近年の小学校お受験試験内容の動向6 個別テストの内容 お受験合格への道2022


 今回は近年の小学校お受験試験内容の動向の第6弾として個別テストの内容についてお伝えさせて頂けたらなと思います。

個別テスト

 担当者と一対一、個別で行われるテストを指します。口頭試問とも言います。

 解答者は幼児になるので、言葉だけで答えることは困難です。おはじきやプレート、絵、時には本物や、それに近い物を使って出題され、おはじきを置いたり、絵に指を差して答えたり、プレートで指示された形を作ったりして回答します。

 学校によっては、いくつもの部屋を回り、何人もの先生とお話しする場合もあります。

 個別テストでは、ペーパーテストと異なり、設問を聞き逃しても、
 「それまで!」
 という様に終了しません。聞き直しができます。

個別テストの特性

 幼児のテスト型式は、この様な個別テストが適していますが、問題を聞き、考え、言葉で答えるので回答する子どもには、つらいこともあります。

 ペーパーテストでは、答えがわからなくても、適当に印をつけて正解になる場合もあります。

 しかし、個別テストには偶然の要素は少なく、自分で回答しなければなりません。そのため、養育環境そのものが露呈してしまうテストであるとも言えます。

 例えば、これまでの養育方法が過保護や過干渉の場合、親離れができていない子どももみられ、
「ママ、手伝って!」
「どうしたらいいの、ママ!」
 などの発言が認められる場合があります。

 しかし、テスト中は誰も手を貸してくれません。思い通りにならない不安や焦燥感から態度も、オドオドとして落ち着きがなくなり、本来の力を発揮できない恐れもあります。

過保護な家庭のケース

 以前、過保護な子育てをしている家庭で
 「受験に合格するにはやっぱり、コネなんだわ!」
 とお受験失敗の理由を発言している方がいました。

 詳しく説明していくと、その子ども(受験者)は、お母さんと一緒であれば、何でもできる抜群の能力の持ち主です。

 しかし、小学校お受験では合格しませんでした。そのため、不合格の理由は成績ではなく、受験校の出身者ではないからと決めつけていました。

 また、紹介者、つまり、コネクションがないために、合格しなかったと主張していました。

 出身者だけを入学させたくても収容人員は限られていますし、紹介者がいれば合格するのであれば、受験料を取ることは詐欺行為にあたります。

 したがって、こういった怪情報は、単なるうわさに過ぎません。

 慶應義塾幼稚舎や青山学院初等部のホームページには、
 「推薦状や紹介状は必要ない」
 「用意しても受け取らない」
 と、公表していますし、暁星小学校の説明会でも「紹介状や推薦状は必要ない。本人の実力を第一とする」と明言しています。

個別テストの目的

 小学校の入学試験の狙いは、家庭を離れて、
 「一人で、どれだけのことができるか」
 であり、自分だけで乗り越えなければいけません。

 個別試験の対策として、入学試験問題集を実践するのは試験がある以上、必要ですが、間違った学習方法だと逆効果になる場合もあります。

 例として、一枚の絵を見て自分で話を作る創作の問題があるとします。子どもが創作を上手にできないと、家族が創った話を記憶させるようです。

 しかし、大人の考えた話や発想は、大人のものですから、子どもは抵抗を感じることもあります。

 また、自分で考えたものではなく、記憶させられた話は、忘れやすいものです。試験の担当者も大人と子どもの創作の話の違いには案外気付くものです。

 小学校の入学試験は、生まれて初めて入った場所で、初めて会った先生のいうことを聞き、様々なことをする必要があります。場所が変わり相手が変わると、普段よりうまくいかないのも当然です。

 そして、過去の問題集と全く同じ出題は、ほぼ、あり得ません。出題に少しでも違いがあると、記憶した創作の話も回答が揺らいでしまいます。

 試験の担当者も、そういった回答が子ども自身の考えかどうかという部分を判断しています。そのため、単に記憶させるだけでは駄目なのです。

個別テストで評価されること

 ペーパーテストは、正解していても、回答が子ども自身の考えかどうか、わからない場合もあります。

 個別テストは、この部分が明確に分かります。子どもが自信を持って答えられるのは、日常生活で、しっかりと体験していることだからです。

 また、家庭での教育に対する姿勢も、はっきりと表れます。
「うちの子、引っ込み思案で、消極的だから、個別テストに向いていないわ」
 と言う方もいますが、単に家庭の養育の姿勢がそのまま表れているだけとも捉えられます。

 私学には、それぞれ独自の建学の精神、教育理念があります。ご両親の教育に対する考え方と、学校の教育方針に共通認識があり、限りなく近いことが、学校を選定する大切な条件です。

 小学校の教育は、家庭と学校とお子さんの三人四脚で行われるものであり、決して蔑ろにはしてはいけないことです。

 余談ですが、女の子で、一人っ子の場合、正確が消極的になりやすい傾向にあります。しかし、過保護から身についた甘えん坊や、過干渉からなってしまった消極的な性格から出る引っ込み思案とは、大きく違いがあります。

 一人っ子でも、自分でやるべきことを、しっかりさせている家庭で育てられていると、物事に一所懸命に取り組みます。わからない問題にぶつかっても、簡単にあきらめません。

 精一杯、挑戦した結果、できなかったとしても、
 「わかりません」
 という表情に、悔しさは感じますが、総じて明るさがあります。普段の生活が、そのまま出ているからと言えるでしょう。

 失敗を恐れずに、一所懸命に考え、頑張り、挑戦する意欲のある子に育てたいと考えている家庭の姿が、そこにあるからです。学校側の求めている子は、こういう子です。自身で考えていることを、自身の言葉で表現できる子です。

近年の個別テスト出題例

 以前にもお伝えしましたが、最近は、以下の様な問題が増えています。

 ※机の上に半そでのYシャツと、近くの箱に500mlのペットボトルとプ
 ラスチックのコップ3個、黄色と赤色のリボンが入っている。
  ・Yシャツを着て、ボタンを留めましょう。
  ・箱からペットボトルを出し3個のコップに同じになるように水を
   入れましょう。
  ・終わったらペットボトルに黄色いリボンでちょう結びをしましょう。
  ・最後にYシャツを脱いで、たたんでください。

 このテストからは、家庭での基本的な生活習慣やしつけ、自立心を評価できます。個別テストからは、子どもの生育歴を読み取ることができるのです。

 そして、それが、家庭の養育姿勢であり、学校側のいう「ご家庭の教育方針」です。これらを理解していないと、ご両親が面接で模範解答をしても、意味のないものになってしまいます。

 また、個別テストでは、自立心や自律心がどの程度、培われているかもはっきりと表れます。

 「自分の考えを言葉で表現する」のは、幼い子どもたちには、とても難しいことですが、基本は、ご両親との対話から培われるものです。

 「対話の反対は沈黙ではなく、命令と強制です」
 と、ペーパーテストを廃止した立教小学校の元校長であった田中司先生の発言がありましたが、
 「こうしなさい!」
 「それはだめ!」
 などと一方通行のコミュニケーションでは、対話は成り立ちません。お子さんとの対話を弾ませることから、言葉で考え、表現する力は培われます。

 お子さんは、ご両親の目を見ながら楽しく話をしているでしょうか。

まとめ

 個別テストはそのテストの手法は様々ですが、目的としては共通しています。大きな目的としては、家庭の養育環境の把握を通じた幼児の生活能力や集団適応能力であり、その根幹に自立心や自律性が養われているか評価をされています。

 そのため、養育環境が過保護や過干渉であると個別試験では良い評価が得られないという結果になり得ません。

 暗記学習で、ペーパーテストの結果が良くても情緒を育んでいないと小学校お受験に失敗する恐れがあります。

 小学校お受験は人間形成の土台を評価する試験に変容しているといえるでしょう。

 そして、その様なお受験競争を乗り越えていくためには、情緒教育を中心とした体験学習を多く取り入れ、社会の構成要因としてのあるべき人格を育むことが大切だと言えます。
 ※次回は、集団テストについてお話します

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 今回のコラムも私の個人的な知見に基づくものですので、必ずしも正しいとは言えませんし、他で主張されている理論を批判するものではないことをご理解いただいたうえで、一考察として受け止めて頂き、大切なお子様のお受験に役立てて頂けたらと思います。

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