オーガニック教 8

(読了目安11分)

ここまで7話続いた「オーガニック教」も今回で終わりです。

◎オーガニックライフに戻るのではなくその先へ


環境に負荷をかけないように生きることを主眼とした「オーガニックライフ」。
しかし、オーガニックライフを極めていくほど、「過去」の生活にさかのぼることになり、究極的には、洞窟で生きる太古の時代の生活に戻ってしまいます。


人類はオーガニックライフに戻るのではなく、オーガニックライフを超え、その向こう側に到達する必要があります。
大昔、火を手に入れた人類が、度重なる火の事故におびえて火を手放していたら、今のみなさんはそこにいません。
人類は、火を知り、火の恐怖を乗り越えたからこそ今があります。
オーガニックライフも、人類の歴史の一部であって、単なる「通過点」と言ってもいいかもしれません。
人類の目的地は、オーガニックライフの先にあります。



・・・


では、人類がまだ洞窟で過ごしていた時代を思い浮かべてみてください。


以下、洞窟(ドウクツ)に住む「ドウさん」と、現代(ゲンダイ)から洞窟時代にタイムトラベルした「ゲンさん」の会話です。
ドウさんは洞窟の中に住み、周囲に生えている野生植物を採ってそのまま食べています。
もちろん水で洗うこともしない究極のオーガニックライフです。


ゲンさん
「ドウさんは野生の植物を採って食べてるのか?人間は将来農業をやって、ほとんど野生植物を食べなくなるんだ。もっと柔らかくて甘くて、おいしい野菜をたくさん食べられるんだぞ、すごいだろう」



ドウさん
「い、意味がわからないです、ノウギョウってどういうこと?」


ゲンさん
「ドウさんが食べてるその野草から種をとって育てるわけだよ。土地をきれいに整備して、そこに整然と種を蒔くんだ。そして決まった時期に水をやって、いろいろと手間をかけてやると、整然と野菜ができるわけ。そうすると、一度に大量の野菜が採れるんだ。探しに行くより楽に効率良く収穫できるんだ、いいだろう」


ドウさん
「決まった場所でたくさん採れるなんてちょっとヘンじゃない? 探し回って苦労して見つけるからおいしいんじゃない?それにさ、人間の手で意図的に作られた野菜なんて、味気ない気がするんだよね。神から与えられた自然のものを食べようよ。僕はノウギョウ反対だね」


ゲンさん
「計画的に大量生産することで人間は発展していったんだ。ドウさんだって、もし食べ物がたくさんあったら安心だろ?病気になってもムリして野菜を探しに行かなくていいんだよ。それからね、温室を使ったり肥料を使ったりして、いつの時期でも、どこにいても、大きくて種類の豊富な野菜を食べられるようになったんだ。農業は人間の知恵なんだ」


ドウさん
「自然にある野菜をその季節に食べないと身体を壊すんじゃない?肥料を使って大きくなった野菜なんて気持ち悪いよ・・・それにさ、何がどれだけ採れるかわからないから狩りは楽しいんだよ。計画的に野菜ができたら、狩りをする楽しみがなくなっちゃうよ」


ゲンさん
「オレの時代の人間は狩りなんてしないよ。21世紀の人間は、狩りをしている人はほんの一部で、しかも生活のためじゃなくて、趣味としてなんだ。100%に近い人が、計画的に大量生産された野菜を食べてるんだよ。そして狩りをしなくなったのは確かだけど、狩りをしない楽しみがなくなったなんて誰も思ってないんだ。狩りよりももっと楽しい娯楽がたくさんあるからね」


ドウさん
「どうでもいいけど、栽培された野菜なんて気持ち悪ぅ~ 狩りをする楽しみを知らないなんて、かわいそうになあ」


ゲンさん
「ドウさんはそう思うかもしれないけど、オレの時代の人間は、狩りができないからといって、だれも自分がかわいそうだなんて思ってないよ。逆にどうやったらおいしくて安全な野菜がたくさんできるか、みんないつも考えてて、効率化が進んだおかげで人間はここまで増えることができたんだよ。オレが住む21世紀は、世の中に出回ってる野菜の一部は、栄養のある水だけで室内栽培されたものもあるんだ」


ドウさん
「そんなの食べたら人間は死んじゃうんじゃない?大地の恵みと太陽の光を浴びて育った野菜じゃないと、気持ち悪いってば。ぼくは栽培された野菜なんて食べないよ、きっと神の怒りに触れることになるしね。誰がなんと言おうとぼくは野生の植物を採って食べるよ」


ゲンさん
「ドウさんにはわからないかもしれないけど、人間はいつも新しいことに挑戦して発展してきたんだ。農業で効率よく作った野菜を食べても人間は死なないよ」


・・・そしてゲンさんは21世紀に戻りました。


今度は、未来からミライさんがやってきました。
以下、ゲンさんとミライさんの話です。



ミライさん
「近い将来、人間は野菜の栽培に土を使わなくなり、安定した環境 ―地下― で水を使った栽培が主流になるんだよ。


ゲンさん
「地下?・・・まあたしかにそうなるかもしれないね・・・」


ミライさん
「うん、栽培に使われるのは、野菜が必要としている栄養素が溶けた水だけになって、室温が管理された地下室で栽培することになるんだ。管理が行き届いた地下室には害虫が侵入しないから農薬が無用になるし、農薬が無用になった分、完全無農薬で、安全かつコストがかからなくなるよね」


ゲンさん
 
「うん、まあそうだね」


ミライさん 
「地上の無農薬野菜は虫がついて美しくないし、美しい物を作ろうとすると人件費がかかって高価になっていたけど、地下栽培なら、完全無農薬野菜でキレイな野菜ができるんだ。ウイルスもない環境で育てるから野菜は病気にならないしね。人間が病気から逃げてきた歴史と同様、野菜も病気から逃げる歴史を進むわけ。光は太陽と同じ波長の人工の光だ。天候のコントロールが簡単にできるから、生産計画が立てやすくなって野菜の値段が安定するよ。食べる時は洗わなくていいこともあって、その野菜に使う水は、従来の100分の1になるんだ。地上部分に太陽光発電設備を作ることで、地下農場の電気をまかなえるようになる。これまで問題になってきたことが、地下栽培で一気に解決できるんだよ」

ゲンさん
「なんだか自然じゃない感じがして不安だよ・・・」


ミライさん
「でもこれは、ゲンさんがドウさんに言ったことと同じだよ。野菜を効率よく育ててたくさん収穫するための工夫をしているだけだよ」


ゲンさん
「言われてみればそうだけど、オレは遠慮したいね」


ミライさん
「人間はいつも新しいことに挑戦して発展してきたんだ。地下栽培で効率よく作った野菜を食べても人間は元気だよ」


・・・以上です。


洞窟時代のドウさんにとって、21世紀の農法は、それがオーガニックであろうがなかろうが、「悪魔の農法」と言ってもいいものでした。
そして21世紀の農法のゲンさんにとって、ミライさんが語る未来の地下農法は、「悪魔の農法」ということになるんでしょうか。


程度の差こそあれ、新しいものに対する不安は誰にでもあります。
しかしその不安に挑戦してこそ人類の成長があるわけです。
全部計画通りにうまくいくはずもありませんが、その失敗も全て、愛に近づくためには避けて通れないものです。
一昔前の安心感、今の状態にとどまろうとする安心感・・・これはたしかに大切ですが、愛にたどりつくために、人は成長していかなければなりません。


いま、「オーガニック教」の信者になろうかどうしようか迷っている人も多いかもしれません。
そんな人はぜひもう一度、以下を考えてみてください。


大昔、人類が火を手に入れたとき、それを扱いきれずに火傷をした人は後を絶たなかったはずです。
また、ちょっとした不注意で火だるまになって命を落とした人もいたはずです。
不完全燃焼による一酸化炭素中毒などで、脳障害者や死者が出たとき「悪魔の領域に踏み込んだ罰」と感じた人もいたはずです。
そんなとき、「火は悪魔の道具だ、われわれには手に負えない」と結論づけ、食品を加熱せず、生で食べ続けた集団がいたとしたら、火のない文化のまま人々は病気や飢えに苦しみ続けたはずです。


一方、新しいものに挑戦し、犠牲者を出しながらも火を使い続けた集団は、その後徐々に火を扱う術を身につけ、殺菌効果・保存効果の高い調理法に恵まれ、さらに言えば「鉄」を作り出し、大きく発展しながら現在に至ります。


人類の歴史は、効率化の歴史だということは以前書いたとおりです。
農業も同様で、人類は効率的な農業を展開し続けることで、人類全員が農業に従事しなくても生活できるようになりました。
実際、このnoteを読む多くの人が、自分で直接食べ物を生産していないのに、毎日なにかを食べ、スマホのゲームやLINEでのコミュニケーションを楽しんでいるはずですが、それらが「効率化」による恩恵です。
ですから、農業の効率化によって節約した時間で人生を楽しんでいる人が、農業の効率化に反対するのはおかしな話なんです。


マスターは、歴史をさかのぼるよりは、未来へ進むことが愛だと思っています。
「環境負荷を減らす」という意味でオーガニックライフを考えたとき、オーガニックライフに「戻る」ことで環境負荷をなくすのではなく、人類がさらに効率化された生活をすることで、最終的には環境負荷を減らすことができるようになる、ということです。



◎オーガニックで長く愛されるか


現在のオーガニックは、ほとんどが商業ベースの「商業オーガニック」です。
悪知恵のある大人が作った情報に踊らされ、ただ信じたいことを信じている女性は、知恵のある男性から長く愛する対象として見られることはありません。


また、オーガニック思考を強めていくと、結局は時代をさかのぼった生活になってしまい、それでは平均寿命がガタ落ちになってしまいます。
平均寿命が40歳の国と80歳の国を選べるなら、どちらを選ぶかは言うまでもありません。


商業ベースのオーガニック思考が強くなるほど愛から遠ざかります。
そして、オーガニック教の信者になってしまったらもう終わりです。
ノンケミカルの石鹸を使っていない人のことを、「パソコン」という科学の結晶を使って本気で批判するようになってしまうんです。
また、オーガニックに同意しない家族を置いて、自分だけオーガニックライフを選んでしまうんです。
「家族よりオーガニック」だなんて、宗教の妄信と似ていますよね。


そして、本当のオーガニックがあるなら、それは、愛から生まれたものです。
ですから、愛を手に入れるための本質的な努力を実践している人にとって、オーガニックは無用です。
「宗教は愛から生まれた、だから愛を学んでしまえば宗教は無用」、これと同じことです。
オーガニックは愛にたどりつくための手段であって、生きる目的そのものではありません。
「オーガニックじゃなければ愛にたどりつけない」なんてことはないんです。


ということで、商業オーガニックでは長く愛されません。
愛するためのオーガニックなら、長く愛されます。
以下に続きます。


◎愛するためのオーガニック


商業オーガニックについてはここまでに書いてきましたが、「愛するためのオーガニック」についてはまだでしたね。
最後に短くまとめたいと思います。


愛するためのオーガニックというのは、「私もあなたも周りも楽しい」というオーガニックです。

具体的には、オーガニックと定義されているオーガニックを、公言している通りに実践しているものが、愛するためのオーガニックです。
「商業オーガニックではない、本物のオーガニック」が、愛するためのオーガニックです。


言うのはとっても簡単です。
しかし意外とできないんです。
志を高く持ってオーガニック農家になっても、途中から様々な事情から、その志を貫くことができなくなり、商業オーガニックになっていく人がほとんどかもしれません。


また、なんと言っても、愛するためのオーガニックは、やっていて楽しく幸せです。


オーガニック関連の人たちは、自分のオーガニック思考、オーガニックライフが、「愛するためのオーガニック」なのか、客観的に判断してみてください。
「私もあなたも周りも楽しい」という状態が愛するためのオーガニックです。



◎まとめ


「オーガニック教」とは、商業オーガニック業界が語るオーガニック思想です。
オーガニック教の信者になってしまうと、オーガニックライフのために人生をかけ、反オーガニックな生活をする他人を批判してしまい、オーガニック教の信者だけで集まって閉鎖的な社会を作ってしまいます。


業界にとっては、信者が増えるほど利益になるんです。
しかし人類にとっては信者が増えるほどマイナスになります。
人類にとってマイナスになることは愛ではありません。


考えることをやめることは楽ですが、妄信者は長く愛されません。
一人一人が他人と争わず、自分の幸せに責任を持つこと、たったそれだけで地球は愛の星になります。
愛は、オーガニック教を超えた向こう側にあります。


以上です。
8話続いた長いシリーズでしたが、最後までありがとうございました。

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