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ナースがパン屋になりました。その2

移住先を探しながら、
畑の勉強とパーマカルチャーを学んで
三年前に静岡の川根本町に移住した。
神奈川のマンション時代から
味噌、梅干し、麹、干し野菜など、
発酵食品や保存食を作っていた。

米粉パンを作るようになり、
通販で販売しながら
色んな酵母を作り、
その酵母でパンを焼くようになった

美味しいけど、売るほどではない
売るには人を動かすほどの
何かが足りない・・・
という感じでモヤモヤが続き、
試行錯誤を繰り返していた

何か、こう、人を元気にして
美味しい、他の店のパンと違うもの
他で売ってないもの
普遍的なものを作りたい、
そう思っていた。

事業計画を立てる時に必ず聞かれるもの

他のパン屋と何が違うの?

あなたのパンを人が食べたらどうなるの?

お客様がそれを食べてどうなるのを
イメージして作ってる?

その頃、米粉パンを作る人は
世の中で考えるとマイノリティだったし、
近隣にもいなかった。
が、すでにInstagramでは
どんどん米粉パン教室や販売店が増え
レシピもYouTubeに投稿されるようになり、
米粉パンは昔ほど珍しくなくなった。

Instagramでは、
みんな映え写真を投稿し、
マリトッツォが流行れば、
その写真で埋め尽くされ
シナモンロールが流行れば
それ一色になった。
競い合って、おしゃれに、美味しく
見えるような写真を投稿していて
眩しすぎてお腹一杯になった。

私には、これは到底入りこめない世界
映えとか興味ないし
自分らしくない。

素朴で、見た目映えない地味さだけど
一口食べて驚くほどの感動もないかも
だけど、
自分の生活の土台を作る  
日々を支えるような食べ物
1日の始まりを優しく背中を押してくれる

そんな

ケ の パン

ハレ と ケ なら
わたしの作るパンは
ケ の パン だ

そんなイメージを考えている時
20年以上前に天然生活でみた 
楽健寺酵母パンが頭に浮かんだ

そういや老夫婦が焼いているパンが
あったなぁ
見た目、素朴
だけど、何か力強いパン

私はすぐに検索した
数年前にお店は閉店していたが
酵母は譲ってもらうことができた
本も買い、早速米粉パンを焼いた
何度もレシピを変え焼いたが
家で食べる美味しさ程度のものしか
できなかった

体にいいパンを焼きたいけど
やっぱり美味しくなければ
意味がない
米粉に拘らず、小麦粉を買って
焼いてみた。

美味しい!!
何だろ、自分が作りたかった味が
そこにあった
これは、食べた感じ何か何か
よくわからないけど 元気が出るぞ
と思った。

これを焼こう。
焼いて、みんなに食べてもらおうと
思った

楽健寺酵母はりんご、長芋、人参、ご飯で
酵母を作り、
その酵母を使って焼いたパンだ
考案した高野山東光寺の山内宥厳住職が
研究して、 
みんなを元気にするために作ったパン
その酵母は8時間以上発酵させるが
瓶に半分ほど作った酵母は
蓋のラップを持ち上げるほど元気な酵母

すごい、ぷくぷくぷくぷく
生きている
呼吸している

レシピは、自分好みに何度も変えながら
自分なりの楽健寺酵母パンを作った

2022年9月26日
呼吸するパン でんぱん
静かに、ひっそりオープンした

オープン2日前に線状降水帯を伴った  
大きな台風被害が川根本町にあり、
町は災害被害があちこちにみられ
オープンしました!と言える雰囲気
ではなかった
それどころではなかった
なのでオープン日は、復興支援している人や
町で出会った方々にパンを配る
というところから始めた
その後数週間はパンは縮小し
ボランティア活動をした

オープン2日後、
楽健寺酵母、楽健法考案者の
山内宥厳住職がご逝去された
ニュースが入った

宥厳先生がこの2つで
生涯をかけて
みんなを元気にしたいという思いの
エネルギーを神締めて
この楽健寺酵母を繋いでいきたいと
改めて思ったのでした。

山の上にある小さな小さなパン工房
呼吸するパン でんぱん 

楽健寺酵母の種を繋いでいく
パン屋として
みなさまに
ケのパンと
蘇のパンと
グルテンフリー米粉パンを
細々とお届けしております。

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