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石高プロジェクト_解体新書_その壱

石高プロジェクトは
福島県の西会津町で誕生した「持続可能な未来型地域」をめざす取り組みです。その出発点として、地域の課題解決や農業の振興を目的とした新たなシステムとしてのモバイルアプリを開発しました。米作りに焦点をあて農家とファンが支え合う仕組みをデジタル上で実現し、故くて新しい農業を考えます。


「石高」は「こくだか」と読みます!

歴史の教科書にしか出てこない言葉なので読み方を忘れている人もいるのではないでしょうか。
そんな人のために、一応歴史をおさらいしておきましょう。

石高制(こくだかせい)とは、土地の標準的な収量(玄米収穫量)である石高を基準として組み立てられた日本近世封建社会の体制原理のことである。土地の大小や年貢量のみならず、身分秩序における基準として用いられた。

Wikipedia

石高は、江戸時代の日本において、米の収穫高を表す重要な単位でした。藩(大名が支配する領土)の経済力や社会的地位を示す指標としても用いられました。
​例えば、功績を上げた者には報酬として「今回のあなたの功績の褒美に10石を与える!」といった形で領地が分け与えられることもありました。
​一方で、当時の農民にとっては、石高は領主に納めなければならない年貢の単位でもあり、厳しい取り立てを象徴する嫌な単位であったかもしれません。

数々の何百年の歴史ある家屋が今でも当たり前のように住居として使われている、西会津町。
現町長である薄町長にこのプロジェクトについて説明をしたところ「今どきのカタカナ言葉より、石高という言葉の方が普段使っているから馴染みがあって良い」と言っていただきました。「歴史」が現代と地続きにつながっている場所なんだと感心しました。

石高プロジェクトって何なの?

石高プロジェクトの説明資料としてよく使っている図を見ながら
このプロジェクトがどんなことを考えているのか説明していこうと思います。

石高プロジェクト 仕組み グラレコ

グラレコ ① ②

今回システム開発を担当したクエストリーさんが作成してくださった記事の中で、西会津チームメンバーの1人である藤井靖史さんは以下のように話しています。

金融という考え方が広まり、利子などの”実際の物質と紐づかないお金”が生じたことで、指数関数的にお金の価値が上がり、経済は発展してきました。そのような成長を前提とした経済圏を否定するわけではありません。

しかし、安定した生活を保つための自然に紐づいた経済圏の存在も認めるべきで、それを選べる世界が理想ではないか。これまで当たり前だった「お金」というシステム。その「お金」がないことで死んでしまう人がいる。藤井さんは、そんな「お金」は道具として不完全なものではないかと考えています。

ドイツの児童文学作家であり「モモ」の著者であるミヒャエル・エンデも『パン屋のお金とカジノのお金は違う』と唱えています。

その時代ごとに再定義する余地がある「お金」のシステム。自然の活動をベースとしたお金をデザインすることが可能なのではないか。

〈事例紹介〉地方創生×ブロックチェーン福島県西会津町における”石高コイン”の仕組みの構築

とにかく美味しいお米が育つ西会津町では、多くの町民が自分の田んぼの米を食べていて「お米は買うものじゃない」と言います(管理は他の人に任せているケースが多い)。
もちろん都市部と比べると収入額などは少ないですが、別の「豊かさ」があるのは間違いないでしょう。

しかし、今のお金のシステムや社会構造のままでは若い人が都市部に出ていくのは当然です。「だったら新しいシステム作っちゃおうよ!」というのが、このプロジェクトの挑戦するところです。

グラレコ ③
グラレコ③詳細

例えば、西会津での課題は「稲作への投資」です。

米はエリアによって一括で価格が決まってしまうため、頑張って農法を工夫するなど、農家が個別に差別化を図ろうとしても、市場では価格差が反映されづらい。

また、西会津は山間部で稲作に取り組んでいる背景もあり、(平地のように)大規模化して利益を増やすことは簡単ではありません。今後、稲作で利益を増やすためには、農家の取り組みや中山間地域の水や土壌の良さを可視化し、その価値を価格に反映できる仕組みが必要だと考えていました。

〈事例紹介〉地方創生×ブロックチェーン福島県西会津町における”石高コイン”の仕組みの構築

米作りは自然相手で不確実性が高いので投資するにはそれなりの覚悟が必要です。山間部ではそれに加えて、水路の整備や草刈りなどの作業が必須であり生産インフラを維持するだけでもとても大変です。

こういった課題の解決のために、お米農家を支えるための新しい仕組みづくりに取り組みました。「農家とファンが支え合う」をデジタル上でいかに有機的に実現することができるか。これをクエストリーさんの力をお借りして形にしたのが今回のモバイルアプリです。

持続可能な未来の地域のあり方」を一つずつ形にしていくこと。一緒に楽しむ仲間と出会うこと。石高プロジェクトがその出発点としてプラットフォームの一つになっていけばという想いです。


続く(その弐)

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