見出し画像

「仲裁法の一部を改正する法」について(政治家女子48党 参議院浜田聡議員のお手伝い)



仲裁法と聞いてもどんな内容かピンときません。仲裁に似た言葉で「あっせん」「調停」がありますが、「仲裁」は第三者に裁判所の判決に代わる 「仲裁判断」を下してもらう制度らしいです。
また、サッカーでホームの試合の方がアウェイの試合よりも圧倒的に有利だと言われていますが、仲裁にもホームとアウェイがあるそうで国際的な仲裁などは何処でするかは重要だと誰にでもわかると思います。そして、国際調停と国際仲裁はともにADR(裁判以外の紛争解決)と呼ばれています。

ちかじか参議院での採決が予定されていますので、今回は改正の理由と改正ポイントを中心に調査いたします。

あっせん、調停、仲裁の主な相違点は

提出理由
経済取引の国際化の進展等の仲裁をめぐる諸情勢の変化に鑑み、仲裁廷が命ずる暫定保全措置についてその内容及び手続並びにその強制執行等の手続等を定める等の必要がある。

提出理由のポイント3つを分けて調査します。
①経済取引の国際化の進展等の仲裁をめぐる諸情勢の変化
②暫定保全措置の内容と手続
③強制執行等の手続等

 令和5年2月28日(火)法務大臣の記者会見では、「仲裁法の一部を改正する法律案」等の閣議決定について以下の様に発言しています。
『今朝の閣議において、「仲裁法の一部を改正する法律案」、「調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案」及び「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
 これらの法律案は、裁判外の紛争解決手続である仲裁及び調停につきまして、最新の国際水準に対応させるなど、その一体的な強化を図ろうとするものです。
 これにより、国内外の民事紛争について、裁判外紛争解決手続の利用が一層促進され、より実効的な紛争の解決が図られるものと考えております。』
 

①経済取引の国際化の進展等の仲裁をめぐる諸情勢の変化って、なあに?


こちらの法案は、法務省法制審議会の仲裁法制部会で令和2年10月23日第1回会議から第18回会議(令和4年2月4日開催)まで審議されました。

その法制審議会仲裁法制部会第1回会議では、平成18年に国際商事仲裁モデル法が一部改正されたが、その部分が日本国の仲裁法に整備されて無いので、国際仲裁の活性化の為に国際水準にあった規律に見なおしすると提言しています。

平成18年モデル法の一部改正内容は、
仲裁廷による暫定保全措置の定義(類型)、発令要件、承認・執行等に関する規律が設けられたとあります。

法制審議会仲裁法制部会第1回会議(令和2年10月23日開催※)



香港や韓国は、欧米諸国の慣習で行われがちな国際商取引で如何に制度を有利に使って国際社会に打って出ていくか、その姿勢が良く伝わります。日本の司法制度は国内の遅ればかりでなく国際社会の中でもそうとう遅れているのかも知れません。

諸外国等における仲裁法制等の比較表


2019年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で当時の安倍晋三首相が各国に対して提唱した「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」が、2023年4月に群馬県高崎市で開催される主要7カ国(G7)デジタル・技術相会合ではメインテーマの1つとなります。



日経新聞によると、2023年1月11日ワシントンの米戦略国際問題研究所(CSIS)で、河野デジタル相がワシントンで講演を行い「G7会合を機に制度協力と技術対応を加速することで合意し、その中核となる官民連携の国際枠組みの設立を提唱したい」と発言しています。

内閣官房の「国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議」第15回会合の配布資料「経済財政運営と改革の基本方針2022 」を見ると、国際情勢の変化として、
・DFFTの国際的なルール作りを日本開催のG7で成果を目指す
・WTO改革に取り組む
・TPP11の着実な実施、高いレベルを維持、米国再加入誘導
・RCEP協定の円滑な運用・履行に取り組む
・IPEFインド太平洋経済枠組みの連携
・日米2+2、EU・英国との経済連携強化
等などを強化して課題解決を図る
とあります。

経済財政運営と改革の基本方針2022

DFFTの動画


その為に、経済安全保障の観点にも留意しな がら、DXやGXの推進、スタートアップの育成とともに、より多くの海外の金融事業者を我が国に呼び込むた め国際金融センターの機能を強化し、国際仲裁の活性化を図る様です。
国際仲裁資格認定コースやYouTubeでの国際模擬仲裁・調停動画動画が見られます。


②暫定保全措置の内容と手続

 今国会提出の「仲裁法の改正に関する要綱案」(令和3年10月8日決定)の改正ポイントは以下の点です。

●仲裁手続の迅速化と柔軟化を図るために、仲裁人の選任手続や仲裁地の選定などに関する規定を見直す。

  • 仲裁手続の公正性と信頼性を確保するために、仲裁人の中立性や資格などに関する規定を強化する。

  • 仲裁手続の効力を高めるために、仲裁判断の執行や取消しに関する規定を整備する。

  • 仲裁手続と司法手続との連携を促進するために、暫定保全措置や証拠保全措置などに関する規定を導入する。


現行法の仲裁法24条には、「暫定措置又は保全措置」の定義があり、具体的内容や発令のための要件は仲裁廷の判断に委ねられていると同時に、仲裁における当事者の権利を保護するための効果的な手段となり得、将来的に変更になる可能性があります。


仲裁法の一部を改正する法律案は、他方の当事者に対して次の様に命じる事が出来ます。(AIより)一 
一 紛争の紛争の紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その状態を変更しないこと
二 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その処分をしないこと
三 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その管理をすること
四 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その使用をしないこと
五 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その使用を制限すること
六 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その使用を許可すること
七 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その所有権又は占有権を移転しないこと
八 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その所有権又は占有権を移転すること
九 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その所有権又は占有権を移転する場合における条件を定めること
十 紛争の対象について仲裁判断があるまでの間、その所有権又は占有権を移転した場合における効果を定めること


③強制執行等の手続等

一 仲裁廷が命ずる暫定保全措置は、仲裁廷の許可を得た場合に限り、国内仲裁判断と同様に強制執行することができる(第四十六条)
二 仲裁廷が命ずる暫定保全措置は、仲裁廷の許可を得た場合に限り、国内仲裁判断と同様に取消しの請求をすることができる(第四十七条)
三 仲裁廷が命ずる暫定保全措置は、仲裁廷の許可を得た場合に限り、国内仲裁判断と同様に異議の申立てをすることができる(第四十八条)
四 仲裁廷が命ずる暫定保全措置は、仲裁廷の許可を得た場合に限り、国内仲裁判断と同様に変更の請求をすることができる(第四十九条)

この改正で、ノウハウの蓄積をする事と経済取引の国際化の進展を考えれば以下の点が重要なものと思われます。
・前項の規定にかかわらず、仲裁地が日本国内にあるときは、この法律の規定により裁判所が行う手続に係る申立ては、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所にもすることができる事。
・仲裁手続における電子的手段の利用に関する規定を整備する事。



④そうなんだー!


法律事務所の古田 啓昌弁護士 の指摘がとても重要な記事がありました。
海外での仲裁と日本での仲裁
・合意した内容が強硬法違反で無効になる場合もあり、どのような場合に強行法規違反となるかは、各国の仲裁法の定め方次第であるという点。
・仲裁判断は裁判所の確定判決と同じ効力をもっているが、仲裁判断の前提となる仲裁合意が無効であるとか、仲裁人が実は中立性を欠いていたなどの重大な問題があるときは、裁判所に仲裁判断の取消を求めることができる点。
・仲裁地を日本国内にしておくことで、必要な情報や海外での宿泊費用など気にする事も無いので、長期になっても安心である。
・紛争が生じてから仲裁地を検討するのではなく、これから取引を行う段階で、取引契約書の仲裁条項に「仲裁地は日本国(都市名)とする」との一文を入れておくことが重要である点。

また、日本の仲裁機関と海外の仲裁機関の記事の中では、 日本企業が外国企業と契約交渉をする際、JCAAの機関仲裁を提案しても、日本の仲裁機関であることを理由に相手方から難色を示されることもある。そのような場合には、中立的な第三国に本拠地を置く仲裁機関(例えば国際商業会議所の国際仲裁裁判所[ICC]やシンガポール国際仲裁センター[SIAC]など)を選択した上で、仲裁地は東京や大阪を指定することも考えられる(連載第3回で触れたとおり、日本企業の実務的負担は、ホームの仲裁とアウェイの仲裁とで相当違う)。審問期日等を実施するための物理的施設については、日本国際紛争解決センターが大阪(2018年開業)と東京(2020年開業)に開設した施設を利用することが可能である。

 

日本弁護士連合会では、
2021年4月15日意見募集に対して仲裁法の改正の意見書を法務省に提出されています。
仲裁法等の改正に関する中間試案に対する意見書

JETROのサイトには、
クレームなどの紛争解決のための仲裁という記事があり、「訴訟の場合、外国の裁判判決の執行に関しニューヨーク条約のような多数の国が締約国となっている条約はありません。国内法によることになりますが、国によっては、たとえば、中国のように日本の裁判判決の執行ができない国があります。」という指摘もありました。
また、仲裁の利点もかいてあります。

日本の仲裁機関としては、JCAAがあります。

日本司法書士会連合会のサイトには、
以下のような意見も見られました。

衆議院では、4月6日、全会一致で可決しています。

第211回国会 衆議院 法務委員会 第4号 令和5年3月29日
齋藤(健)国務大臣
仲裁法の一部を改正する法律案その趣旨説明
この法律案は、裁判外の紛争解決手続である仲裁について、最新の国際水準に対応する形で強化を図り、その利用を一層促進するため
要点
第一に、仲裁廷が行う仲裁手続について、国際連合国際商取引法委員会が策定した国際商事仲裁モデル法の改正に対応するため、仲裁判断があるまでの間、仲裁廷が発する暫定保全措置命令について、その類型及び発令要件等に関する規定を整備するとともに、裁判所の執行等認可決定を得ることにより、暫定保全措置命令に基づく民事執行を可能とするなど、最新の国際水準に見合った法制を整備することとしております。
第二に、仲裁手続に関して裁判所が行う手続について、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所にも管轄を拡大するとともに、仲裁判断の執行決定を求める申立てに係る事件等の手続において、裁判所が相当と認めるときは、仲裁判断書等について、日本語による翻訳文の提出を省略することができることとしております。


2023年4月9日(日) 赤旗新聞に記事がありました。
仲裁制度 より公正に/本村氏、検証・研究迫る/衆院法務委


この法案が出来る事で、これまで日本の企業秘密が流出した事件が多数あり、多少は流出が避けられるでしょうし原因も解るようになるかも知れません。それは日本の経済安全保障だけでなく、国防にも影響してくると思われます。
更に、オンライン仲裁が出来る事で大阪と東京の仲裁機関にノウハウが蓄積され、より専門性が高くなると思います。

最後に、質問が1点あります。
オンライン仲裁では、仲裁国は何処になるのでしょうか?



※参議院で近日採決予定ですので、急ぎ内容のみ調査します。
後日、追加で調査した内容を加筆いたします。

以上です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?