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ペルーからの将棋普及レポート

ペルーにおける将棋普及活動

ペルーにおいて将棋の普及活動をしている都丸大輔です。中学生の時に町の将棋道場に通い将棋を覚え、その後、日本の将棋道場では三段から四段で指していました。2011年に家族でペルーに移住し、ペルーにも将棋ファンがいることを知りました。それ以来、ペルーで将棋を広めるお手伝いをしています。
今回はペルーでの将棋普及について書きたいと思います。

まず、ペルーにはペルー国内、国外を合わせて20万人の日系人がおり、その日系人たちの文化・社会的活動の中心となる組織としてペルー日系人協会(APJ)があります。
ペルー日系人協会は様々な日本文化に関わる活動を支援していて、その一環としてペルーにはペルー囲碁将棋協会(APIS)というペルーの囲碁将棋の普及に中心的に取り組んでいる組織があります。
ペルー囲碁将棋協会(APIS)の主な活動は、囲碁と将棋の例会です。ペルー在住の日系人たちの文化・社会的活動の拠点となっている日秘文化会館という施設の中の一部屋を使い、毎週日曜日午後4時から8時頃まで囲碁と将棋の例会が行われています。
メンバーは囲碁と将棋の両方を楽しみ、新たに学びたい人には喜んで教えています。ペルー囲碁将棋協会(APIS)のメンバーの特徴は、囲碁と将棋の普及に力を入れているので、囲碁も将棋もできる人が多いことです。

私が活動する以前から在ペルー日本国大使館の真鍋尚志参事官(当時の肩書)がペルー囲碁将棋協会のワークショップで将棋を教えていました

私は2012年からペルー囲碁将棋協会(APIS)の活動に参加するようになりました。ペルー囲碁将棋協会(APIS)将棋を指している人たちから、ペルーでペルー囲碁将棋協会(APIS)の活動に参加し、将棋の普及に取り組んでいた在ペルー日本国大使館の真鍋尚志参事官(肩書は当時のもの)から将棋を習ったという話を聞きました。
また、2010年には、在ペルー日本国大使館と国際交流基金の働きかけにより、大島英二八段と山本真也五段のペルー訪問が実現し、将棋普及のための活動が行われたこともあります。

ペルーでは毎年11月、日本文化週間が2週間にわたって開催され、茶道、映画、日本食、アニメ、音楽、日本の踊りなど、日本文化に関するさまざまなイベントが催されます。
その中で、将棋大会「ペルー日系人協会杯将棋大会」が毎年開催され、ペルー囲碁将棋協会のメンバーや国立工科大学の学生など、ペルーの将棋愛好家が集まります。参加者は年々増えています。大会はスイス方式で行われ、勝ち星を積み重ねるごとに対局者同士が対戦し、優勝者にはトロフィーなどの賞品が贈呈されます。
この大会のもうひとつの魅力は、ペルー日系人協会がこの大会の運営を支援をしていることから、参加費が無料であることと、大会の参加者には日本のお弁当を昼食として提供されることです。

2022年  ペルー日系人協会杯将棋大会前に行われた初心者向け将棋教室

この「ペルー日系人協会杯将棋大会」の前には毎年、初心者向けの将棋教室が開催されます。日本文化週間という一般向けのイベントの開催期間中ということもあり、この初心者向けの将棋教室に30人以上の参加者が集まることもあります。
この講習会では、将棋とチェスの違い、将棋の駒の漢字の見分け方、駒の動かし方、手持ちの駒の使い方、反則を含むルールなどを説明した後、一手詰の問題を解いたり、駒の動きを確認しながら、将棋の対局の流れを学ぶために、参加者同士で歩を最初から全て除いた「青空将棋」で対局したりします。このような活動がより多くの人が将棋に親しむ機会となっています。

2022年  ペルー日系人協会杯将棋大会

4月末には、ペルーの日系社会のクラブ兼運動場であるラ・ウニオン運動場において、「日系人大運動会」が開催されます。このイベントは毎年約1万人が参加する大きなイベントです。
ペルー囲碁将棋協会(APIS)は例年このイベントにブースを出展し、将棋や囲碁のデモンストレーションを行っています。一般の人々はもちろん、日系人の子弟が多く通っている日系人学校から将棋に興味のある学生を招待しての将棋の普及活動を行っています。
この活動は長年にわたって地道に続けられており、今では日系人学校の生徒同士が将棋を指している姿をよく見かけるようになり、その多くは入門レベルを超えるようになってきています。

日系人大運動会2023  中学生が将棋を学んでいます

また、最近の重要な変化として、国立工科大学(UNI)にはアニメ・マンガ文化センターの存在があります。このグループの中でも将棋を指す人が増えており、前述の「ペルー日系人協会杯将棋大会」への参加者も年々増えています。
2023年5月末には、国立工科大学(UNI)にはアニメ・マンガ文化センター創立15周年記念文化週間の一環として、ペルー国立工科大学において対面形式の将棋大会が開催されました。

ペルーにおけるオンライン将棋の普及

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、ペルーにおける対面形式での将棋の活動はしばらくの間中断され、2023年9月10日にようやく再開されました。
私は、対面の活動が不可能である中で、オンラインでペルーにおける将棋普及活動を継続する方法を模索していました。
そのような時、将棋普及活動に取り組む株式会社ねこまどの代表の北尾まどか女流二段と連絡を取り、将棋の海外普及に関わる人たちのオンラインミーティングが毎月一回開催されていると聞き、参加することにしました。
そのオンラインミーティングで、ペルーとブラジルの両国の将棋ファンのモチベーションを高め、両国の将棋ファンの交流を促進するという目的で「ペルー・ブラジル将棋交流戦」をオンラインで開催する話が持ち上がりました。
ZOOMのようなビデオ会議のプラットフォームで繋がりながら、両国の代表が数人ずつオンラインで将棋を指し、北尾まどか女流二段の解説をスペイン語とポルトガル語で伝えながら、将棋を楽しむというもので、2021年7月に第1回、2023年4月に第2回が実施されました。

そして、2024年2月25日にはブラジル将棋連盟主催のオンラインの将棋大会である「Rochu sen」が開催されました。同大会においては今年は、ブラジル将棋連盟のジェームズ・トレド会長の提案で、南北アメリカ大陸7カ国の将棋プレーヤーが招待され、合計44名が参加し、予選で各自6局、持ち時間5分秒読み30秒で対局し、上位8人による決勝トーナメントが行われました。
大会の運営・進行に使われたメッセージングアプリのWhatsAppには英語、ポルトガル語、スペイン語の3カ国語で大会の様々な連絡が流れるなど国際色豊かな大会でした。私自身もプレーヤーとして参加し、参加者の言語が比較的近いこともあり、感想戦も積極的に行われる良い大会となりました。

また、ペルーの囲碁将棋連盟のメンバーは、インターネット将棋ゲームサイト「81道場」の国際将棋リーグに2チーム参加し、各チーム毎の将棋対局を振り返るオンラインミーティングを不定期で行っています。
さらに、株式会社ねこまど様主催の「ねこまど将棋まつり」や、ねこまどチームとの将棋交流戦、2023年に実施された日本将棋連盟主催のオンラインでの「国際将棋フォーラム」にもペルー代表が参加しました。

 このような活動は、オンラインで将棋を指すことのメリットを生かし、将棋を続けるモチベーションの維持に役立ってきたと思います。

2022年  ペルー日系人協会杯将棋大会閉会式

今では対面形式での活動が再開され、そちらがメインの活動となっていますが、距離が離れていても将棋を通じた交流ができるオンライン将棋の良さも活かしながら、今後もペルーにおける将棋普及活動に取り組んでいきたいです。

(執筆:ねこまどオンライン将棋講師 都丸 大輔)

#海外将棋普及レポート