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現代文の授業をデザインする話

私が担当する現代文の授業では、ここ数年、反転授業を組み合わせています。なぜ反転授業を取り入れようと思ったのか、また、具体的にはどのような流れで行っているのかをお話しします。

なぜ、反転授業を取り入れているのか

反転授業を取り入れるようになった理由はいくつかあります。

1.授業時間が限られる中、できるだけ効果を高めたい

授業時間は限られています。1年生の必修科目である「国語総合」は、どの学校もおよそ週に4〜5単位(時間)が配当されていますが、古典の授業に割く時間がどうしても多くなるため、現代文分野は週に2単位程度しかできません。また、2年生以降に履修することの多い現代文Bは週に3〜4単位。これは恵まれている方で、週に2単位程度しかできないこともあります。

この限られた時間を最大限に活かしたい。せっかく生徒が揃っている環境を大切にし、生徒がより能動的に授業に参加できるようにしたいと考えました。

そんな大切な時間です。グループで話し合いをしたり、クラス全体で意見交換をしたい。そう考えた私は、生徒が自分でできる学習は事前に済ませられればいいと思いました。

2.予習は予習の中で完結させたい

予習プリントに取り組むのはどうか。それでもいいのですが、答え合わせをするにしても、解説や補足が必要になることもあります。できれば自分自身で解説したいのですが、それを授業時間の中でやるのであれば、予習の意味がありません。実際、予習プリントを配布したものの、わからない問題の解説をすることに時間が取られることがありました。

予習の中で解説したいことをきちんと伝え、その上で授業を展開したいのです。

一方、現代文の予習にはいくつかの問題があるとも感じていました。

現代文の予習に時間を割く生徒は、少ない

まず、現代文の予習に時間を割く生徒は多くありません。他教科の勉強に時間がかかるため、現代文の予習はどうしても後回しになってしまいがちです。教科書の本文を読んでおけばなんとかなる、と思われたり、授業の中で読めばなんとかなる、と思われたりしている現状があります。

短時間でしっかりと予習ができる方法が必要です。

教科書付属ワークは、予習に使いづらい

「予習をしておきなさい」と言っても、現代文は何をすればいいのか分かりにくい教科です。漢字練習、意味調べをやれば内容がわかるわけではないからです。

一方、教科書には、教科書会社が作ったワークがあります。学習課題集とか、教科書ワークとか呼ばれています。これを予習に使うことも考えました。

ですが、問題のレベルに差があって、自習に適している問題と、適さない問題とがあると感じます。また、問題が単元ごとにしかまとまっていないため、部分的に予習してもらうことが難しいこともあります。解答を配布しない方針の年度もあり、自分で答え合わせをできないこともあります。そうすると、結局は授業の中で解説せざるをえなくなってしまいます。

もちろん、効果的に活用できている先生もたくさんいらっしゃいます。ですが、自分の力不足でうまく活用できませんでした。

予習は映像授業と組み合わせることにした

自分の持っているiPadで何かできないかと考え、Appstoreで調べました。そして、板書と音声を組み合わせて動画にできるアプリを発見しました。「ExplainEverything」というアプリです。

iPadとイヤホンマイクを組み合わせれば、簡単に動画を作れます。これだ! ということで、予習プリントと対応動画を作り、生徒に配布することにしました。

生徒はまずプリントに取り組みます。質問は基本的な内容で、自力で取り組めるものにします。

そして、動画を視聴します。ひとつの動画はほとんどが5分程度、長くても10分程度。これならスキマ時間にも予習できますので、他教科の勉強に忙しい生徒でもなんとかなります。

また、動画を使うことは副次的なメリットもありました。それは、動画を何度も見返すことができることで、テスト前の復習にもなるということです。授業を終えた後、もう一度動画を視聴することで、内容をより深く理解できるようになります。

予習動画はYouTubeで公開しているので、私の担当する生徒でなくても気軽に視聴できます。

現代文の授業は、話し合い中心

さて、生徒は動画を見て予習を済ませた状態で授業に臨みます。臨んでいるはずです。臨んでいるといいな。笑

授業では、動画で解説したことをもう一度話すことはほとんどありません。内容は、ほぼグループでの話し合いです。

ここで使うのが、GoogleJamboardです。

すでに多くの学校でも活用されているGoogleJamboardですが、これは本当に便利なアプリです。

イメージは、「全員で共有するホワイトボード」。教室の前方にあるこくばん(ホワイトボード)を教師が使うのではなく、パソコンやタブレットの中にホワイトボードがあり、それをみんなで共有しているのです。

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このスクリーンショットは、『檸檬』(梶井基次郎)に取り組んだものです。グループで話し合った内容を、付箋で画面に貼り付けてあります。そこに私が、手書きでコメントを書き込んでいます。

JamBoardで授業を展開する流れについて、他サイトで書いた内容を再掲します。

1.準備
・Jamboardで使用するスライドを、PowerPointやKeynoteで作成します。
・スライドのファイルを、画像形式(png形式やjpeg形式など)で書き出します。
・Jamboardファイルを新しく作り、先に保存した画像ファイルを「背景」に設定します。
2.実践
・生徒側でもタブレットやPCを使ってJamboardのファイルを開いてもらいます。
・話し合いが始まったら、生徒はグループごとに付箋を作成し、自分たちのグループの場所にペタペタと貼ります。
・それをもとに、全体でさらに話し合いを深めていきます。 
・手書きが可能であれば、直接書き込んだりもできます。
3.授業後
・Jamboardのファイルをpdfファイルに変換し、生徒に配信します。
4.よいところ
・Jamboard上での話し合いでは、他グループの内容を見ることもできます。そこからさらに気づきを得たり、自分たちの内容に不足があることを知って話し合いを続けたりできます。(アクティブ・ラーニングが実現できるこの点が一番のメリットだと思っています)
・前回の話し合いの内容がそのまま保存されているので、次の授業でもすぐに振り返ることができます。
5.補足
・同様のことは、Googleスライドでも実現可能です。こちらを使うときは、1グループで1シートずつを設定し、そこに自由にレイアウトさせます。
・PCやタブレットは1人1台でなくてもかまいません。むしろ1グループに1台のほうがスムーズに動きます(Wi-Fiの速度であったり、同時編集の問題であったり)
・私は授業スライドをすべてJamboard上で展開しています。そこにペンで書き込んだりすることで、毎回の板書としています。

授業は授業時間の中だけで完結するわけではない

授業は、授業時間の中だけで完結するわけではないと思います。予習も大切です。予習することで生徒が一定レベルの知識・理解を持って授業に臨めます。そうすれば、一歩先に進んだ授業を展開することが可能になります。生徒同士の話し合いによって、新たな発見が生まれたりします。

生徒が予習をきちんとする仕掛け、予習したことを授業で活かせる仕掛けを、これからも考えていきたいと思っています。


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