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【はたらく細胞】「漫画で分かる」界の黒船

脱帽の巧さ

子供向けの「マンガでお勉強」本は昔から存在する。
昔はイマイチ上手くない、売れてなさそーな絵柄で、子供心にマンガ界のヒエラルキーを感じながら、お勉強の真似事をしていたものだ。
ちなみに私は志が低く、頭の悪い子供だったので、文字の多いところはバッチリ読み飛ばしていた。もちろん成績はまったく上がらなかった。

本書はあの、かつての「参考書にちょっとマンガとかイラストとか挟んだだけ」のお勉強漫画本とはまるで格が違う。
どちらかというと、青年誌の医療漫画に代表される、本格派職業モノめいたストイックささえ感じる。
とにかく絵が上手く、説明のほぼ全てが絵の中に表現されきっているのだ。
こんなの作られたら、画力の神様に愛されなかった漫画家はどうやって生きていけばいいんだろう…

ちゃんと合ってる、だいぶ似てる

物語の中核を担うのは、誰でも知ってる「赤血球」と「白血球(好中球)」。その他にも、血小板やリンパ球など、義務教育を受けた人ならだいたい分かる名前のキャラクターたちが活躍する。
体内細胞たちも、体内に進入した外敵(細菌、ウイルスなど)たちも、ビジュアルが「だいぶ似てる」のがとても良い。血小板がちびっ子なのがあざと可愛いし、マクロファージをフリフリファッションにしたのは本当にすごい。
そして、各細胞たちの関係性や働き、巨大な建造物に模された身体の内部が「ちゃんと合ってる」し、「ちゃんと解る」のだ。
ダテに医師が監修していない。
そして作者氏のイマジネーションと表現力、画力も半端ない。

遊びと勉強の境界が消えていく

「マンガばっかり読んでないで文字の本を読みなさい!」
かつてのちびっ子はそう言われて文字ばっかりの本が嫌いになり、勉強は嫌なもの、遊びの邪魔をするもの、と認識していった。

偉そうにしてる大人の推薦する図書は、子供心にぶっちゃけてつまらなかった。大人になってから読んだらマジでつまんない本もあった。
読書を苦行にさせたがるあの頃の偉い人たちは、きっと自分自身が読書を嫌っていたのだろう。
苦行に耐えることに価値を感じていたのだろう。

つまんないは悪いことだ。
面白いは良いことだ。

この漫画は、面白い。
面白くて、勉強になって、印象に残る。

控えめに言っても、大正義だ。


投稿日 2016.09.27
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です

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