料理教室の本質

(読了目安13分)

料理教室に通っても料理を好きになれず、中途半端なままで終わってしまうことがあります。
その理由はきっと、料理の楽しさを知ることができなかったからです。


マスターは、結婚してから約20年、料理を担当しています。
料理教室に通ったことはありませんが、毎日料理を楽しんでいます。
マスターが料理を楽しめる理由は、いったいどこにあるんでしょうか。


今回は、写真もたくさん用意しました。
では「料理教室の本質」、いってみましょう。




◎「楽しい」が基本


さて、料理教室に通った経験がある人の中には、その後、料理が続かなくなってしまった人もいるはずです。


「教室に行ったときには楽しめるけど、家で一人だと、なんだかやる気がなくなるのよねえ」


という感じです。


いくらレシピを知っていても、いくら道具が揃っていても、いくら時間があっても、それ以前に、「やる気」が出ないとやれません。
ですから、料理にとって大切なことは、まず「やる気」です。


では、「やる気」というのはどうやって出しましょうか・・・


「彼氏ができればやる気になるのになあ」


なんて思うかもしれません。
しかし世の中には、彼氏がいても料理をしたがらない人もいますし、中には一切作らないという女性もいます。
そんな女性は、結局は「料理がめんどくさい」「なんだか苦手」ということですが、その根本は、「楽しくないから」です。

人は、楽しいなら自らすすんでやるはずです。

お気に入りのテレビ番組なら毎回楽しく見ますし、彼とのデートなら、仕事を休んだって行くわけですからね。
デートと同じ気分が毎日続くなら、きっと料理だって毎日楽しめるんです。


ということで、料理は、「楽しい」ということがポイントです。
ですから、料理教室でまず教えるべきことは・・・


「料理の楽しさ」です。



料理の楽しささえ理解すれば、すすんで料理をするようになり、すすんで料理をすればどんどん上達し、さらに料理が楽しくなります。


「だけどマスター、そもそも料理を楽しいと思っている人がさらに腕を上げるために料理教室に行くんじゃないの?だから料理の楽しさをいまさら教える必要なんてないでしょ?」

こんなふうに思うかもしれませんが、実際はそうでもないんです。

「この歳になったら料理ぐらいできないと」

「親から教わるとケンカになるから」

「とりあえず趣味としてやってみよう」

「新しい出会いがあるかもしれないし」


などと考えている女性が大半で、「好きでしかたない」という女性は、実は少数派かもしれません。


また、料理教室の最中は楽しく料理ができても、自宅のキッチンに立つとテンションが上がらない女性も少なくありません。
女子会のような雰囲気でにぎやかな料理教室ほど、自宅に帰ると現実とのギャップが広がり

「一人じゃ寂しい」

「おしゃべりしながらじゃないと気持ちが上がらない」


などと感じる人もいます。
しかし実際、一人暮らしの女性や主婦は、一人で食事を作る状況の方が圧倒的に多いんです。


そんな中、女子会のように楽しく料理をするにはどうすればいいのか・・・


以下に続きます。


◎包丁を使って食材とおしゃべり


自宅のキッチンで一人で料理をするのは寂しいですが、もし、食材とワイワイおしゃべりができたら、料理を楽しめるような気がしませんか?
食材たちとおしゃべりしながら、女子会みたいに料理をするんです。


食材と会話ができれば、料理は楽しくなります。


ということで、「料理教室」の先生が教えるべきことは、「食材と会話する方法」です。


では、料理と言って真っ先に浮かぶ道具はなんでしょうか。


料理に使う道具と言えば・・・


そうです、「包丁」です。


食材と会話をする道具として包丁を使えるようになれば、料理は楽しくなり、一人のキッチンでも寂しくなくなります。


大げさに言えば、

「包丁の使い方を覚えてしまえば食材と話せるようになり、あとは食材とおしゃべりをしながら料理が楽しくなっていくと、料理が楽しいから続けられ、続けるほど食材の言葉がわかるようになる」


こんな好循環になるということです。


たとえば「英語の勉強をしたい」と思うのは、外国人と意思疎通ができると楽しいからです。
料理も同じで、食材と意思疎通ができるようになるほど、料理が楽しくなっていきます。
また、食材からの声には日本語や英語という「言語」はなく、すべて「感覚」でおしゃべりができます。
食材は人間と違ってウソをつきませんから、食材と向き合えば、ウソのない本質的な会話が楽しめます。

※あとで紹介する写真で「食材の声」を日本語に訳してみます



ただ、包丁は食材とのコミュニケーションツールであるのと同時に、一歩間違えれば人を傷つける凶器にもなりますから、包丁の安全な使い方を徹底して覚えてしまうことが、料理の第一歩になります。


マスターはこれまでに大手料理教室に通ったことがある女性や、料理教室の先生、そしてプロの料理人など、料理に関わる多くの人と会ってきましたが、包丁の使い方を知らない人って、実は意外と多いんです。


たとえば、調理師でも「両刃・片刃」の違いや、包丁の刃渡りの意味、刃のカーブの意味などを知らない人がいます。
マスターだってなんでも知っているわけではないんですが、マスター以上に知らない人がけっこう多いんです。
刃物を効率よく使わないと、同じ仕事をするにも不必要な時間がかかったり、余計な力が必要になってしまったりします。
そうすると食材も傷みますし、長時間切り続けると疲れてしまいます。
ですから、食材とのコミュニケーションツールである包丁の使い方を身につけることは、料理の第一歩として、とても大切なことになるわけです。


「料理の第一歩として、包丁の使い方はとても大切」


ということです。

しかし、上に書いたように、ちまたの「料理教室」では、「包丁の使い方」は、ほとんど教えてくれません。
「食材と会話できる人はプロの料理人になってしまい、料理教室の先生にはならない」という面や、調理器具を売るための「窓口」と化しているものもあります。
また、生徒も先生も、本質より目先の快楽を追う人が多いからです。


具体的には、

「OLがイヤだから」

「料理ができれば男性にモテるから」

「稼ぐために仕方なく」


などと考える人たちが料理の先生をやっていることもあるからです。


ですから、料理教室に集まるのは、生徒も先生も、料理に愛をこめようとしている人だけではく、

「人生に迷う人」

「人生に疲れた人 」

「なによりお金が欲しい人」


ということもあるわけです。


料理教室に通っても料理を好きになれず、中途半端なままで終わってしまう女性が後を絶たないのは、そんな世界で料理を勉強しているからかもしれません。
料理を楽しく続けるには、商業抜きで料理と本気で向き合い、食材と会話をすることが大切なんです。


話がそれますが、これは人間関係でも同じことが言えます。
良好な人間関係を作るには、自己啓発セミナーなどの商業的な自分磨きでは不可能です。
その場ではいい気分になれても、その気持ちが長く続かないんです。
「一瞬で幸せになる方法はあっても、一瞬で元に戻る」という話と似たようなものです。
長く愛されたいなら、商業抜きで、自分と本気で向き合う必要があるんです。


ということで、商業ベースの料理教室に通っても、包丁を使って食材とおしゃべりできる先生は少なく、料理を楽しむための基礎的なことを学ぶのは困難です。


以下に続きます。


◎パンシェルジュ


以前、パン職人を父親に持つ若い女性が「パンシェルジュ」という資格(検定?)を取ろうと父親に相談した時、「なんだそれ?そんなの取ってどうするの?」と言われたんだそうです。


マスターも父親の言葉には共感する部分があるんです。
つまり、その資格を取ったとして、その資格を持っていることに興味を示して集まるお客様というのは、その看板に魅力を感じるお客様です。


「私はパンシェルジュ1級を持っている!」と、他人からもらった資格を自分の店の看板に掲げなければならない店主、そしてその看板を「おお!すごい!」と尊敬し、近づいてくるお客様・・・みなさんはどう思いますか?


マスターはその女性に、「自分という看板で生きていけるといいね」と助言をしました。
悪く言うつもりはありませんが、その「パンシェルジュ」という資格を発行している会社は、いつ倒産するか、いつ不正をするかわかりませんよね。
他人が作った看板に頼っていると、「あの倒産した会社の資格ね」なんて言われかねないわけです。


これは料理教室にも同じことが言えます。
たとえば有名な料理教室の最終コースまで通い、50万円で料理の先生になる資格を取ったとしても、その看板に頼らないと生きていけないんじゃ、自分がオリジナルブランドではないわけです。
いくら経営が順調に見える料理教室でも、経営破たんや不正で摘発されることもあります。
また、女子会のような集まりをやっただけでもらえる資格や検定などは、プロから見れば、尊敬の対象どころか、嘲笑の対象になってしまうんです。



◎料理教室の本質



一昔前の料理教室は、先生がレシピを再現するだけで成り立っていましたが、現在、レシピの再現だけなら「スマホ&クックパッド」でほとんどなんでもでき、料理教室の存在意義が薄れてきました。
動画で調理を説明してくれるものもあり、ヘタな料理教室より優れている場合もあります。


しかしなんと言っても、料理は楽しくないと続きません。
ですから今の時代、レシピではなく、料理の楽しさを教えることが、料理教室に求められていることと言えます。


繰り返しますが、ちまたの料理教室のほとんどは「商業」がベースになっています。
女子会のような料理教室や、調理器具を売るための店になっていることも多く、それでは「食材と会話する」という、料理の楽しさを伝えることはできません。
料理教室では料理をしても、一人になって料理をしないなら、「料理をするのは料理教室に行ったときだけ」になり、本末転倒です。


今後、料理教室や調理師専門学校に行こうか迷っている人は、「なぜ行くのか・自分はなにをしたいのか」など、もう一度考えてみてください。
特に調理師専門学校については、1年で150万円ほどかかります。
マスターはある有名な調理師専門学校の卒業生が、ほとんどなにもできなくて、驚いたことがあります。
調理師免許は、就職には少し有利かもしれませんが、もし将来自分の店を持ちたいだけなら無用ですから、そのコストを他のことに使うのも、「知恵・愛」と言えます。



◎おまけ:食材の声いろいろ (日本語訳)



食材と会話ができれば、一人で立つキッチンでも楽しく料理ができ、結果的に長く続けることができます。


以下、料理中に伝わってくる「食材の声」を、日本語に訳してみます。
もちろん「マスターはこう言っているように感じる」という「主観」です。
料理を教わるなら、このぐらいの会話ができる先生に教わってください。
マスターが関わる食材から数種類紹介します。


★トマト 3種類の切り方です

奥から順に
「イテテ・・・助けてくれ」
「もうちょっと優しく切ってよ・・・」
「うーん気持ちいい~」
もちろん一番手前が「愛」です




先端が崩れない切り方が愛です。
「なんだか気が引き締まるよね」
「爽やかな感じだね」
「早く食べてもらいたいよね」 






★グレープフルーツ (手でむきます)

「マスター、むかれても全然痛くないっすよ、なんかこう、嬉しくなってきますよね」





「一番端まで丁寧にむいてくれてありがとう!」






★ニンジン (前回も使った写真です)

「こんなに軽い気分は初めてで~す」





「まさかこの針の穴に?」





「うわー!生まれて初めて針の穴の中を通りましたよ! 不思議な感覚です~」





★大根

「薄切りにされて気持ちよかったです」
「これから千切りになるのが楽しみー!」
(マスターが切ったのが手前、奥が生徒さんのです)




「あれ?私たちって切れてるの? 」
(マスターが切ったのが左側、右が生徒さんのです)





★ニンニク (前々回の写真です)

「キレイに脱がしてくれてありがとう」
「マスターったらお上手ね 」





★おにぎり (手で握ります)

「みんなで整列すると気分がいいね」
「焼きおにぎりになりたいなあ」
「私は誰に食べられても嬉しいわ」




★玉子 (黄身が真ん中になるように切ります)

「これなら見られても恥ずかしくないです」
「マスター、気持ちいいです!」





このように、料理中は食材との間に多くの会話があり、その会話を楽しむことが、「料理を楽しむ」ということです。


料理を楽しめるかどうかに、レパートリーの多さは無関係です。
マスターのレパートリーは、結婚してからほとんど変わっていませんが、毎日同じものを作っていても、飽きることなく料理を楽しんでいます。
発展途上国なんか、一生カレーだけ食べる国もありますしね。
こだわるなら、「楽しく作れるかどうか」、ここにこだわるのが大人の思考です。


毎日メニューを変えないと満足できない人というのは、「貧しい心を豊かな食生活で補う」という考え方です。
どこか精神的に偏りがあり、ストレスをかかえている人です。


逆に、毎日同じおにぎりを、「おいしいね」と言いながら食べられれば、「豊かな心」と言えます。
これは、「豊かな心で質素な食生活を補う」という考え方で、この考え方が、大人の思考です。



◎最後に


みなさんは、料理人が楽しく作った食事と、イヤイヤ作った食事では、前者を食べたいですよね?
マスターもそうなんです。
たとえ有名ホテルの料理長が作ったとしても、その料理長が、


「客には味なんかわからねえから、車エビじゃなくてブラックタイガーでいいだろ」

「オレはこの後、愛人とのデートがあるから早く食べて帰ってくれ」


なんて考えているとしたら、好きな人が楽しく作ってくれたおにぎりを食べたいです。
料理とは、まず料理をする側が楽しみ、食べる人がもう一度楽しむ・・・こんな「楽しみの連鎖」なんです。


マスターにとっての「キッチン」は、簡単な物理や化学の実験室のようなものです。
食材と会話をしながらいろいろな実験を繰り返し、料理を楽しみながら、毎日データを集めていきます。
そして、そこで得たデータや技術を娘やスタッフに伝える作業も、マスターにとってはとても楽しい時間です。
たとえば、マスターが15年かけて得た答えを、1日で伝えることができれば、娘やスタッフは節約した時間を使ってさらに愛をそそげますから、こんなに嬉しいことはありません。
料理教室は、「楽しみの連鎖」を生む場所であってもらいたいですね。



以上です。
長文でしたが最後までありがとうございました。
次回は、「思考のシフト」カテゴリーで、調理師免許と車の運転免許の取得方法について、簡単に書きますね。

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