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復元された「小倉織の袴」お披露目の巻

江戸の小倉三大名物

2022年4月に、この文章を書いている人は小倉城庭園に就任したのですが、「小倉城庭園らしさとは何だろう」と考えるところからがスタートラインでした。「江戸時代らしさ」がそのひとつになると考えたときに、学芸員の先生から江戸の小倉三大名物について学びました。それが、小倉織・三官飴・火打ち石でした。私は「まず始めの企画展は小倉織でいきたい」「三官飴と火打石も就任期間中に何かしら取り上げたい」と考えました。

小倉城庭園の企画展【小倉織~その技と美~】

そこで、小倉織協同組合さんに依頼し、小倉織の企画展を開催することになりました。初めてのことで、ご迷惑をおかけしながらも、なんとか開催できたのが、こちらの企画展【小倉織~その技と美~】になります。

小倉織~その技と美

どうですか、この格好の良いポスター。
どうですか、このクールな展示室。

小倉織~その技と美~

企画展では、昔ながらの製法の説明や機(はた)の展示に加え、次の時代を感じさせるクリエイティブな展示をしていただきました。まさに、伝統と革新が共存する展示となったのではないかと思っています。小倉織協同組合さん、ありがとうございました。多くの方にご来場いただきました。

小倉織協同組合さんには、小倉織のクリエイターさんが参画されて作られました。小倉織を復興された築城則子先生、小倉縞縞さん、豊前小倉織研究会さん他、多くの作家さんがいらっしゃいます。

北九州市 | 小倉織協同組合 (kokuraori.net)

小倉城庭園の常設展「小倉織」

この時から、豊前小倉織研究会さんの伝承会部門である「小倉織伝承会」さんが、小倉城庭園で小倉織を織っていただけるようになりました。伝承会さんに協力いただいて、小倉城庭園の常設展には「機織している人がいる」「気軽に機織を体験できる」という状況を作ることができました。観光で来られた方に、とても喜んでいただけています。

小倉織を体験できるワークショップ 随時開催中です

昔ながらの製法で復元された小倉織の袴

その伝承会さんが、このたび、昔ながらの小倉織の袴を完成させました。綿から作って、綿の種を外して、弓で綿打ちして、糸車で糸を紡いで、染料で染めて、機織して、袴になる。そのような過程を経て、手ずから完成させた小倉織は密度が高く丈夫です。
袴の完成を祝って、2024年2月4日、発表会が開催されました。

完成した小倉織の袴

小倉織袴発表会 式次第

1, 開会の挨拶
2, 司会者によるイベント主旨説明
3,来賓・ゲスト挨拶
4, 小倉織の歴史と文化について
5,小倉織の袴を履いたウォーキングショー
6,各袴の特徴やデザインについての説明
7,質疑応答セッション・記念撮影

という形で進行しました。一番のメインは、小倉城武将隊が袴を履いて登場したシーンです。縦縞が美しい袴になっています。

小倉城武将隊 長岡佐渡と宮本武蔵(晩年バージョン)

二人には、実際に小倉織が流行したきっかけとなったエピソードを披露していただきました。

小倉藩の家臣が、刺客に槍で突かれたが無傷のシーン

 こちらのシーン、『北九州市史』内の記述を引用します。前回の記事で触れた小笠原騒動での事件です。

小倉織の袴はあるエピソードによって急速に需要が増えていったという。そのエピソードとは、今から二〇〇年以上も前の小笠原忠苗侯のころ、小倉騒動があり、寵臣犬甘兵庫の反対派中老渋田見主膳がある夜城中からの帰途に刺客に襲われた。しかし、刺客が槍で主膳の腰を刺した時に槍の穂先が下に向き、袴の裾に滑ったために主膳はかすり傷ひとつ受けず、穂先が滑った擦り跡だけで袴も破れなかったということである。この話が四方に伝わり、武士の災難除けの袴として全国に喧伝され、急速に需要が増えていったというのである。

〈北九州市史 近代・現代産業経済2 p1074〉

余談ですが、渋田見主膳はもうひとつの御家騒動、白黒騒動の際にも登場します。

小倉織袴発表会 大盛況

その後、小さな子どもたちとの撮影会が開催されるなど、大盛況で終了しました。全部で70名ほどの来館者と、3社の新聞社さんが来られていました。
関東地方からこの会に参加するためだけに来られた方もいらっしゃったとか。このような会を開催した甲斐があったなあと思っているところです。

小倉城庭園は今後とも、人と人、人と文化、人と歴史が交差するメディアとして、様々な取り組みを続けてまいります。このような日記的な記事も公開していきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました!
豊前小倉織研究会、小倉織伝承会の皆さん、お疲れ様でした!

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