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【深夜のダメ恋図鑑】よみがえる黒歴史と殺意…

恥の多い生涯を送ってきました…

私は失恋を引きずらないタイプで、別れたらハイ次ハイ次~!それにしてもあの男どっかで☆んでてくれねえかな~!みたいな恋愛遍歴を重ねてきました。そんな人間なので、『深夜のダメ恋図鑑』もまるで人ごととは思えませんでした。

物語のテンプレートは、深夜のトーク番組に近いです。タイプの違う3人の女性が、コタツを囲んで「ダメな恋」について喋りたおすのをユル~く聞いてるだけなので、読んでいて全く疲れません。忙しい人にちょうどいいです。

やっぱり猫が好き』とか『はやく起きた朝は』みたいな、「女三人寄ればかしましい」空間を楽しむもの。よくしゃべる仲の良い女の子が3人いれば、もうそれだけで面白いんですよね。

深夜トーク番組といえば、最近はマツコ・デラックスのイメージが強いかもしれませんが、あの人は「名誉男性」寄りなのでちょっと息苦しいんですよね。
『ダメ恋』の部屋は、もっと自由。女であることを求められないところで、女としての個をそのまま出せる場所です。きっと、女子校ってこういうふうに居心地が良いんだろうなあ。

こいつ知ってる~~!

3人のなかで「よう、私!」と言いたくなったのは、佐和子ちゃんでした。
仕事は裏切らないけど人間は裏切るって知ってて、でも恋愛は必要で、特段派手じゃないけどなんとなく彼氏は途切れない。
こんなタイプでしたね、私。そして出てくる男衆にもエピソードにも、いちいち既視感があってもうダメ。

間取りの都合上、ムードが虚無

「ついに私、やっちゃうのかな!?」とドキドキしながらシャワーを浴びたら、リビングで彼がせっせと布団を敷いていてドン引きした千代ちゃん。

わかる~!わかるよ~!でもしょうがねえだろ~!一人暮らしでベッドルーム完備するわけにもいかないだろ~!最初から準備万端に整っててもそれはそれで引くんだろ~~!

布団の生活感をなんとかしたい若者のためのロフト付き物件なんかも人気ですが、アレはアレでいざっていうときにせっせと梯子登るのが痛ましいんですよね。

目があった女は俺に気がある

円ちゃんの出会った「つきあってる妄想男」いたいた~!こういう男いたわ!!

私の場合、同僚のよしみで愛想良く朝や帰りの挨拶をしていたら、最初のころは「アッ…ッハイ…」みたいだったのが、次第に「うん」とか言い出して、しまいには目礼だけで返事するようになったんですよね。
何あいつ礼儀とか知らないの(知らなそうだけど)?なんて思ってたら、周囲に「最近家庭を持つことについて考えはじめた、自分に気のあるっぽい女の子がいて…」などと話しているという噂を聞きました。

周囲の人には「アイツちょっとおかしいから、災難だったね…」と慰められましたが、いや~マジで気持ち悪かったですね~!その時普通に彼氏いたしね!!!

別れた後のポエム

1巻で一番笑ったのが、佐和子が一時期つきあってたバンドマン!いや~!いたな~~!!別れたあとに長文ポエムメール送ってくる男!

あのポエム、ネットでは通称「ロミオメール」と呼ばれています。別れた後、美しい思い出が一方的に醸造されて完成する非常に気持ちの悪い一品。
それを読んだ相手がどう思うかなんて考えてもいない、自分の夢しか見えてないポエムたち。なぜ人はあんなものをかつての恋人に送りつけるのでしょう。

私が受け取ったロミオメールには、たしか「いつか笑ってコーヒーでも飲める関係になれればいいね」とかって書いてありました。

いえいえ~!良くないです~!私はそういう距離感望んでませんから~!あと君を想いながら聴いた○○○(曲名)とか言われても!知らね~~~し!ヤッダー超どうでもいい事思い出しちゃったよ!

ガールズトーク楽しかったな-!

三者三様の恋愛模様が愉快で、「なんで別れないわけ?」とか「あのときそう言えていれば痛快だっただろうなあ…」とか。思い出し笑いと思い出し怒りと、あと少し「楽しかったかもな」っていう感情が胸を暖かくします。10年ちょっと前、私にも似たようなことを語り合う友人がいました。

なんか、「人生の途中で偶然重なった道を一緒に歩いている途中の友人たち」って感じが、すごく良い。
女の友情って、外野が期待するほどマウント取り合ったりしないんですよね。女が生きる時の選択の多さを知ってるから。選んだ先の姿を尊重しあえるから。だから心地いいし、時が来れば自然に疎遠になる、それで良いんです。

きっと、いずれこの3人も自然と道が離れていきます。それでもこの時期にダラダラしゃべって楽しかった記憶って、長く自分を支えてくれたりするものです。

愚痴ばっかりなのに読んでて気持ちが良い。不思議な読書体験ができました。


投稿日 2018.10.11
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です

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