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学べメロス

メロスは激怒した。必ず、己の無知・無学を対処せばならぬと決意した。メロスには植物がわからぬ。メロスは、きわめて一般的な大学院生である。ジブリが好きで、二木真紀子さんの絵皿の草花に感銘を受けながら暮して来た。けれども植物の知識に対しては、人一倍に皆無であった。

きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、此の小石川植物園にやって来た。メロスには植物の知識も、小石川植物園の情報も無い。用意周到な準備も無い。二十三の、地図音痴と共存している。しかし、メロスは、6月12日に、その日の誕生日の木を見に、はるばる小石川植物園にやって来たのだ。

メロスは絶望した。開花情報に書かれていた植物の位置情報は広範囲の地図帳を指定しているだけであったのだ。小石川植物園は広い。それゆえ、指定された範囲も広い。さらに、メロスには植物の知識が無いため、花あるいは札がついていない木など見分けられるはずがない。さらに小石川植物園の地図上の道は舗装された分かりやすい道と山道に近い道が書き分けられておらず、同等に扱われていた。到着時間は14時半、開園時間は16時30分までである。おそらく16時15分までは木を探しながらさまよっていた。

メロスは再度木を検索し、新たな株の情報を得て、分類標本園に向かった。分類標本園に向かったメロスは再度絶望した。分類標本園は分類ごとに植えられていたのである。地図帳システムよりかは狭まっていたものの、残り10分で端から確認できる量ではなかった。メロスは己の無学さを恥じた。こんなときは一般的には図鑑の分類と同様の科の順で並べられているに違いないのだ。しかし、無学のメロスにはそれを元にした位置情報が指定されてもコンパスの使い方も、星の読み方も分からぬ航海でしかないのである。それでも一つ一つ確認していくと、なんとか木を見つけることができたのである。時刻は16時40分、そろそろ職員さんが来園者がいないことを確認しに見回る時間である。メロスは急いで門扉へ向かった。

メロスは、図書館の索引システム・蔵書検索システムがいかに便利で的確に位置を指し示しているものであるというかを思い知った。そして次回小石川植物園に行くまでに、せめて図鑑の分類の順番程度は身につけていこうと決意したのである。


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