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「いつもの食材」が入ったカレー

子どものころのあるあるで、「給食がカレーだった日は、家に帰ると夕飯もカレー」ということがあった。給食の献立表をチェックしている家庭ではありえないかもしれないけれど、私の実家ではかなりの頻度でこの偶然が起こっていた。それでもまったく嫌な顔をしなかったくらい、私は昔からカレーが好きだ。

我が家のカレーはいたってシンプルである。
にんじん、たまねぎ、じゃがいも、そしてお肉。肉の種類は牛・豚・鶏のどれかになるけれど、私は鶏肉のカレーが1番好きだ。ルーはよくある市販のもので、お決まりのものをいつも買っている。
カレーは1日で食べきれないことが多いので、3日連続カレーということもざらにある。月曜日カレーライス、火曜日カレーライス、水曜日カレーうどん。うどんにする手間さえ面倒なときは、3日目のカレーにはチーズを入れる。いわゆる味変というやつだ。これはこれで、まろやかになっておいしい。

上京して一人暮らしを始めたとき、慣れない自炊に頭を悩まされた。時間も材料費もうまくやりくりできず、値引きシールが貼られたお弁当を買って帰ることが増えていった。
料理下手な私は、買い物下手でもある。ましてや一人暮らしの自炊なんて、買った食材を使いきる難易度が高すぎる。余った食材をどう組み合わせて、何をつくればいいかわからない。大ぶりの白菜や大根なんて、腐らせない自信がまるでない。

その点、定番カレーの食材はすごい。にんじん、たまねぎ、じゃがいも、お肉。この組み合わせのままで、シチューにもなるし、野菜スープにもなるし、肉じゃがにもなる。ルーは賞味期限がそれなりに長いから、一度に使わなくてももちろん問題ない。
もし野菜のどれかだけが余ってしまっても、あまり困ることはない。きちんとした料理にならなくても、火が通りさえすればおいしく食べられる。定番カレーの食材には、そんな安心感がある。

「いつもの食材」には、安心感が必要不可欠だと思う。必ず使いきれるという安心感。季節を問わず、いつでもどこのスーパーにも置いてある安心感。品名や値段とともに産地が書かれていて、それも安心につながる。カレーの日は、買い物も苦にならない。安定した供給のありがたさが身に沁みる。あとは価格が高騰しすぎないことを願うばかりだ。

東京都内に住んで、おいしいカレー屋がたくさんあることを知った。スパイスが効いた本格カレーは最高においしい。夏野菜がゴロゴロ入っているものもいいし、パクチーが乗っかっていても嬉しい。
でも、家で食べるカレーに入れるものはずっと変わらない。私にとって家のカレーは、なつかしい匂いがする、いつもの食材が入った、ほっとする味のカレーだからだ。



◆2023/03/20 追記◆
ニッポンフードシフト公式noteのマガジン「#カレーにこれ入れる」にて、こちらの記事を紹介していただきました。

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