう孵化していてもおかしくない。あのとき小さな幼虫らしきものもいたような気がする。
カブトムシは初齢から三齢まで脱皮して成長し、最後は蛹になって、成虫まで8ヶ月ぐらいかかる。さて、この飼育箱には何匹ぐらいの幼虫がいるのだろうか。
休日の朝、孫と2人でコーナンに出かけ、幼虫飼育用10リットルのくぬぎマットを購入した。庭が日陰になる夕方まで待って、新聞紙を広げて飼育箱の中身を少しずつあけていった。
「いるいる!」
小さいのは1cmぐらい、大きいものは3cmはある。数えると20匹を超えた。土の上に出しても、すぐに中に潜り込んでしまう。全部並べて写真を撮ろうと思っていたが、すぐにあきらめた。
幼虫の飼育は、基本的には1ケースに1~2匹が適当だそうだが、20匹もいるのでとても無理。このサイズのケースだと、1ケース5匹ぐらいまではいけそうだが、すぐに手狭になるだろう。とりあえず、2ケースに前のマットと新しいマットを混ぜて入れて、霧吹きで湿らせ、幼虫を入れる。さらに上からマットをかぶせる。
空気抜きができる蓋をして、ベランダの日の当たらない場所に置く。あとは、マットが乾燥しないこと、コバエがつかないように注意すること、糞の処理とマットの交換・補充に気をつけること、などかな。
幼虫が大きくなったら、別のケースに移すことも考えなくてはいけない。
「みどり」と「まっちゃ」よ。来年の夏が楽しみだね。
孫姫くん、しっかり面倒見なさいよ。