国立大学法人法「改正」に反対する学生有志・声明
今期の臨時国会に提出された「国立大学法人法の一部を改正する法律案」は、以下で述べるようなさまざまな問題を孕んでいます。私たちは、大学構成員として、また、大学の研究・教育活動を通して育まれた学知を享受する一市民として、大学の自治のみならず学問の自由をも脅かす本法案を深く憂慮し、断固として抗議します。また、本法案の速やかな廃案を求めます。
本法案の骨子として、大学の中期的な目標・計画及び予算・決算に関する事項(運営方針事項)の決議・決定権のみならず、学長選考にも影響力を持つ「運営方針会議(合議体)」の設置が挙げられます。合議体の委員任命にあたっては事前に文部科学大臣の承認が必要とされていますが、これは後述の通り学問の自由を脅かし得ると私たちは考えています。また、本法案には他に、大学債の発行要件の緩和や大学が所有する土地の貸与手続きの簡略化が含まれます。これら経営合理化を謳った政策は、大学の資産が本来の目的に反して研究・教育活動に還元されないという本末転倒な事態を招き得るものです。野党や有識者からの批判にもかかわらず、衆議院文部科学委員会では11月17日、13項目の付帯決議を加えることで本法案が強行採決されました。しかし、審議時間はたった5時間ほどであり、議論が尽くされたとは到底言えません。
合議体の設置は、日本国憲法第23条に保障された「学問の自由」や「大学の自治」を脅かすものであると私たちは考えます。
合議体設置の対象となる「特定大学法人」は政令で指定されますが、実際の対象は依然として判然としません。委員任命の承認に加えて、合議体の設置対象も政令で恣意的に指定・変更され得るのです。盛山正仁文部科学大臣及び池田貴城高等教育局長は「任命は形式的なもの」と答弁で強調しましたが、菅義偉元首相が拒否した日本学術会議の会員任命も、本来は形式的なものであると中曽根康弘首相(当時)の答弁で約束されていたことを踏まえると、恣意的な運用の余地が残された本法案を認めることは断じてできません。また、短期的な経済的利益が小さいとされる「稼げない」分野の研究・教育活動や、構成員の福利厚生が切り捨てられることも危惧しています。
大学で行われる研究・教育活動は、知の創造や展開を通して社会の根幹に関わる重大な活動です。そして、国立大学は、特にさまざまな事情を抱えた学生の支援や、長期的な視座を持つ人文学や自然科学の基礎研究などを通して、社会がより公正に、より長期的に発展してゆくよう尽くしてきた知の拠点でもあります。目先の経済的利益のみに基づいて国立大学の自治、ひいては学術研究の自由を脅かす本法案は、国立大学の構成員のみならず、社会全体に不利益をもたらし得るものです。私たちは、本法案の廃案を要求します。
2023年11月25日
国立大学法人法「改正」に反対する学生有志
呼びかけ人 宮崎優毅
(東京大学文学部人文学科日本語日本文学専修課程3年)
ご賛同いただける方は、以下のリンクよりご賛同の署名をよろしくお願い申し上げます。
【個人の方】
https://forms.gle/ZNggdZpBuWVRSHJu5
【団体の方】
https://forms.gle/n3nsRM2k5Lh5Usky5
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?