桜井さん観察日記第二話「説教」
おつかれさまです。コマゴメです。
バイト先のとんでもないおじさん「桜井さん」の観察日記第二話になります。
第一話を呼んでいない方はこちらを読んだから読むことをお勧めします↓
では本題に入ります。
今回書くのは、僕がバイトとして働くようになってから数ヶ月が経ち、周りのバイトや社員の方がやたらと桜井さんの話をすることに気がつき、興味を持ち始めた頃の話になります。
大前提として、この店は少し変わっていて、僕も含めて従業員の大半がここのアルバイトを主な収入としていません。
(僕は生活費の4割〜5割くらいがここのアルバイトのお給料です。残りはライター業とお笑いの仕事で賄っています。)
不動産屋で社員として働きながら、副業として週に1回だけシフトに入る人や、アパレル関係の個人事業をやっている人、僕と似た立場の人で言うと、声優を目指している女性が一人いますが、その方も別のアルバイトを掛け持ちしていて、この店の収入はメインではないと言っていました。
この店の仕事をメインとしている人は、僕の知る限りで、正社員の2人(そのうち1人は社長)と、桜井さんの3人のみです。
そして、27歳の僕が店の中で一番年下です。
これもかなり珍しいことだと思います。
第一話のプロフィールで少し書きましたが、桜井さんは月に20出勤以上しているのに、給料の前借りをしすぎて給料日にはまともにお金をもらっていません。
毎日、「金がない、金がない」と言いながら、勤務中は620円のタバコを二箱吸い、800円のお弁当を食べます。
もちろんその代金は、その日に店から前借りして出しています。
社員や他のバイトの人たちは、毎日のように桜井さんをイジったり、陰口を言っています。
ここで誤解しないでいただきたいのは、皆さん年齢的に結構な大人なので、あからさまに嫌なイジリ方をしたり、良くない陰口を言うことはありません。
例えば、イジりで言うと、850円のお弁当を頼んだ際に、社員が「毎日美味しいもの食べれて幸せだねぇ〜」と皮肉を言うくらいです。
これに対し、桜井さんは毎回「デュフフフフ」と笑って誤魔化します。
前借りのお金でそれなりに高いものを食べているのだから、これくらいは言われて当然です。
陰口というのも、僕が聞いたのは
社員「桜井さんさ、この前仕事中に、連勤しんどい。休みたい。とかすごいグチグチ言っててさ。自分が前借りをするからこうなってるんじゃん。俺はそれよりも働いてるんだから、モチベーション下がること言わないで欲しいよね。」
というものです。客観的に見ても、陰口を言っている側に正当性がある、かなり珍しいケースです。
桜井さんはみんなから呆れられていて、基本的に笑い物になっていますが、二人いる社員のうちの一人(社長ではない方)だけ、桜井さんを更生させようと頑張っています。
今後もよく出てくる人物なのでこの人にも仮の名前をつけます。社員の細川さんとします。由来は細いタバコを吸っているからです。
細川さんは、桜井さんを更生させようと毎日のように小言を言っています。
僕はなぜか細川さんにハマっていて、暇な時間は「桜井さんが前借りしたお金を日々何に使っているのか」を二人で考察しています。
このことについては別の回で詳しく書きます。
ある日、カウンターで細川さんが桜井さんに険しい顔で説教をしていました。
小言を言っているのはいつものことですが、その日は少し様子が違いました。
内容は、桜井さんがちょっとしたミスをして、お客さんに迷惑をかけたことについての説教でした。
ミスの内容は雀荘特有のミスであるため、説明が難しいです。想像しやすいように他の仕事で例えると、「ファミレスの店員が、注文されたものを忘れてしまっていた」くらいのミスです。
大概の場合は謝れば済みます。
僕は正直、そんなに険しい顔で長々と説教をするような内容か?と思い、なんなら社員の細川さんが怒りっぽいだけじゃないか、とすら思っていました。
しかし、内容をよく聞いて衝撃を受けました。
ミスをした後、桜井さんはお客さんに一言も謝っていないそうです。
…だいぶ話が変わります。
細川さんが怒りっぽいだけじゃないか、と一瞬でも思ってしまってごめんなさい。
なぜ謝らなかったかというと、「謝るタイミングがなかった」という謎の言い訳をしていました。
まとめると、お説教の内容は「自分が悪いことをしたら、謝りましょう」でした。
僕も小学校一年生の頃に同じことを先生に教わった気がします。
これを機に、僕は桜井さんの虜になってしまいます。
売れていない芸人はハッキリ言って「ダメ人間」が多いです。前の雀荘で働いていた時のバイト仲間も、「ダメ人間」ばかりでした。
僕は人生で数々のだらしないダメ人間と出会って来ましたが、桜井さんは頭ひとつ、いや、上半身ひとつ分くらい抜けています。
基本的に僕はだらしのない人を軽蔑してしまう性格なのです。
桜井さんに抱いていた感情が、「軽蔑」から「深い興味」に変わった瞬間でした。
次回は桜井さんのお金事情について書きたいと思います。
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