愚痴を言う患者についての愚痴

(読了目安7分)

◎愚痴を言う患者についての愚痴


「最近の患者は文句ばっかりでムカツク」、なんて言っている看護師はいませんか?

患者の文句には、それなりの理由があるかもしれません。



では問題です。
なかなか一概に言えないところもありますが、

「病院」と「患者」、単純に考えた場合、先に愛をそそぐべきなのはどっちでしょうか。

そう、基本的に「病院」ですよね。


以下、「先に愛をそそぐのは病院」という前提で話を進めたいと思います。


自分が病気のとき、「信用している人」に手を握ってもらうのと、「信用していない人」に手を握ってもらうのでは、きっと前者の方が患者は安心するはずです。
病気の治癒率が「患者の安心度」によって変わることは、みなさんも理解できると思います。
看護の勉強をした人なら、患者の心の問題の重要性について、学校でイヤというほど勉強したはずです。


では、「患者さんとの信頼関係が大切だ」と言っている病院が、予約時間に来ている患者に対し、時間通りに診察を始められないとどうなるでしょうか。


そうなんです、患者は病院を信用しなくなり、治癒率が下がるんです。
しかし現在、予約制の病院では、大きな病院になるほど、予約時間どおりに診察が始まらない傾向があります。


マスターは30年以上病院に通っているんですが、ある日いつもの病院に行ったときのことでした。
待合室では、高齢者たちが、「待ち時間」に対する愚痴を言い、自分の待ち時間の長さを自慢しあっていました。
高齢者たちは、家庭菜園の野菜の面倒をみたり、孫と遊んだりしたいようだったので、待ち時間が長くなるほど以下のように感じてしまいます。

「一日の予定が立てられない」

「予約時間を守らない病院のせいで人生が無駄になる」

「私の余生のほとんどは、診察の待ち時間だ」

「予約なんて意味がない」


診察室の前の貼り紙には、

「当院では同じ時間に複数の患者さんの予約を入れています。受付時間が早い患者さんから診察をしています」


ということが書いてありました。


この文書は、3つの意味で病院の力不足を示しています。


「同じ時間に複数の患者の予約」・・・これではあまり予約の意味がないです。


「受付時間が早い患者さんから診察をしています」・・・これでは結局「はやいモン勝ち」になってしまい、予約の意味がほとんどないです。


そしてこの貼り紙があること自体、病院が約束を守っていないことの証明です。
守っていれば、このような貼り紙は無用です。


「約束の時間ちょうどに患者が診察を受けられる」・・・こうすれば患者は時間を守るようになりますよね。


予約時間については、「患者だって時間を守りませんよね・無断でキャンセルするなんてひどい」という病院側の意見もあります。
マスターも長年の通院生活で、「気づいたら予約日を過ぎていた」なんてこともありましたから、病院の言葉ももっともだと思います。


しかし、病院側が必ず予約時間どおりに患者の名前を呼ぶようにすれば、患者は遅刻しなくなりますし、その時間に合わせてトイレも済ませるでしょうし、もし病院側から「遅刻したから診察できません」と言われても、「他の患者のためには仕方ない」とあきらめがつく、もしくはその日最終の診察になっても文句を言わずに順番を待つかもしれません。
予約を忘れていた患者の責任は患者にあるわけですから、最終の診察まで待たせることについて、病院は全く気にする必要はありません。
「患者が来ないと病院の収入が減ってしまう」と考えてしまうと、患者を恨むことになりイライラしますが、経営がうまくいっている病院なら、患者のことを心配する余裕さえ出て、病院関係者にとってイライラの原因にはなりません。


病院は「売り上げが伸びないのは、患者が来ないから」ではなく、「患者が来ないのは病院が予約時間を守らず評判が落ちたから」と考えるのが知恵です。


世間話が好きで診察時間が延びそうな患者に対しては、「あなたとの約束の時間を守れるのも、患者のみなさんが協力してくれるからです。緊急な場合は別として、次の患者さんとの約束を守るためにも、診察を終わりにしましょう」と説明すればいいはずです。
少なくとも、病院側が時間を守れば、患者の精神的・時間的な負担が減り、必然的に患者の愚痴はかなり減ります。
その結果、病院の評判は口コミで広がり、病院の収入も増えることになります。


患者の愚痴が減るということは、患者が楽になるだけでなく、診察をしているドクターやスタッフたちも楽になるということです。


マスターは、いつも、「大人の愛は先払い」だと書いていますよね。

これは病院と患者の関係にも当てはまることで、やっぱり病院側が先に愛をそそがないと、患者は安心できないんです。

つまり、「病院の愛は先払い」ということです。

今回の投稿で言えば、「病院側が予約の時間を守る」ということです。


さて、上記をまとめると、以前マスターが通っていた病院は、予約時間に診察が始まらない病院でした。
そして、患者はそのことについて患者同士で愚痴を言い合っていました。
さらに診察室の前には

「当院では同じ時間に複数の患者さんの予約を入れています。受付時間がはやい患者さんから診察をしています」

と書いた貼り紙があり、患者に対して「文句を言わず黙って待て!」と指示しているようにも感じる内容です。


まあここまでは、「よくある光景」かもしれません。

しかしこの先があったんです。

マスターは病院で、おもしろい会話を耳にしました。



なんと、看護師たちが、
「愚痴を言う患者についての愚痴」
を言い合っていたんです。


「そんなこと言ったってどうしようもないのにね」

「あの人遅れて来てなに言ってんの」

「こっちだって忙しいのに」


などの内容です。


患者に聞こえてしまったんです・・・どうしましょう・・・


自分が患者の立場になればよくわかることですが、「イライラしている医療関係者」の対応ほど怖いものはありません。
医療の基本は、患者への愛です。
病人は痛みと闘っている人がほとんどですから、心に余裕がなく、病院に対して愛をそそぐなんてほぼ不可能です。
ですから、当たり前のことですが、病院側が患者に対して愛をそそぐ必要があるんです。
愛をそそぐとは、「約束を守る」ということも含みますから、患者との約束の時間に診察を始めることが、愛をそそぐ第一歩と言えます。
ですからここでつまずくと、医療の現場がおかしくなるわけです。


病院関係者のみなさんにはちょっと厳しい助言かもしれませんが、愚痴を言う患者についての愚痴は、やめましょう。
「愚痴」は、自分の精神衛生上よくないだけでなく、患者に聞こえてしまうと、病院そのものが信用されなくなり、患者の治癒率が下がるだけでなく、病院の経営も不振になるかもしれません。
病院の経営が不振になれば、一人当たりの仕事が増えて悪循環になります。


「患者が協力的なこと」、これは患者にとっても病院にとっても大切なことです。
それにはまず病院側が予約時間をしっかり守ることです。
もちろん患者が予約時間を守れなくても、患者を責めてはいけません。
患者にはそんな余裕はないんです。


病院の軸がしっかり安定していれば、患者は予約時間を守るようになります。
「守れなかった人は後回し」と言われても、患者は納得できるんです。


噂を聞くと、マスターが通っていた病院は、地域ではあまり人気がない病院でした。
マスターがそんな病院に通っていた理由は、担当のドクターを気に入っていたからです(現在はそのドクターが独立開業したため、そのクリニックに通っています)。
また、人間の不完全性について少しは理解しているので、病院の対応に対してイライラや愚痴にもなりません。
「患者も病院もみんな大変だなあ」と観察している程度です。

経営が苦しい病院に対してマスターは経営を立て直す提案はできますが、経営者はマスターの言葉に耳を貸さないでしょう。
それも含めて「社会の仕組み」ですから、マスターは、与えられた環境で楽しく過ごし、自分の幸せに責任を持つようにしています。


※「愚痴」については以下も参考にしてください
K子は非常識 (愚痴の話)

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