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SDGsに意味はない(2)おじさんたちだけが頑張る構図

 それではSDGsを熱心に進めている人たちは、どのような人たちでしょうか?世間では、ミレニアル世代や、Z世代と言われている若い年齢層の関心が高いと言われていますが本当にそうでしょうか?

 私は大学で30年間教えてきて,常に20歳前後の若者を見てきましたが,この30年で,若者の環境や社会に対する意識が高まっていると感じたことは一度もありません。下がっているとも思いませんが,彼らは基本的に自分の目の前にないものには,あまり関心を示しません。

 下の図は,日本総研の若者意識調査ですが,「環境問題や社会問題に対する関心」は,歴史に対する関心に次いで下から2番目です。

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 では,誰がSDGsに関心が高いのかというと,大臣や知事も含む政府や行政のトップ層や企業の経営層,つまり,あまりよい言葉ではありませんが,今風に言うと「上級国民」のおじさん層です。おばさんもいますが,この世界はおじさんが圧倒的に多いのでこう書きます。 

 下の図は,「SDGsの社内認知度」についての,企業へのアンケートですが,「経営陣に定着している」が85%なのに,「従業員にも定着している」が37.5%しかなく,圧倒的に,企業の上層部だけで関心が高まっていることが分かります。

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 私は,昔から企業で環境経営に関して講演をやってきましたが,10年くらい前までは,「社会や環境問題が重要なのに,経営層が真剣になってくれない,一度社長や役員に環境経営について話してほしい」と言われ,取締役相手に講演したことも何度もあります。

 しかし,今は,社長を含む役員層から,「わが社の社員の環境や社会に対する意識が低いので,どうしたらSDGsなどに関心を持つようになるか」というように変わってきました。これはいったいなぜでしょうか?

 それは,経営層にはSDGsに取り組むメリットが実感できるのに,従業員層には取り組むメリットが良くわからないからです。経営者層のSDGsへの認知度が高いのは,一つには,SDGsに取り組むと,企業のESG評価が高まって,経営者の能力も評価される仕組みがあるからです。取締役報酬にESG評価を取り入れる企業も増えています。

 一方,従業員の関心が低いのは,社内でSDGsに関する活動をしても評価されず,報酬にも反映されないからです。これでは関心が広まらないのは当たり前ですよね。しかし,従業員層が関心がないのに,トップだけが評価されることがもしあるとすれば,そんなSDGs活動に実態はあるでしょうか。もしかしたら,報告書の中だけの幻想かもしれません。

 また,私たちの研究室では,NPOのSDGsへの関心も調査したことがありますが,SDGsを看板に掲げていない老舗のNPOは,国内,国外ともに,SDGsにほとんど関心がありませんでした。なぜなら,彼らはSDGsができる前から,貧困や人権や環境に関する活動をやってきているので,それはSDGsができても,特に変わることがないからです。

 つまり,本当にSDGsに関連する活動を行っている人はSDGsに関心が高くなく,実際に現場に出てSDGs活動を推進するには程遠い立場にいる社会の上層階層(この言葉も良くないですね)の関心だけが高いという構図が見えてきます。

 大学でも,学生の関心よりも教員の関心が高く,教員の関心よりも役員層の関心が高いようにも見えます。それはSDGsと書けば,予算が通りやすくなることと関係しています。これは自治体も全く同じ構図です。したがって,そのような予算が欲しいNPOはSDGsに熱心です。しかし,このような予算目当てでSDGsという人たちが,SDGsの意味が分かっていないことは明らかです

 したがって,SDGsは世間で言われるほどには,実際には浸透しておらず,幻想とお金に踊らされている面がとても大きいです。しかし,これに精神を入れないと,効果がないばかりでなく,中身のない活動で満足することになって,本当にSDGsが「現代のアヘン」になってしまいます。

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