気を使わないという気使い

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◎気を使わないという気使い


あなたのそばで、5歳のC君がお菓子を食べていました。
C君はあなたに気を使い、そのお菓子を持って来てくれました。


C君は、お菓子をあげると相手が笑顔になることと、お礼を言ってもらえることが嬉しいんです。


舐めまわした手で持ったベタベタの状態のお菓子でしたが、あなたはC君に気を使い、「ありがとう!C君は優しいね」と受け取りました。
そして見えないところでそのお菓子を捨てました。
あなたはC君の気使いを無駄にしないための気を使い、そしてお菓子はひとつ無駄になりました。


あなたに対するC君の気使いは、たしかに嬉しかったかもしれませんが、あなたが求めていたことは、お菓子ではなく、C君がただその場で楽しくお菓子を食べることでした。
あなたは、C君の気使いを無駄にしないために気を使うことになったわけですが、あなたが本当に欲しかったものは、「気を使わないという気使い」だったんです。


C君の「子どもの思考による気使い」は、あなたの「大人の思考による気使い」によって成立しているわけですから、C君の気使いは、本質的な気使いではありません。
大人側の気使いによって、「気使い」として成り立っているだけなんです。


これは、純粋な子どもが相手だから「温かい話」で終わります。
しかし、大人の世界だと単純な話ではありません。


たとえば、知らない人同士の食卓で、

あれ食べますか?

これ飲みますか?

次にこれいかがですか?

お水持ってきましょうか?

ティッシュいりますか?


など、あなたは全力で気配りをしたとします。
しかし、食べるタイミングや飲むタイミング、食べ物の好き嫌いは人によって違いますから、あなたの気使いは、ほとんど「余計なお世話」になり、周囲は、あなたの気使いを無駄にしないために気を使うことになります。
そうなると、中には「お願いだからほっといてよ」と思う人が出てきます。
全力で気を使うことが大人のマナーだと勘違いしていると、かえって相手に気を使わせてしまうことになるわけです。


あなたの「子どもの思考による気使い」は、周囲の「大人の思考による気使い」によって成立しているわけですから、あなたの気使いは、本質的な気使いではありません。
周囲の気使いによって、「気使い」として成り立っているだけなんです。


本当に上手な気使いができるのが、「大人の思考の人・知恵のある人」です。
そして、本当に上手な気使いとは、相手の立場を尊重したものです。
「親分の周りでそわそわと動く子分」のような気使いをしている人は、知恵がなく落ち着きのない、軽い存在に見られてしまいます。
みなさんも、そわそわと気を使う男性に魅力を感じませんよね?
むしろ「もっと堂々としててよね」と思うんじゃないでしょうか。


これまでに400人ほどの女性と日常生活を共にしてきた経験上、食事の席でそわそわと気を使い過ぎる女性は、少数ですが一定数います。
話を聞くと、いつも夫婦ゲンカしている親を見ていたり、親から抑圧されたりした幼少期を送ってきた人ばかりです。
「気使い」の動機が、「親から叱られたくないという恐怖」や、親の機嫌をとることによる「叱られない安心」になっているわけです。
叱られないためになにをすればいいか考え、いつも気を使ってそわそわしているんです。


大人の世界では、「気を使わないという気使い」が大切な時もあります。
10の小さな気使いをすれば、ひとつやふたつは相手のためになるかもしれませんが、他の9や8の気使いは、むしろ相手に気を使わせる結果になっています。
これではせっかく気を使っても、相手の役に立つことができず、「あいつウザイ」と、結果的に自分の価値を下げてしまいます。


そして、下がった価値を上げようとして、さらに気を使えば、悪循環に陥ります。
たとえ普段は「気がつかない人ね」と批判されないか不安になっても、その不安を乗り越え、気を使わない方が愛である場合があるんです。


それが、

「気を使わないという気使い」

です。



◎会心の気使いを


そわそわと頻繁な気使いをするよりも、細かいことはせず、周囲をよく観察し、相手の要求に的確に応える「会心の気使い」ができれば周囲は喜びます。


「会心の気使い」ができる人は、普段何もしていないように見えても、決して「気が利かない人・冷たい人」と言われることはなく、「肝心な時にやるべきことができる大人」と高く評価されます。



◎まとめ


「気使い」というのは、人の役に立つかどうかがポイントですが、世の中には、自覚のあるなしに関わらず、叱られたくない恐怖や、褒められたい一心で、そわそわと気を使う人がいます。
しかしそれらは、自分中心の気使いのため、むしろその気使いを無駄にしないための気使いを、周囲の大人たちにさせてしまう場合があります。
気使いは、相手の立場になることが大切です。

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