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忘れものをたどる物語【くもりガラスの銀曜日 感想・考察】

初noteです。個人ブログは別にありますが、シャニマス関連の記事はnoteに書いていければと思います。

アイドルマスターシャイニーカラーズで現在開催中のシナリオイベント「くもりガラスの銀曜日」、皆さんはもう読まれたでしょうか?
イルミネーションスターズのメンバーが出会ってから今に至るまでの物語を、過去コミュの幕間に触れながら丁寧に描いた素晴らしいシナリオでした。
展開の大きな起伏はないですが、静謐な雰囲気で綴られる物語は梅雨の雨音によく似合っており、イルミネーションスターズの「お互いを思いやる優しさ」をそのまま物語にしたような風情があります。

今回は過去コミュとのつながりに触れつつ、話の流れを追って自分の感想・考察を綴っていきたいと思います。
「くもりガラスの銀曜日」のネタバレを含む他、以下カード・イベントなどの内容にも少しずつ触れています。

・イベントシナリオ「Light up the illumination」
・イベントシナリオ「Catch the shiny tail」
・イベントシナリオ「Star n dew by me」
・pSR 【手作りの心遣い】風野 灯織 (恒常)
・pSR 【ナチュラルモード】櫻木 真乃 (イベント)
・pSR【チエルアルコは流星の】八宮 めぐる (恒常)
・pSSR【柔らかな微笑み】風野 灯織 (恒常)
・pSSR 【清閑に息をひそめて】風野 灯織 (恒常)
・sSR【天然色ピクニック】櫻木 真乃 (恒常)
・sSR【by to illuminate】櫻木 真乃 (恒常)
・sSSR 【冬街イルミネート】櫻木 真乃 (キャンペーン)
・sSSR【風野署長の一日勤務回想録】風野 灯織 (イベント)
・G.R.A.D共通コミュ 風野 灯織
・ファーストガイドブックドラマCD「遅く起きた朝は……」
・FR@GMENT WING 02 スペシャルオーディオドラマ「輝く笑顔に向かって」

話の展開や過去カードへの言及を細かく行うため、非常に長くなっています。ご了承ください。

オープニング 雨粒のインク

物語は、『灯織が真乃・めぐるを名前で呼ぶようになったころ』の回想から始まります。

灯織がレッスン場の鍵を返すためプロデューサーのもとを訪れ、先に帰ったはずの真乃とめぐるが雨に濡れた状態で事務所に戻ってきたシーン。
ここで、プロデューサーに対する報告では「八宮さんは……」「櫻木さんは……」と名字呼びしていた灯織が、ふたりに対しては「めぐる」「真乃」と名前呼びしていることに気が付きます。

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灯織本人に対しては何も言いませんが、プロデューサーの内心ではとても印象深い出来事だったのでしょう。

場面転換が挟まり、時間軸は『現在』へ。
ここで、さきほどの回想は「プロデューサーが過去の日誌を読み返していた」ことが示されます。

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プロデューサーを呼びに訪れためぐるが、回想内では知らなかったタオルの場所について「いつもの引き出しでしょー!」と答えていることからも、時間の経過が伺えます。

そして気づくと降り始めていた雨。
回想でも雨が降り始めたシーンだったこと、そして「雨粒のインク」というタイトルから、今回の物語が「雨粒で綴られた、過去の物語」であることが示されているように思います。

ちなみに、灯織が真乃とめぐるを名前で呼ぶようになったのはLight up the illuminationの第4話から。
レッスンで無理をしすぎて体調を崩した灯織を、めぐると真乃がお見舞いに訪れるシーンですね。

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プレイヤー視点だと見落としてしまいますが、これは灯織の私室内でのやり取り、つまりプロデューサーは知らない3人だけの物語です。
忘れていた「始まりの関係性の変化」にプロデューサーが気づいたきっかけを描くのは、まさに「忘れ物をたどる短編連作」というキャッチコピー通りだと感じました。

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第1話 食パンとベーコン

朝のレッスンの待ち合わせで、めぐるを待つ灯織と真乃。
話題を探して沈黙が挟まったり、灯織が真乃を名字呼びしかけて言い直したりなど、初期の関係性を感じさせます。
時期的にはオープニングの回想と同じく、Light up the illuminationの途中、灯織が復帰してからデビューライブに向けてレッスンを続けているシーンでしょう。

この話で描かれるのは、灯織が相変わらず少しキツい言い方になってしまい言葉を添えたり、朝ごはんで何を食べたか話したり、ホトトギスの鳴き声から真乃の鳥好きの話に触れたり……と、とても他愛のない会話です。
ただ、お互いまだまだ知らないことがいっぱいあるからこそ、他愛のない会話でお互いのことを知ろうとする不器用な二人の思いが見える気がします。

こういった日々の会話でお互いを知ろうとするのは初めてではなく、灯織の「そういえば前も言ってたね。公園の鳩と喋るとか……」という発言にも表れています。

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これはsSR【天然色ピクニック】櫻木 真乃の「公園と約束」でのお話ですね。
どうして公園にいるのか訪ねた灯織に対し、真乃は「公園が好きなの。ハトさんたちとお話するのも好きなんだ」と答えています。

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実はその後の会話でも、「くもりガラスの銀曜日 第2話」と「【天然色ピクニック】櫻木 真乃」は対になっています。
灯織が「真乃って……やっぱり好きなものを好きって言える人、だよね」と続けているシーン。
【天然色ピクニック】櫻木 真乃の「公園と約束」でも、灯織は「好きってはっきり言えるの、すごいと思って」と言っています。

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そして「『イルミネはお互いを大好きだと思ったメンバーがあつまったんだ』って……前に言ってたでしょ」という灯織の発言は、Light up the illuminationの第6話での会話を指しています。

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真乃はほわほわして見えますが、好きなものを好きと言える強さを持っていることが初期から一貫して描かれているんですね。
そういったことも、灯織はまだ知り始めたばかり。だから、色々知らないことを教えてほしい、と言います。
たまに言葉が足らず厳しい言い方になってしまうこともありますが、こうやって考えを飾らずまっすぐに伝えられるのは、灯織のいいところですね。
そして、この「相手のことをもっと知りたい、自分のことをちゃんと伝えたい」というのが、今回のイベントで色濃く描かれるテーマになっています。

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その後めぐるが駆けつけて、朝食の話でフェードアウト。
時間軸は現在に移ります。

倉庫から戻ってきたプロデューサーは、イルミネの3人をレッスンに送り出します。
このときに灯織の言う「体が資本なんですから」というセリフ。
これはpSR 【手作りの心遣い】風野 灯織の中でプロデューサーが教え(「徹底した姿勢」)、逆に灯織から指摘されてしまった言葉ですね(「逆転する立場」)。

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余談ですが、これだけ言われているにもかかわらず、pSSR 【清閑に息をひそめて】風野 灯織の「ふたり」で、自分の食事に無頓着なプロデューサーが描かれています。

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プロデューサーがアイドルのことばかり気にかけて自分の食事に無頓着なのは、もはや職業病なのかもしれませんね。

本筋に戻って、レッスンに向かうイルミネが朝食の話をするのは、過去との対比です。
めぐるが「卵かけごはんと焼き鮭!」と言ったのに対して、灯織が「和食だから『お父さんの日』だったんだ」と返しています。
これは『君をまるごと知らなかった』ころから経過した時間と、その間にやりとりした想いの積み重ねを感じさせますね。
タイトルの「食パンとベーコン」は過去の真乃が食べてきた朝ごはんですが、「朝食の話をきっかけに、お互いを知ろうとすること」「朝食の話からいろいろわかるほど、お互いのことを知ってきたこと」の2つが描かれていると思いました。

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そんな会話を聞いた折、プロデューサーのもとに舞い込む新企画の依頼。
プロデューサーが「(お互いのことを)もう知らないことなんてないんじゃないでしょうか」と答えるのも頷けます。
このプロデューサーの認識も、物語の軸の一つになっています。

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第2話 素敵色のハニィ

2話では、イルミネの3人が遊びに行く日を決めるシーンから始まります。
日曜日のレッスンで会えるのに待ちきれず予定を合わせようとしているのは、3人の仲が深まっていることを感じますね。
とはいえ「イルミネーションスターズの、櫻木真乃です」という発言を噛みしめて嬉しそうな様子から、まだデビューライブ前ではないかと思います。
言葉は少ないですが、真乃の「イルミネーションスターズと言えることが、3人でいられることが嬉しい」という気持ちが伝わってきて好きなシーンです。

そんなタイミングで、電車の中からイルミネーションの広場を見つける真乃。
これはsSSR 【冬街イルミネート】櫻木 真乃の「一緒に行けたなら」で、「綺麗に飾り付けられているのがずっと気になってて」と言及しているものでしょう。
広場というところを考えると、3人で一緒に見に行ったイルミネーションの方とも考えられます。ただそちらは「毎年見に行っているお気に入りのイルミネーション」と言っているので、このタイミングで見つけたものとは別のように思います。

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ちなみに同コミュでは「『イルミネーション』って、なんだか特別な気持ちになるんだ」とも言及しています。
ユニット名が好きになって、ユニット名に含まれるものも特別に感じている、ということが同カードで既に描かれていたんですね。

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本筋に戻ると、イルミネーションだけではなく星にまつわるものも特別に感じて気になり始めた真乃の様子が描かれています。
星のマークのハンカチや星の模様のボールペンを買って、商店街では星にまつわる様々なものが目に入ります。
イルミネーションスターズという12文字が輝きだしたことで、真乃の目に映る世界でも、それにまつわるものが輝いて見えるようになったのでしょう。

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そして、「銀色」。
この意味は明確に語られていません。星の色であれば、キラキラ輝くのであれば、普通は「金色」を連想しそうなものです。
ただ、続く「今日はこのまま曇りなのかな」という憂いのある心の声や、マンホールにも星の模様を見つけた = 少し俯いて地面を見たことを考えると、夕暮れ時に一人で歩く真乃の心情は明るい金色の輝きではなく、少し寂しさを帯びた銀色の輝きだったのかもしれません。
「色は心で見ている」から、同じ星の輝きでも金色ではなく銀色と捉えた、のではないかと解釈しています。

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そんななかでめぐるに会い、『銀曜日』というキーワードが出てきます。
真乃が『金曜日』と打ち間違えたものですが、めぐるは「なんだかいいなって思ったの」「どこにも無いけどありそうな、ちょっと素敵な響き」と伝えて、「今日を銀曜日にしたい」と提案します。

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素敵という表現は、タイトルの「素敵色のハニィ」にも出てきます。
ハニィが蜂蜜の意味だとすると、蜂蜜の色は一般的に茶色や金色だと思います。
ですが、真乃がつぶやいたのは『銀色』で、素敵な響きを持つのは『銀曜日』。
そして、以降の話の中で重要な役割を持つ「ツツジ」の花は、蜂蜜が採れる花の一種です。
これらのつながりと、さらにこの後見つけたお店が甘味処で「あんみつ」を食べることになること、それらをすべて引っ掛けたタイトルではないかと自分は解釈しています。
ただ、あんみつにかける黒蜜はハニィ(蜂蜜)ではなくシロップ(糖蜜)なので、ちょっとこじつけかもしれません。

【追記】
「素敵色のハニィ」、実はシナリオ概要にある「星のしずくが、時計の針を回していく」とも繋がるのでは……? と思い始めました。
「星のしずく」、イメージとしては金色のしずくなんですよね。これってつまり蜂蜜色のしずくなのでは?

本筋に戻って、めぐるが灯織に声をかける際に目印にした『ドーダン』というお店。
真乃はお店の看板が星の飾りでいっぱいであることに気づきます。
灯織の都合がつかず、また今度を「銀曜日」にしようと話すところで、場面が切り替わります。

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時間軸が現在に戻り、イルミネのレッスン中。
めぐるが、お昼は久しぶりに『ドーダン』にしようと言い出します。
「久しぶり」と言っているのでしばらく一緒には行っていないこと、基本は甘味処だけど食事も出していることが読み取れますね。
こうして、物語の舞台は過去も現在も『ドーダン』を中心に動いていくことになります。

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第3話 ひんやりと星の匙

第2話の出だしで約束していた金曜日、もとい『銀曜日』に、ドーダンを訪れるところから話が始まります。
時系列としては相変わらずデビューライブ前くらいですね。

ドーダンは外からだと営業してるかわからないような佇まいで、他の客もおらず、声をひそめないといけないようなお店でした。
看板の星につられてお店を薦めた真乃も恐縮してしまいます。
それに対し、声を重ねる灯織とめぐる。
これだけ見ると同じことを言おうとしているようですが、譲られためぐるが「こんな小声で話すことはないから楽しい」といったのに対して、「それはよくわからないけど」と灯織が返しています。
細かいですが、これも「まだわかりあえていない部分」の演出かなと思いました。

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味が大事と真乃を励ましつつ、みんなであんみつを食べることに。
そのあんみつがとても美味しく、食レポごっこをしながら食べ進める3人。
なかでも、真乃がとても美味しそうに食べる描写が入りますが、これはWINGコミュ「ありのままで」とも絡めているんでしょうか。
あと、ここで急に出てくる有識者メグル・ハチミヤ氏が面白くて好きです。

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ひとしきり話したあとは、それぞれが味わいながらあんみつを食べる沈黙が訪れます。
食器が立てるわずかな物音と、ぽつりぽつりとつぶやく程度の会話だけがお店の中に響いている雰囲気、とても良いです。
真乃は熱いお茶を吹いて冷ましてますね。猫舌なのかな?

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そんななか、雨の音に気づき窓の外を見ようとしますが、錆びついた鍵は開けることができず、くもりガラスで外も見えないことに気づきます。

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雨が降り止むかを心配するなか、真乃はくもりガラス越しの色がきれいなことに気づき、窓の向こうに見える景色へと話が移っていきます。
ここで「見えそうで、見えないんだよね」という発言からの、「見えないけど、綺麗だね」という答えがとてもグッと来ます。
何があるかは見えない、でもくもりガラス越しでもいろんな色があって綺麗だとわかる、そんな光景が目に浮かびますね。

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最後は「あんこの下にみかんも隠れてたよ!」とめぐるが声を上げてしまい、灯織に声が大きいとたしなめられるシーンで終わります。
ここもコミカルに引き戻した落ちですが、さり気なく「見えないものがある」ことを暗示しているように思います。

タイトルの「ひんやりと星の匙」はあんみつを食べるスプーンのことですね。
スプーンに星の飾りがついていることはエンディングで明かされます。

第4話 三角形をひとかじり

タイトル通り、三角形の一角が欠ける = イルミネの3人が揃わないお仕事の話です。
ここから時系列の行き来が多くなり、過去パートも違う時期のお話が入り混じるようになります。

始まりは真乃が朝、ピーちゃんに向けて話しかける独り言から。
「昨日はごめんね。もう大丈夫だよ」というセリフから、なにか大きな出来事があった翌日であることが伺えます。
思い出す言葉が『わたしたちの真乃』であることや、ふたりと一緒にいられることがうれしいという発言から察するに、おそらくCatch the shiny tailの第6話「あのね、あるの、悩み事」の翌日でしょう。
きっとこの空は、『何かが起こりそうな、ステキな予感のする空』なんだと思います。

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真乃が思い起こしている「わたしたちの真乃」という台詞は、Catch the shiny tailではなく、Light up the illuminationの第6話で出てきます。
めぐるは出会って間もないときから「隣にいてほしい」気持ちをしっかり言葉にしていたんですね。

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真乃が出かけると同時に場面転換が入り、野外ステージでのお仕事の話が始まります。
ここは見落としそうになりますが、時系列が一気に巻き戻ります。理由は後述しますが、おそらくデビューライブが終わって間もない5月上旬の話ではないでしょうか。

3人で出演するステージのはずが、めぐるは足を捻挫してしまいおやすみ。
真乃と灯織は初めて2人だけのステージに臨むことになります。

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めぐるがいない分も頑張りたいという真乃に、めぐるの代わりにはなれないという灯織。
おそらく、灯織は「めぐるの代わりはいないから、そんなに気負わなくてもいい」ということを伝えたいんですが、それがうまく伝えられないんですね。
このあたり、まだまだ初期で気持ちを上手く伝えられないぎこちなさが出ています。

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ただ、その後にちゃんと「いまのは否定の意味じゃないから」とフォローができるようになった灯織、そういう意味じゃないと汲み取れている真乃、どちらも最初にすれ違っていたときよりお互いを知っていることが見て取れます。
こういう成長、いいですね。

めぐると同じようには、言葉では真乃を励ますことができないと自覚した灯織は、メノウのお守りを真乃に貸すことにします。
このお守り、sSSR 【虹色のしおり】 風野灯織の「ただの石ころ」を見るとわかるんですが、灯織がなくしたときに頑張って探して見つからず落ち込むくらい大事なお守りなんですよね。
それを貸し出すというのは、それだけ真乃を大切に思っていて勇気づけたいんだなぁというのがわかります。

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一方で真乃は、灯織が占いやお守りに詳しいことを知らず聞き返しており、どのくらい思いのこもった物であるかはわかっていません。
それでも、灯織がお守りを貸してくれた事実や、「一緒に頑張ろう」という言葉で、ともにステージに向かっていきます。
ここでも、「自分の気持を伝えよう」とする灯織と、「相手の気持ちを汲み取ろう」とする真乃の関係性が丁寧に描かれていますね。

そして、場面転換して現在の時間軸。
レッスンルームで、めぐるは「ロケが重なってしまったため、次のラジオ収録に真乃がいない」ことを知ります。
真乃に頑張ってほしいと伝えつつ、「真乃がいなくて寂しいけど頑張る」というめぐる。

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ここでさらっと「真乃のコーナーがなくなる代わりに……漫才でもする?」と爆弾発言をかます灯織。
唐突な感じがしますが、これは多分FR@GMENT WING 02 スペシャルオーディオドラマ「輝く笑顔に向かって」からの流れでしょう。
もっとも、イルミネとしてお笑いのお仕事をうけた描写はありましたが、漫才の練習をしたのは灯織の夢の中のはず。真乃が面食らっているのもそのせいだと思います。

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そんなおふざけのあとに、めぐるは「次の収録の時には、お守りをわすれないように」と切り出します。
これは、真乃がくれた3人お揃いのメノウのお守りの話。
真乃は、灯織が教えてくれた「心がつながる」という話を覚えていて、ハイキングで拾ったメノウの原石を加工したお守りを灯織とめぐるにプレゼントしていたんですね。

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そして、この話はpSR 【ナチュラルモード】櫻木 真乃の「感謝を形に」と繋がっています。
このカードのコミュでは、イルミネ3人のハイキングをプロデューサーに引率してもらい、初夏の川へと遊びに行きます。
そのとき、川遊びの中で見つけた石がメノウであることに気づき、ストラップに加工してプレゼントするという流れです。

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このとき、真乃は「どれだけ感謝しているか、~言葉だけじゃうまく伝えられない気がして」「気持ちを少しでも形にしようって、そう思ったんです」とプロデューサーに伝えています。
これは、言葉で励ますことができずに、代わりにメノウのお守りを渡した灯織も同じなんですよね。気持ちを形にして伝えている。
「気持ちを伝えたい、知りたい」というイベントストーリーのテーマを、既存カードとこんなふうに繋げてくるとは思いませんでした。すごい。

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ちなみに、このカードが5月実装で、初夏のハイキングを扱ったものになっています。
これより前に灯織からメノウのお守りを借りる話がないと辻褄が合わないため、4話過去パートのお話は5月上旬くらいじゃないか、というわけですね。
なお、デビューライブはイベントストーリー実装時期とするならば4月末から5月の初旬です。

さらに余談ですが、真乃は「プロデューサーさんとお揃いのストラップ」と言っているものの、実際にはイルミネ全員ともお揃いなんですよね。
「イルミネが持ってるのはお守りであってストラップではないのかな?」と思ったんですが、sSSR 【虹色のしおり】 風野灯織のコミュ中ではっきりと「メノウのストラップ」「ひとつの石から、お揃いを作ったの」と言っていました。
天然なんでしょうが、真乃、恐ろしい子……!

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というわけで真乃の話が長くなってしまいましたが、4話の話はまだちょっとだけ残ってます。

メノウのお守りを「心を繋いでくれるから」真乃のいないお仕事に持っていこうというめぐる。
最後に、真乃に向けて「どんな時も、ちゃんと一緒にいてね」「代わりは、どこにもいないんだから」と伝えます。
これは「めぐるの代わりにはなれない」と言っていた過去パートとの対比であると同時に、「真乃は、私の隣にいてほしい」「わたしたちの真乃」という台詞とも繋がってくる言葉ではないでしょうか。
めぐるは、ちゃんと言葉にして気持ちを伝えることを大事にしているんですよね……

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第5話 思考を煮詰めたような味

雨のなか、ドーダンの店内に灯織がひとりきりでいるところから物語が始まります。
銀鮭定食を頼んでいるのと、高台の風景がまだ明るいのでおそらくお昼ですね。
第2話で「昼と夜は定食もやっている」ことがめぐるの口から語られていますが、実は灯織も定食を食べに来たことがあるのだとわかります。

自分が目指したアイドルの姿について、ひとり思い悩む灯織。
この描写から、G.R.A.D.編のシーズン2から3にかけての時期であることが伺えます。
またpSSR 【清閑に息をひそめて】風野 灯織 のコミュはG.R.A.D.編と明確に対応しており、こちらも同じ時系列と考えていいでしょう。
同カードのコミュ「ひとり」の中では「悩みがあって家事が手につかず、外食しがちであること」が語られていますが、そのうちの1箇所がドーダンというわけですね。

「楽しいだけではだめ」「楽しかったら不真面目というわけではない」「でも一番アイドルになりたいと思っていたのは……」と、煮詰まった思考をする灯織。
そのなかで、真乃とめぐるの活躍に思いを馳せます。
「ステージで輝いていたのは…… 迷わなかったのは……」と考えているシーンでは、学園祭衣装の3人が思い起こされています。これはStar n dew by meでの出来事を思い返しているんですね。
実際、学園祭のステージで一番輝いていたのはめぐるでしょうし、迷わずめぐるを助ける判断を下したのは真乃でした。
その点において、灯織が「他の二人に並べるほどの活躍をできていない」と思い悩むのはわからなくもありません。

実は、「学園祭のステージ」というのは灯織にとって大切なイベントでした。
pSSR【柔らかな微笑み】風野 灯織の「かつて夢見た眩しい姿」では、灯織がアイドルに憧れたきっかけとして「学園祭にアイドルが来た」ことが挙げられています。
キラキラ輝いていて、見ている人もみんな笑顔で、「あんなふうになれれば、自分でさえ嫌いな自分でも、何かを好きになれるんじゃないか」と思ったと。
そんな舞台で、一番輝いていたのも、迷わず決断を下せたのも、自分ではなかった。
「自分のなりたかった」姿を見失った状況で、マイナスにとらえてしまうのも無理はないでしょう。

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実際のところ、灯織は灯織でいろいろと活躍していたし、アイドルとしての特別もちゃんと持っているでしょう。
ですが「自分の目指していたアイドル」を見失ってしまった灯織には、二人の姿が眩しく見えてしまいます。

そんなとき、ドーダンの店内にイルミネの楽曲「トライアングル」が流れます。
店主に「この曲、お好きなんですか?」と聞くも、「知りません。ラジオのCMみたいなので」とそっけなく返されてしまう灯織。
歌っているグループも知らないとそっけなく返されますが、店主との会話で少し気が紛れたのか、あるいはトライアングルの歌詞を思い起こしたのか、灯織の表情が柔らかくなります。
とはいえ、運ばれてきた銀鮭定食は「思考を煮詰めたような味」がしたことでしょう。
【追記】
他の方のnoteを読んで、ここで不安そうだったのは「店主に自分たちのことが知られて、居心地の良かった場所を失うんじゃないか」と心配したためだと考え直しました。
それであれば、そっけなく「知りません」と返されて安心するのも頷けますね。

灯織は銀鮭定食を食べながら、くもりガラスの向こうが前とは違う色になっていることに気づきます。
どんな花か気になって窓を開けようとしますが、相変わらず鍵は錆びついており、開けることはできません。
ボイス未実装ですが、「この窓、開かないんだった」という台詞は、残念そうな、諦めたような口調なんだろうと想像できます。

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ここで場面転換。舞台は現在の時間軸になります。
プロデューサーがインタビューのテーマについて回答を返しているのは、第1話で受けた電話についての企画でしょう。
〈以心伝心のきらめき、イルミネーションスターズ〉というテーマでOKを出しています。
第1話で「お互いに知らないことなんてないんじゃないでしょうか」と答えていたことからも、確かにそういう方向になりそうです。
仕事を終えたプロデューサーは、お昼ごはんを食べに出かけます。
どうでもいいですが、「ちゃんと食べないとまたみんなに心配されるな」ってプロデューサー、お前そういうとこやぞ。

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場面転換が入りますが、こちらは同時刻のイルミネの3人。
お昼ごはんを食べにドーダンに向かう道中ですね。
真乃とめぐるが「ごはん、ごはん~♪」と歌うのは、sSR【by to illuminate】櫻木 真乃の「私たちのお仕事」で歌っていたタピオカの歌からの流れでしょうか。君たちほんと楽しそうね。

めぐるが灯織に対して「歩きながら譜面を見るのは危ないよー?……って、きっと交通安全の亀さんなら言うと思うなー」とたしなめる台詞。
これは言わずもがな、sSSR【風野署長の一日勤務回想録】風野 灯織の「取りたい満点」に出てくる紙芝居の話ですね。キキー、ドン!

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お店で新しい譜面を読もうという二人に「テーブルの上の電気をつけられるよ」と伝える灯織。
「詳しいんだ」というめぐるの言葉に、「ひとりで行くこともあったから」と返して、物語は「テーブルの上の電気をつけられると知ったとき」へ巻き戻ります。

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場面転換後は、ひとりドーダンの店内でファンレターを読む灯織。
おそらく、G.R.A.D.の「今、風野灯織になる」で自分を見つけ直した後のお話でしょう。「ひとりだったら見つからなかった」でもらったファンレターと同じ人からのものなのか、別の人からのものなのかはわかりませんが、前者のような気がします。
そしてここで、店主が「手紙を読むなら、テーブルの上の電気をつけられる」と話しています。電気をつけられることを知ったきっかけは、一人でファンレターを読んでいたからなんですね。

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それに対して単純に断るだけではなく、「外の光がちゃんと入ってくるから、薄暗くても読めるし、そのほうが落ち着く」と伝える灯織。
ちゃんと伝えようと言葉を選んでいることが伺えます。本当に、初期から柔らかくなったな……

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代わりに開けてもらった雨戸の向こうもくもりガラスであることに気づき、「光と色が溢れて、とっても綺麗です」と伝える灯織。
そして、「暗いときほど、光は綺麗に見えるんですね」と気づきます。

暗いとき……これは灯織が自分の目指したアイドル像を見失い、自分の心が暗く迷っていたときでしょう。
また、中学の学園祭でアイドルを見たときの、「自分でさえ嫌いなころ」も指しているのかもしれません。
綺麗に見えていたのは、真乃とめぐるや、他のアイドルたち。
きっとそこには「自分がアイドルになって輝き出したから」見えなくなっていた輝きがあるのではないでしょうか。

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第6話 くもりガラスの銀曜日

イベントタイトルと同じタイトルのお話です。
この話では時系列がこれまで以上に飛び交い、ここまでほとんど独立していた短編をひとつのテーマでつなぎあげる、という構成になっています。

物語の始まりは、真乃と灯織がツツジを見かける何気ない一幕から。
「ツツジが綺麗だよ、灯織ちゃん」「真乃は花も詳しいの?」という掛け合いは、第1話でホトトギスの鳴き声をきっかけに「鳥が好きなの?」と聞き始める掛け合いと対になっていますね。
時系列は明確ではありませんが、おそらく第1話からさほど間をおかない時期でしょう。

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そして不意に、ツツジの別名が『杜鵑』で、ホトトギスも同じ別名であることを話題にあげる灯織。
調べてみたところ、どちらも同じ中国故事が由来のようです。

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真乃も知らなかったこの話を「―知らなかったね」「うん、知らなかった」と噛みしめる二人。
きっと、灯織も真乃からホトトギスの話を聞かなければ調べることはなかったのでしょう。
真乃だけでも灯織だけでも知ることができなかったことを、二人だから知ることができた。お互いを知ろうとすることで、どちらも知らないことも知っていける、そういうことが暗に語られているように思います。

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そして場面転換。
灯織が「銀曜日―ってなんだっけ」と真乃・めぐるの二人に問いかけるシーンです。時系列は不明ですが、出会いから時間が経ち仲も深まった頃でしょう。
二人も由来を忘れてしまっていますが、めぐるは「でも、なんだか……いいね」「ちょっと素敵な響きだね」「どこにも無いけど、ありそうな……」と話しています。
この「なんだかいい」「素敵な響き」「どこにも無いけど、ありそうな」という表現は第2話で出てきたのとまったく同じで、めぐるが「忘れてしまっても覚えている、同じように感じられる」ことが示されているように感じます。第2話が輝き出した12文字の話であったことを考えると、「イルミネーションスターズ」という言葉も同じように、時間が経っても色褪せず、同じように輝いて感じられるという意味も込められているのかもしれません。

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そして場面転換。
くもりガラス越しの色の数を数えるめぐる。これは第3話のドーダン店内からそのまま続くお話ですね。
「きっと綺麗な庭なんだろうな」と思いを巡らせつつ、「見えそうで、見えない……だけど……」「見えたらいいな……」と願います。
めぐるのいう「色」は、それぞれの「個性」「特徴」であることがpSR【チエルアルコは流星の】八宮 めぐる の中で語られていました。
きっと、めぐるはいろんな人の個性が知りたい。何が好きなのか、したいのか。相手のことすべてを知ることはできないけど、それでも見たいと願っていることがここでは示されています。

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そして場面転換。
今度は現在の時間軸、第1話でプロデューサーが話していた電話の詳細が語られます。
第1話では言っていなかった「以心伝心」というキーワード、第5話で先方から出てきたように見えましたが、実はプロデューサーが電話口で言っていたんですね。
「イルミネーションスターズのメンバーはお互いのことで知らないことがないばかりでなく、心が通じ合って以心伝心だ」とプロデューサーは思っているわけです。

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そして場面転換。
灯織が「この気持ち、全部、伝えられたらいいのに」「その気持ち、全部、見えたらいいのに」「全部―」と呟いています。
このシーンは最初「Light up the illumination」で真乃と灯織がすれ違っている時期の話かなと思いましたが、読み返してみると「厳しいことを言ったんだし、自分も完璧にしないと」というスタンスだったので、ニュアンスが違うように思いました。

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イルミネーションスターズの中で気持ちがすれ違うコミュは意外と少ないこと、また背景イラストが本イベント中で他にどこにも使われていないことを鑑みるに、これはもしかすると「灯織がアイドルになるよりもっと昔のこと」なのかも知れません。
真乃やめぐると出会う前の灯織は、その率直な物言いから、人とぶつかることも少なくなかったのではないかと思います。
臆病なころのめぐるの弱さがチエルアルコやStar n dew by meで描かれたように、自分に自信を持てなかったころの真乃の弱さがG.R.A.D.で描かれたように…… 気持ちをうまく伝えられずすれ違ってしまい、そんな自分すら好きになれなかったころの灯織の弱さが描かれているのではないでしょうか。
その場合、「やっぱり、私は……」に続く言葉は、「駄目だな」といった言葉になるのかもしれません。
(だいぶ推測が入っているので全然違うかもしれません)

【追記】
その後いろいろなコミュを見返したら、sSSR【風野署長の一日勤務回想録】風野 灯織の「ミルクティーの体温」で真乃と灯織の気持ちがすれ違っていることに気づきました。
もしかすると、このコミュの後に「真乃に気持ちを伝えたい、真乃の気持ちを知りたい」と考えているシーンかも知れません。
そちらのほうが「イルミネは以心伝心」の否定として正しい繋がりのような気がします。

そして、場面転換。
真乃が翡翠のお守りを渡す、第4話のシーンです。
これはsSSR 【虹色のしおり】 風野灯織の「ただの石ころ」と照らし合わせることで、灯織にとってかけがえのない思い出であることがわかります。
以心伝心ではないからこそ形で伝えて、かけがえのない大切な物を手に入れて、心を繋げられたんですね。

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そして、場面転換。

ドーダン店内で、灯織がひとりきりのシーン。
「この窓、さっき開けようとしていましたよね」という店主の台詞から、第5話でまだ灯織が迷いを抱えている時系列の続きであることがわかります。
「このくもりガラスの向こう……見たいですか?」と尋ねます。窓は開かないが、勝手口から見ることはできると。見せようと思っている庭ではないが、見たいなら、と。

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そして、灯織は。気持ちだけで十分と断ります。
「くもりガラスの向こうを見たいって」「そう、思い続けていたいから」と。

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「その気持ち、全部、見えたらいいのに」と思っていた頃の灯織だったら、どうだったでしょう。
多分、くもりガラスの向こうを見せてほしいと言っていたのではないでしょうか。
言葉というくもりガラスを介さずに、直接心を見て、以心伝心になれるなら。

ですが、真乃やめぐるの気持ちをもっと見たいと願って、自分の気持ちを伝えようと言葉を尽くして。
それでも言葉では足りなくて、形に残して、その形を介して心をつなげて。
そうして手に入れた「代わりのない、大切なふたり」との関係は、「気持ちが全部見えない」からこそ、「くもりガラスの向こうを見たいと思い続けていた」からこそ、手に入れられたものでしょう。

そういった思いが込められた決断だと、灯織はそれを迷いのなかでも信じられたんだなぁと、とてもグッと来るシーンでした。

そして、物語はラストへ。
再び舞台転換して、レッスン後のイルミネがドーダンにお昼ごはんを食べに来たシーンです。

それぞれにメニューを選び、せーので挙げた食べたいものは、3人ばらばらのものでした。
お互いに、相手が何を選ぶと思ったかもバラバラ。
こんな何気ないシーンからも、イルミネがまだまだ「以心伝心」などではなく、「くもりガラスの向こうを見たい」と思い続けていることが伝わってきます。

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そこに、お昼ごはんを食べに来たプロデューサーが偶然合流します。
偶然が嬉しいと声をあげるめぐるに、声を抑えるようたしなめる灯織。
第3話で初めてドーダンを訪れたときも同じようなやり取りをしていましたね。真乃がそれをきっかけに、『銀曜日』の由来を思い出します。

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偶然、気持ちが揃う日のこと…… それは例えば、くもりガラスの向こう側を見たいと思ったり、相手の気持ちを知りたいと思ったりした日のことを言うのでしょう。

すべての話の欠片が「くもりガラス」と「銀曜日」を介して繋がったところで、物語はエンディングを迎えます。

エンディング 星空を、ひとつまみ

6話から引き続きドーダン店内。

ここで、プロデューサーがインタビュー企画のために古い日誌を持ち出していることが明かされ、プロローグで倉庫の日誌を読み返していた理由も判明します。
プールに飛び込んでいた話はイベント「サマー・ミーツ・ワンダーランド」ですね。摩美々~~!

そして、プロデューサー単独で進めていたインタビュー企画の話がイルミネに明かされます。
テーマを伝えようとして、資料を渡そうと思い直すプロデューサー。
しかし、鞄の中が一杯で、目的の資料を見つけられません。

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あまりに詰めすぎていたのか、いろいろなものが鞄から落ちてしまいイルミネに拾われます。
くまさんのグミ、たい焼きのスタンプカードなど…… これにはイルミネ一同も呆れ顔。

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ちなみにたい焼きのスタンプカードは、おそらくイルミネ感謝祭コミュ「空が赤いから」で差し入れていたたい焼きのものでしょう。もしかすると、プロローグに出てきた「たい焼きパフェ」のお店も同じところかもしれません。
くまさんのグミは残念ながら思い当たりませんでした。果穂か摩美々あたりのコミュに元ネタがあるんじゃないかと疑っています。

灯織にたしなめられる中、真乃の「私たちの知らないプロデューサーさんが、いっぱい隠れた鞄なんですね」という台詞。
これにはイルミネ同士と同じく、アイドルとプロデューサーの間でも「全部は見えない」という当たり前のことが改めて描かれています。
改めて、シャニマスではプロデューサーが一人の人間として描かれているなぁというのがよくわかりますね。

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プロデューサーが「3人は秘密とか無さそうだよな」というのに対して、お互いの秘密を挙げていく3人。
真乃がたい焼きを頭から食べるのも、感謝祭コミュで一緒に食べていたときの話ですね。

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そして、灯織の秘密を当てるという話で「めぐるなら何でも知ってるでしょ」という発言に対して、めぐるは「なんでもは知らないよ」「真乃と灯織のこと、まだまだ知りたいって思ってるんだから……!」と返します。
そして真乃も「灯織ちゃんのこと、めぐるちゃんのこと」「まだまだたくさん教えてね」と話しています。

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これは灯織が「くもりガラスの向こうを見たいって、そう、思い続けていたいから」と言っていたのとまったく同じ気持ちです。まさしく『銀曜日』ですね。

このやり取りを目の当たりにしたプロデューサーは、自分が「以心伝心」だと思っていた3人が、そうではなく「まだまだお互いを知りたい」と思っていることに気づきます。
ここで資料について「……ううん、無かったよ」を選択肢にしているのが本当に好きです。

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イベントシナリオでのプロデューサーの選択肢って、基本的に「強い意志を持って」発言するシーンばかりなんですね。
真乃に「みんな特別で―『みんな普通の女の子だ』」と言ったり、めぐるに「がんもどきなんてなくたって―『ずーっとめぐるを応援してるから』、心の中でいつもいつも、大声でな」と言ったり。そういう重要なシーンで使われているわけです。
それをここで選ばせるということは、この選択が単に「資料が見つからなかった」のではなく、プロデューサーが意思を持って「資料を見つからなかったことにした」、つまり「今のままの資料で進められないと気づいた」ことを表していると思います。
きっと、この後プロデューサーは先方に企画のテーマ変更を打診して、資料を作り直すんだろうなぁ……

ラスト、みんなで食後のあんみつを食べるシーン。
真乃が「スプーンに星の飾りがついている」ことを伝える際、そこにお店の名前が彫られていることに気づきます。
このタイミングでようやく、第3話「ひんやりと星の匙」のタイトルが種明かしされるわけですね。

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そして、『ドーダン』の店名が『満点星』と書くことを知ります。

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ここにきて、「なぜドーダンの看板がたくさんの星で飾り付けられていたのか」がわかります。
また満点星はドウダンツツジのことを指します。ツツジにもいくつか種類があり、サツキツツジは杜鵑花と書きます。ホトトギスと同じ杜鵑ですね。
ここで何気ない会話だった「ホトトギスの鳴き声」「ツツジの花」「甘味屋ドーダン」が繋がることになります。
先の真乃の台詞で、さり気なく「知らなかった……」と挟まれているのが杜鵑の会話と同じものになっていて心憎いですね。

余談ですが、星をテーマにしたイルミネーションスターズのこと、既存カードでも満点の星をモチーフにしたものがいくつかあります。
わかりやすいのはpSSR【スタァライトショウタイム】八宮めぐるの「星空ステージ」と、pSSR【星掬い藍仰ぐ】風野 灯織の「気づいてほしい」。
イルミネがドーダンを行きつけのお店にしたのも、ある意味必然だったのかもしれません。

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sSSR 【虹色のしおり】 風野灯織 「ただの卵焼き」

イベントシナリオは報酬sSSRコミュを読むことで真のエンディングを迎える。これはシャニマスに慣れた方ならよくご存知でしょう。
というわけで、【虹色のしおり】 風野灯織のコミュについても触れていきます。

「ただの卵焼き」は、灯織がめぐるに卵焼きの作り方を教えるお話です。
物語の始まりは、灯織が書店で料理本を探しているところから。
いろいろな本を見て「これは……まだ、難しいかな」と躊躇しますが、『毎日のおいしいごはん』に書かれた『何よりも、体が資本なのですから』という一文に惹かれて購入します。
この描写から、このシーンがpSR 【手作りの心遣い】風野 灯織の幕間で、プロデューサーからちゃんと食べるよう言われたことを意識しているのであろうことが伺えます。

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【追記】
くもりガラスの銀曜日を読む を読んで、時系列はpSR 【手作りの心遣い】風野 灯織の幕間ではなく、同カードの「バランスに気をつけて」で描かれている灯織の子供時代だろうと考えを変えました。
同コミュでは卵焼きについて「小学生の時から作っていたので」「初めて作ったのも卵焼きでした」と言及しています。
「子ども向けのほうが読みやすいけど」「おこづかいは……うん、足りる」という台詞にちょっと引っかかりつつ、「体が資本」というキーワードに引っ張られてスルーしてしまいました。
そしてここ、「子供」ではなく「子ども」になっているのは果穂と同じく、まだ習っていない漢字なんですね。
「供」は小学6年生で習う漢字なので、おそらく小学5年生以下のときの話でしょう。

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場面が変わり、灯織がめぐるに卵焼きの作り方を教えているシーン。
こちらは時期がわかりませんでしたが、おそらく比較的最近の出来事ではないでしょうか。

「どうやってそんなにうまくなったの?」と聞くめぐるに、「ただ、毎日作っていただけ」「栄養あるものをちゃんと……って」と答えています。
場面転換前に買った本が『毎日のおいしいごはん』だったことを考えると、それからちゃんと毎日の料理に活かしていたことが伺えますね。

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めぐるが味見係なのは、ファーストガイドブックドラマCD「遅く起きた朝は……」のときからですね。そちらでは灯織の作ったピラフを味見していました。
ここで「灯織が作ってくれたお弁当に入ってたのが、すっごーく美味しかったから」と言っているのも既存コミュがありそうなのですが、そちらは探しても見つけられませんでした。
(sSR【天然色ピクニック】櫻木 真乃では灯織のお弁当が出てきますが、真乃と二人で出掛けるシーンなのでめぐるはいません)

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できあがった卵焼きを喜んで食べるめぐる。
灯織はいろいろ課題を指摘するのですが、めぐるはニコニコ笑顔でうなずきつづけます。卵焼きが作れたの、嬉しかったんだなぁ……
あとここ、第3話に出てきた有識者メグル・ハチミヤ氏がまた出てきます。これも好き。

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自分の作った卵焼きを、灯織にも食べてほしいと勧めるめぐる。
美味しいかを聞きかけて一転、「灯織にとっては、いつも食べてる味かー」と少し寂しそうになります。
ここ、めぐるは自分でちゃんと作った卵焼きが美味しくできて嬉しかっただけではなく、その気持ちを灯織と共有したかったんだろうなと思います。
それに対して灯織は、「これはただの卵焼きじゃなくて、めぐるが作ってくれた卵焼きだから」「ぜんぜん違うよ、とっても美味しい」と返します。
これも、本心でもあるし、しょげためぐるに「ちゃんと同じ気持ちだよ」と伝えようとしてるんだろうなぁと思うといいですよね。灯織、成長したなぁ……

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そして、味は一緒のはずだけど「前に灯織が作ってくれたお弁当の卵焼きのほうが美味しい気がするんだ」「ごはんの味って、味だけじゃないのかも」とめぐる。
何が違うのか…… それはもちろん、作り手の気持ちですよね。真乃とめぐるを想って灯織が作ってくれたお弁当だから、自分で作ったものより美味しく感じる。
またこの台詞は、【手作りの心遣い】というカード名をそのまま指しているように思います。

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【追記】
読み返して、ここもpSR 【手作りの心遣い】風野 灯織の「バランスに気をつけて」と対応してるじゃん! ということに気づきました。
同コミュでは、小学生のころの灯織が父親に卵焼きを作った記憶を振り返り「父が美味しいと言ってくれた」「少し焦がしてしまった記憶があります……絶対に美味しくはなかったはずなんですけどね」と懐かしんでいます。
これもまた、「ただの卵焼きではなく『大切な娘が作ってくれた卵焼きだから』美味しい」ということですね。
このときの父親の気持ちを「めぐるが作ってくれた卵焼き」で灯織が味わうことになるの、エモがすぎる……

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sSSR 【虹色のしおり】 風野灯織 「ただの石ころ」

このコミュではヒスイのお守りをめぐる物語が描かれています。

はじめは、灯織が落ち込んで自己嫌悪に陥っているシーン。
「別に、怒ったわけじゃなくて……」「思ったこと言っただけなのに……」「なんで、思ったとおりに届かないんだろう」と呟いていることから、気持ちがちゃんと伝えられずすれ違ってしまう出来事があったのだと伺えます。
ここは第6話の「この気持ち、全部伝えられたらいいのに」と同様、最初はLight up the illumination中かと思いましたが、そうではなくアイドルになる前の灯織の話かなと考えています。

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そんなときに見つけた、パワーストーンのお店。
シーンはここでフェードアウトしますが、この後にメノウのお守りを買ったのでしょう。
真乃を励ますために渡したメノウのお守りは、もとより「自分の気持ちを人にちゃんと伝えるため」に買ったものなんですね。
もしかすると、灯織がおまじないや占いに傾倒するようになったきっかけが、このときのメノウのおまもりなのかも知れません。

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場面が変わり、灯織がメノウのお守りをなくしてしまったシーン。
思いっきり取り乱し、行動を思い起こしながら心当たりのある場所を探していきます。
灯織にとっては『不器用な自分が、気持ちをきちんと伝えるための特別なお守り』なんでしょうね。

たっぷり探したけれど見つからず、事務所を訪れる灯織。
そんな灯織に、めぐるはピクニックの写真を渡します。
ここで灯織はとても不安そうに「本当にありがとう」「とっても嬉しいと思ってるから、ね……?」「届いているならいいんだけど」と話しています。
これ、心を繋げてくれるメノウのお守りをなくしてしまったことで、ちゃんと伝わっているかが不安になってしまっているんでしょうね。
そこまで大切なお守りを真乃に貸し出したのかと思うと、改めてその決断の重さが伝わってきます。

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そして、続けて真乃からはお揃いのメノウのストラップが渡されます。
灯織から「心を繋げてくれる」と教えてもらったから、3人で一緒につけたいのだと。

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メノウのお守りをなくした日に、心を繋ぐメノウのストラップをもらう。
しかも、それは「自分の気持ちを伝えるために、メノウのお守りを貸したから」。
それは、灯織も心からの笑顔になりますよね。

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それでもまだ、気持ちがちゃんと届いているか不安な灯織。
こうやって聞いてしまうのが灯織で、それを笑って受け止めてくれるのがイルミネーションスターズなんだよなぁ……

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sSSR 【虹色のしおり】 風野灯織 「たわいのない会話」

最後は、第3話のドーダン店内から繋がる話。
ここでは、イルミネーションスターズがドーダンに通うきっかけの物語が描かれています

人がいない店内を見渡し、仕事の話をするのに都合がいいかもしれないという灯織。
ただ、お客さんがいなさすぎてお店が潰れちゃうかもしれないという灯織に対し、めぐるは「わたしたちが通おう!」と宣言します。

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ネットなども調べて、あまり有名なお店ではないことも確認します。
そんな折、グルメレポートのいいお店があったら教えてほしいと言われたことを真乃が思い出します。
行きつけのお店として有名にしちゃおうと張り切るめぐるに、有名になったら本末転倒だし、そもそも有名にできるほど自分たちの知名度が高くないと水を差す灯織。

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自分たちが有名になったら行きつけのお店として紹介しよう、と夢を語る3人。
「有名にするからいいんだよー」というめぐるに「じゃあ、しよう。絶対に」と灯織が返すの、味わい深いですね……
そして「いつかまた、このあんみつを食べて思い出そう」と語る灯織。

第6話で、真乃は銀曜日のことを思い出していました。きっとそのときに、このやり取りのことも思い出していたんでしょう。
駆け出しのころより有名になって、新曲リリースに合わせたインタビュー記事も作られるようになって。
「以心伝心」からテーマの変わったインタビューには、「駆け出しのころからの行きつけの店」としてドーダンが紹介されているんでしょうね。

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だから、それまでは……

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全体を通した感想


台詞ひとつひとつにコメントしたくなってしまうほど密度の高いコミュだった結果、文字数がすごいことになってしまいました……
これだけ書いてるのでおわかりだと思いますが、めちゃくちゃ好きなストーリーです。

特に、過去コミュの幕間を縫うことで初期の空気感を掘り下げつつ、「くもりガラス」「銀曜日」そして「ドーダン、ツツジ」というモチーフで繋げることで、ストーリーとしてもしっかりテーマを持ったものになっているのはすごいと思います。
イルミネのことを何も知らなくてもストーリーや雰囲気を十分味わうことができて、これまでのイルミネを知っていればいるほど思い出アピールを喰らう。しかも、読み返したり調べたりするほど、綿密に貼られた伏線や繋がりに気づく。
前から思ってましたが、シャニマスのライター陣はマジで何者……? 構成うますぎません?

ユニットイベントとしては灯織回ということで、灯織が初期から持っている「対人関係での不器用さ」をしっかりと掘り下げた内容でした。
気持ちを上手く伝えられないことを「くもりガラス越しの景色」で表現するセンスもさることながら、この物語がpSSR 【清閑に息をひそめて】風野 灯織 から綿密に繋がっているのもすごいです。
【清閑に息をひそめて】では、頑なにプロデューサー目線のみで話が進み、灯織の悩みについては詳細が明かされませんでした。これはまさに「くもりガラス越し」にしか灯織の悩みを察することができなかったんですよね。
G.R.A.D.で灯織視点から悩みの内容が明かされ、今回のイベントで「プロデューサーからはくもりガラス越しにしか灯織の気持ちが見えていなかったこと」が描かれたわけです。
清閑灯織は1月20日の実装なので、実に4ヶ月かけての種明かしというわけですね。手の込みようがおかしくないですか???

最後に、楽曲との関連について。
「君の好きなこと したいこと まるごと知りたいよ 教えてね」という歌詞や、第5話で流れたのがトライアングルであったこと、『銀曜日』が秘密の合言葉であることなどを考えると、新曲インタビューはトライアングルについてのものではないかという気がします。
ただ、時期的にはもともとGR@DATE WINGがリリースされていたはずの時期なんですよね……
そう考えると、GR@DATE WING 02のカップリング曲である可能性も捨てきれません。
もしカップリング曲の歌詞に「気持ち 全部は見えないよ」とか「満点の星」とかそういう感じのワードが散りばめられていた場合、おそらく死人が出ることになるだろうと思います。
10月が待ち遠しいですね。

きちんと読み解きたくて、イルミネのコミュは一通り読み返した上で明らかな関連コミュはひととおり言及したつもりです。
ですが、正直これでもまだ見落としている要素がありそうな気がしています。もし何か気づいたことがあればコメントやTwitterなどでご指摘いただけると嬉しいです。貪るように読み返します。

長文でしたがここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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