KokugoNote #20 高2現代文・国語表現

続き。

西東三鬼さんの句を2つ。

①水枕ガバリと寒い海がある

まず「水枕」とは何か?からですね。
「ゴムなどでつくり、中に水や氷を入れ、頭を冷やす時に使用するもの」です。
水枕を使っている人は高熱で病床に臥(ふ)せっていることことが判ります。

その後に「ガバリと寒い」ですが、うんうんうなされている中で、「寒い」??というのはどういう時かと、冷やされていなかった部位が急に冷えて、ブルッとする時ですね。
つまり、
寝返りを打ったことを「ガバリと」で表現する訳です。
「寒い」は冬の季語で、また次の「海がある」に続く「句またがり」ですね。
それにしても、「海がある」とは大袈裟だと思いませんでしたか?

「海」を想像してください。
病気で横になっていてフラフラで、自分の身がプカプカ浮かんでいる海です。泳ぐ力もなく、揺られるままにどこかへ流されていくような感じです。
この時の気持ちはいかがでしょうか?
さぞ不安でいっぱいだったと思います。
回復の兆しが見えない病床でどういう気持ちだったのかを読み取ろうと努力してくださいね。


②卒業や尻こそばゆきバスに乗り


「卒業」という季語は春ですね。
切れ字の「や」で詠嘆の気持ちを表現します。卒業に対する強い思いがあるのです。どういう思いなのか?を一緒に考えましょう。

季語は卒業、春ですね。
まず卒業式の前か後かを考えましたが、「こそばゆき」がヒントになりますね。

卒業式前なら、式典独特の緊張感やとうとう終わりが近づくという感慨深さなどがあると思いますが、ここでは「こそばゆい」のです。
例えば、皆の前で褒められて、くすぐったいというのが、「こそばゆい」なのです。
ということは、
卒業式で、おめでとう、おめでとう!とお祝いされたけれども、何かを成し遂げた訳でもないのにどうも落ち着かないなあ、きまりが悪いなあという気持ちが、この「こそばゆき」と理解するのが適切でしょう。

頭をぽりぽり掻(か)いてしまう様子が浮かぶところですが、類想類句を避けるためには、誰しもが思い付く視点とは違った視点が必要です。
そこで、西東さんは帰りのバスに乗った姿を思い浮かべ、落ち着きの悪さを「尻」に置き、「こそばゆき」と添えたのです。
ガタガタとバスの椅子で、窓の外を眺めながら、なんとも言えない気持ちで揺られる姿が想像できますね。


俳句や短歌は、言葉の吟味が何よりも大切なので、どういう時にこの言葉を用いるのか、どのような背景を想起させるものなのか、徹底的に調べなくてはいけません。

今学期も二度の意味調べ&作文を行いましたが、実際に文章を作ることで語感を身に付けていかないと、読解力は向上しないのです。
どのようなジャンルでも良いので、少しでも興味を持ったら関連図書を読むということを繰り返して、語感を養う必要があります。

授業の中だけで勉強していても、知識や意欲はもちろん、思考力も身につくことはないので、自分の将来のために、いや正確には、将来の自分自身をがっかりさせないために、貪欲に世の中のことを知ろうとすることが大切です。

次年度まであと一ヶ月半しかありません。
部活動や友だち付き合いなどもあると思いますが、皆それぞれ別々の人生を歩むことになるので、進路についてよく考える期間にしてくださいね。


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