②GX推進法は何故出来たか?(GX脱炭素電源法について)


 GX脱炭素電源法は、2025年6月6日に施行される法律です。正式名称は「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」で、2023年6月1日に国会で成立しました。
 GX脱炭素電源法は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて脱炭素電源の利用促進と電力の安定供給の確保を図るための制度整備を目的とした法案です。化石燃料の使用を最小限に抑え、クリーンなエネルギーを活用するための取り組みや実現に向けた活動である「グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)」を実現するための関連法の整備として電気事業法と再エネ特措法などを改正し、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの導入拡大策や電力供給量向上などにつながる原子力発電の活用に関する内容が含まれています。



脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(以下:GX脱炭素電源法)」

法律案の趣旨
ロシアのウクライナ侵略に起因する国際エネルギー市場の混乱や国内における電力需給ひっ迫等への対応に加え、 グリーン・トランスフォーメーション(GX)が求められる中、脱炭素電源の利用促進を図りつつ、電気の安定供給を確保するための制度整備が必要です。
 このため閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づき、(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進、(2)安全確保を大前提とした原子力の活用に向けて、関連する法律(※)を改正します。
※電気事業法、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)、原子力基本法、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉規法)、
原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律(再処理法)

経産省HP 


GX実現に向けた基本方針の概要

法律案の概要
(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進

①再エネ導入に資する系統整備のための環境整備(電気事業法・再エネ特措法)
安定供給確保の観点から特に重要な送電線の整備計画を経済産業大臣が認定し、認定を受けた整備計画のうち、再エネの利用の促進に資するものについては、工事に着手した段階から系統交付金を交付します。併せて、認定を受けた整備計画に係る送電線の整備に向けて、事業者が電力広域的運営推進機関から貸付けを受けることを可能とします。

②既存再エネの最大限の活用のための追加投資促進(再エネ特措法)
太陽光発電設備に係る早期の追加投資(更新・増設)を促すため、地域共生や円滑な廃棄を前提に、追加投資部分に、既設部分と区別した新たな買取価格を適用する制度を新設します。

③地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化(再エネ特措法)
関係法令等の違反事業者に対して、交付金による支援額の積立てを命ずる措置を創設し、違反が解消されない場合は支援額の返還命令を行うこととします。また、再生可能エネルギー発電事業計画の認定要件に、事業内容を周辺地域に対して事前周知することを追加するとともに、委託先事業者に対する監督義務を課すなど、事業規律を強化します。

(2)安全確保を大前提とした原子力の活用・廃炉の推進
①原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)
安全を最優先とすることなどの原子力利用の基本原則や、バックエンドのプロセス加速化、自主的安全性向上等の国・事業者の責務を明確化します。

②高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(炉規法)
原子力事業者に対して、運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内毎に、設備の劣化に関する技術的な評価を行い、その劣化を管理するための計画を定め、原子力規制委員会の認可を受けることを義務付けます。

③原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)
原子力発電の運転期間は40年とした上で、安定供給確保、GXへの貢献などの観点から経済産業大臣の認可を受けた場合に限り、運転期間の延長を認めることとします。その際、「運転期間は最長で60年に制限する」という現行の枠組みは維持した上で、原子力事業者が予見し難い事由による停止期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外することといたします。

④円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理法)
今後の廃炉の本格化に対応するため、使用済燃料再処理機構の業務に、全国の廃炉の総合的調整などの業務を追加し、同機構の名称を使用済燃料再処理・廃炉推進機構とします。また、原子力事業者に対して、同機構に廃炉拠出金を納付することを義務付けます。


 この法案で注目する点は、法改正によって「60年を超えて原発の稼働が可能になる」ことです。原発の稼働期間についてはこれまで、東京電力福島第1原発事故後に導入した「原則40年、最長60年」というルールに沿って運用されてきました。今後もそのルールは維持するとしつつも、運転延長を経済産業相が認可すれば60年超の稼働が可能になります。つまり世界が原発の利用に変わったという事でもあると思います。
 しかしながら相変わらず日本の補助金政策が様々な所に見えていますが、一方で原発タブーであった日本がエコをうまく利用して原発再稼働に舵を切り、エネルギーと産業の革命にはめ込んだ戦略が個人的には凄いと思っています。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?