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最高に憂鬱な締め日。

愛瑠と名乗る、私の始まり。



最高に憂鬱な日。

開店前のミーティングをしてる中
席のリザーブの電話がポツポツ鳴り出し…

所詮は他人事と思い
悔しさを押し殺して明るく振舞っていた。

オープンと同時にドアが開き
見慣れた顔のお客様が居た。

勿論、営業などかけていないので
永久指名では無いので
指名は私では無いだろう。

ヘルプの女の子が誘ったに違いない。
これこそ、下克上を目指す
奪い合いの女の戦いだ。

悔しさと覚悟を決めて
待機していると…

黒服に席へ通された。

そして何もよく分からない私に
お客様から…

「元気?ご飯食べてる?
今日は締め日って聞いたから
ボーナス入ってるし
好きなだけボトル入れて贅沢していいよ。
ほら、フルーツとか食べるか?」

と、信じられない発言をされた。

飲めない下戸なのになんで?

楽しく飲みに来てるはずの
お客様なのになんで指名してきたのか
私には全然分からず戸惑いの残るまま…

せっかく来店してくださった
お客様に負担をかけたくなく
甘え方の加減も分からずオロオロしていた。

そして私がアクションを起こさないまま
少しだけ席を空け
化粧直しをして戻ると…

テーブルは華やかな数本の装飾ボトルや
フルーツで彩られていた。

勿論、感情表現が下手くそな私は
負の感情しかなく

指名替えが来て
誰かが甘えたのだろうと…

一旦、クロークに戻り感情を押し殺していた。

そうすると私を探しに来た
黒服が

「何してるん?
ヘルプもいらないって言う
お客様に女の子無理やり付けれないから
愛瑠さん早く席に戻って!」

と、急かされて
何が起こったのか分からずに
席に戻った。

そこには満面の笑みで
イタズラっ子のような笑みを浮かべたお客様が

「ビックリした?」

と、出迎えてくれた。

まだ、私はパニックで固まっていると

「いつも、ケチ臭く
長くは居てても嫌な顔ひとつせずに
愛瑠は何にもねだらない変な子だから
驚かせたかった(笑)」

と、だけ言った。

ただ、感動と感謝しか無かった。
この時、何故か人の優しさに触れた気がした。



 

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