犬 2 犬を飼うということ

(読了目安8分)


本題です。
「結婚を視野に入れている独身女性が犬を飼う」という設定がメインの内容です。
今回を含め短編を20話ほど書きます。


概して犬を飼うことに否定的な内容になりますが、マスターは動物が嫌いではありません。
動物嫌いな人が感情的になって書くわけではないことを初めにお伝えしたいと思います。



◎犬を飼うということ

古来、犬は人間の役に立つために飼われてきました。
聴覚や臭覚が敏感なため、人間より先に周囲の異常を察知できます。
また、俊敏で、狭いところに入って獲物を捕まえたり、危険な場所で仕事をしてくれたり、場合によっては飼い主を守るために、番犬として外敵と闘ってくれました。
そしてなにより「忠実」で、一度できた絆は、ほとんど生涯変わらず続きます。


とても役に立つ動物として人間とともに生活をしてきた犬ですが、現代の犬の立場は、昔とはちょっと違った関係になってきています。
なんと言っても、現在は「愛玩動物」としての役割を果たす犬がほとんどです。
飼う側が「寂しさ」、つまり「心の空腹」を満たすために飼うわけです。
特に、人間に愛情をそそぐことができない人の一部が犬を飼う場合が少なくありません。
番犬としてではなく、愛をそそぐ対象として飼うわけです。


しかし、そそぐのは純粋な愛ではなく、見返りを求めた「愛のようなもの」である場合がほとんどです。


ですから、以前では考えられないことが起こっています。
人間よりも高価な食材を食べ、高級な服を着たりしている犬もいるんです。
犬にとって服を着ることは、異物を身につけることです。


これは愛と言えるでしょうか。


犬は服を着ることを求めていません。
人間側の自己満足のために犬がストレスを抱えるだけなんです。


大前提として、犬は自分の意思で「人間に飼われたい」と思っていません。
特にペットショップの犬は、人間側の都合で増やされ、ペットショップで売られ、残りの多くは殺処分されるのが現実です。
「犬を飼う」というのは、「人間の利益のために犬の命を奪う」ということなんです。


現代の日本人は、お腹の空腹を満たすために犬を食べることはなくなりましたが、心の空腹を満たすために犬の命を奪うのであれば、「犬の命を必要とする」という意味で、犬を食べているのと本質的に変わりません。
愛玩は娯楽の一種ですから、「娯楽を目的として犬の命を奪う」という意味では、「食べる」より「飼う」方がタチが悪いとも言えます。


現代において独身女性が犬を飼うとはどういうことか・・・
飼おうかどうか迷っている人は、そこにはきっと「寂しさ」があるはずです。
犬の命を預かる前に、自分にできることはないか、もう一度考えてみてください。




◎セラピー効果 愛に近い飼い方
マスターは、犬が人間にもたらすヒーリング効果はあると思います。
だからこそ容易に犬に手を出す人が後を絶たず、大きなビジネスになっています。
セラピー効果を期待して犬と人間が接するなら、明らかに効果が高いと思われるなら、ありだと思います。
たとえばおばあちゃんを含む、夫婦と子供2人の「5人家族」がいるとします。
おばあちゃんはヒザを痛め、歩くのは困難ですが、意識はしっかりしているとします。
そんなとき、おばあちゃんの相手として、犬はとても役に立ってくれます。
まず、犬がおばあちゃんの相手をすれば、家族全体のパフォーマンスが落ちることがありません。
また、おばあちゃんも日中1人きりで過ごすよりは退屈することもなく、認知症の予防にもなりえます。
さらに、人件費がかからないというのも利点です。
また、訓練をすれば、おばあちゃんに異常が起きたとき、吠えて知らせることも可能です。
こんな飼い方なら愛に近い飼い方だと言えます。


盲導犬や警察犬をはじめ、災害救助、医療現場、入国管理などにも犬は役立ちます。
これらは明らかに犬の貢献度は高く、飼う側の感謝の度合いも大きなものです。
やはりこんな存在なら、愛に近い飼い方だと思います。


ただ、表面的に「アニマルセラピー」という言葉を使って、人間の役に立っているかのように見せかけるビジネスは、愛から遠いものだと思います。


また、疲れた犬の世話をするためのビジネスも、愛から遠いものだと思います。
犬を疲れさせているのは、人間だからです。


◎マスターが聞いた話
マスターは犬そのものでイヤな思いをしたことはありませんが、お客様から様々な体験談を聞きます。


たとえば犬の「放し飼い」をステータスにしている人がいますが、マスターの店のお客様の中には「犬恐怖症」の人もいて、以前、放し飼いの犬におびえてしまったことがあったそうです。
お客様が、犬が怖いことを伝えると、「近づいたら蹴り飛ばしてくれ、それがしつけだ」と言われたらしいんですが、それってみなさんはどう思いますか?
犬を蹴り飛ばすなんて、少なくともマスターにはできませんし、犬恐怖症の人だって逃げるので精いっぱいだと思います。
勇気を出して蹴ったとしても、周囲からの目は人間が犬をイジメたことになるはずです。


また、マスターが知る限り、近所の放し飼いの犬が15年で2頭、交通事故で死んでいます。
死んだ犬もかわいそうですが、犬をひいた車のドライバーもかわいそうです。
ぶつかったときの感触や、車の下に入ってしまったときの衝撃などはトラウマになるでしょうし、複雑な罪の意識などを一生背負うわけです。
また、国道がすぐそばにありますから、犬をよけようとした車やバイクが観光バスと正面衝突したら・・・
悲惨なことになります。


また、これも聞いた話ですが、放し飼いの犬が小学生に噛み付いてケガをし、親が飼い主に「放し飼いはやめてくれ」と頼んだときのことです。


親 「うちの子が噛まれてケガをしました、驚いて泣いています。お願いです。放し飼いはやめてもらえませんか?」

飼い主 「それはできません。飼い方は自由ですし犬がかわいそうです」

親 「お宅の犬が車にひかれて死んでもいいんですか?」

飼い主 「死んでもかまわないです」



こんな会話もあったそうです。
けんか腰で話したとしても、支離滅裂ですよね。
犬に対する愛情が表面的だと、こんなことを言う飼い主になってしまいます。


犬を飼う人には大きく2つのタイプがあります。
それは、「犬に愛をそそいでいないタイプ」と「犬に愛をそそいでいるタイプ」です。
上記の例はもちろん「犬に愛をそそいでいないタイプ」です。


また、マスターの店にも犬連れのお客様が来店しますが、前者のタイプのお客様は、ルールを守ろうとしません。
「ペットはあちらの席でお願いしたいんですけど」とお願いすると、怒ったような口調で「いいじゃないのよ」という類の言葉を使って反論します。
犬と人間を同一視し「私のかわいい家族・ペットこそ全て」というタイプで、周りが見えていません。


犬を連れて店内に入ろうとする飼い主もいます。
「抱くからいいでしょ」みたいな言い方をして入店しようとします。
他のお客様がいない場合に限り、犬を抱いたまま入店していただくこともありますが、マスターは基本的にはお断りしています。
そのとき、店内で舞った犬の毛が商品に付いたり、食事のテーブル上に乗ってしまうなどのリスクもあるからです。


それから、ペット好きな人は「犬恐怖症の人がいるかもしれない」など考えもしませんから、犬を否定されたらもう不機嫌なままなんです。
世の中、「一億総犬好き人間」だと思っているのかもしれません。
とにかく、溺愛してしまうタイプの飼い主は、対応が難しい場合があります。


一方、愛に近い飼い方をしている飼い主ほど、気持ちよくルールに従ってくれます。

「あ、気がつかなかった、すみません」

と言ってくれたり、さらに一歩進んで、車の中で待機するしつけをしていたり、「ペットOKスペース」につないだまま席を外しても、吠えずに待つ訓練をしてあったりします。
これなら犬恐怖症の人も安心でき、犬の社会的立場も悪くなりません。
これまでにたくさんの犬連れのお客様を見てきましたが、人生いろいろ、飼い方もいろいろです。


◎権利と義務
社会の中で犬を飼うには、犬を飼うために必要なルールがあります。
「世の中、犬好きばかりではない」という意識を常に持ち、飼い主としての義務を果たしていれば権利を主張できます。
しかし義務を果たさず権利だけを主張している人もいます。
義務を無視して権利ばかり主張すると、犬の社会的地位をおとしめることになります。


子どものころ、犬に追いかけられたり、噛まれたりして、それが心の傷になっている人・・・


そんな人は、犬が近づいてくるだけで恐怖に耐えなくてはいけません。
また、普段はおとなしい犬でも、他の犬と遭遇した時などは、突発的なトラブルも充分にありえます。
犬が人を噛むことは日常茶飯事ですが、大型犬が人を噛み殺してしまう事件も時々耳にします。
飼い主が、飼い主としての義務を守ることで、これらのトラブルは激減するはずです。
周囲の多くの賛同があればこそ、犬は人間の役に立ち、人間社会に受け入れられます。
犬を飼う権利は誰にでもありますが、権利ばかり主張して義務を怠り、周囲に迷惑をかける飼い主に飼われている犬は、マスターには、「飼い主から愛されていない犬」に見えます。


では第2話はこのへんで。
次回第3話は、以下からいくつかいきます。


◎殺生をしないことが目的のベジタリアンがペットを飼うということ
◎ポチなのか犬なのか
◎犬友
◎子供よりやっかい
◎ペットブームの裏で
◎信念だけじゃ・・・
◎人はムリだから
◎運命の出会いなのか
◎心を満たす
◎おいしいもの依存症
◎人が犬のために生きる
◎ビジネスのターゲット
◎本当に犬を愛しているなら
◎長く愛されるか
◎人間がペットになったら
◎生きるために
◎悪循環

・・・

投稿タイトル一覧は以下です。


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