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240409火 夜道


最終のバスを降りると、星空しかなかった。

岡山駅から40もの停留所に止まる。徐々に灯りが減って、52分かけて暗闇に目が慣れていく。乗客の消えたバスを見送り、故郷の夜道を歩く。土産物を抱え、母と2人で。

街灯も、ひと気も物音も、何も無い。

20時半。明るいので見上げると、大きな夜空に、星たちが並ぶ。先を急ぐ母を呼び止め、スマホを向けた。撮れまぁ(星は撮れないでしょう)と言われつつ、自分でもそう思ったが、カメラを起動させた。綺麗な夜空に、光輝くスマホの画面を重ねるのは、少し気が引けた。

本当に綺麗に撮れた。猫の世話が気になり家路を急ぐ母を何度も呼び止め、立ち止まっては、夜空を見上げる。



街灯がなく、幅1メートルにも満たない畦道。一応、コンクリートが施されている。真っ暗な夜道は、畑、草むら、溝、歩道と、黒のグラデーション。幼い頃の記憶と勘だけで足を踏み入れていく。母に、見えるのかと尋ねると、よう見えらあ、と返す。

街では、母は私の後ろを歩く。振り返ると、遠くをゆっくり歩いていることも多い。歳を感じるようになった。その母が前へ前へと進む。猫の待つウチへ。


家の裏山は、言葉にならない美しさだった。


静岡1泊2日の旅。今日は大雨で、富士山は全く見えなかった。また一緒においで、と言われているのかなと思った。


ばあちゃんは、ずっとここに住んでいた。富士山なんか観たくもなんともねえ、と言っていた気持ちも、少し伝わった夜。


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