遠くから念じて時計を動かすことはできますか?


(読了目安8分)


止まった時計を、念じただけで動かすことができるかどうか、という話です。


まず前回の「電池」の話についてはオッケーですね。
電池の電力が復活する理由は、加熱による化学反応の促進によるものです。
電池をただ見つめているだけでは電力は復活しません。
ただし以下の条件なら、見つめるだけでも復活することはありえます。
たとえば、寒い時期に、電池式灯油ポンプの乾電池の力が弱り、ポンプのモーターが止まってしまったとします。
このとき、電池を取り出し、テーブルの上に電池を乗せて「復活しろ!」と30分ほど祈ってみてください。
きっと電力が復活し、モーターは動き始めます。


あなたは30分間「復活しろ!」と祈っただけです。
手で握らないのになぜ復活するのか・・・


それは、部屋の中の温度が、ポンプがあった場所より暖かいからです。
数日前まで使っていたポンプのモーターが止まったということは、電池の電力は、ポンプのモーターを回すためにはギリギリ足りない状態です。
ですから、ちょっと復活すれば、モーターは、一時的とは言えまた動くわけです。
人間が30分じっとしていられる部屋の中というのは、灯油のポンプが置いてある場所よりはるかに室温が高い環境のはずですから、必然的に電池の温度も上がり、電力は復活します。
そのため、灯油用のポンプのモーターがもう一度動き出すわけです。


真冬の寒いところで使えなくなった電池は、室内に持ち込めば復活するわけですが、このとき、霊能者っぽい雰囲気の人が、電池に手をかざし続けていたら、その人の「霊力」で充電されたと勘違いする人が出てきてもおかしくありません。
とりあえずみなさんは騙されないでくださいね。



では上記の話をふまえ、今回の本題、
「遠くから念じて時計を動かす」
について書いてみます。


結論から書くと、条件付きで、時計は動きます。
その理由を書きますね。



みなさんは、止まってしまって放置された時計をひとつかふたつ、持っていませんか?
その時計を、もしマスターが遠くから念じて動かしたら、すごいと思いますよね。


遠くから念じて時計を動かすことについては、今のアラフィフ以上の年代には有名な、「ユリ・ゲラー」のパフォーマンスを例に挙げて書こうと思います。

・・・

20世紀の終わり、スプーン曲げで有名になった「ユリ・ゲラー」を扱うテレビ番組は、空前の視聴率を稼ぎました。
自分の超能力を示す番組内で、ユリ・ゲラーは以下のようなことを言います。


「私が念を送りますから、みなさんは時計を握り、一緒に祈ってください。祈りが通じれば時計は動きます」



電波を通して視聴者に対して念を送るユリ・ゲラーと、テレビを見ながら時計を握り、一緒に祈る視聴者。
(実は少年だったマスターも、当時この番組を見ながら祈りました)


ユリゲラーは念を送り続けます。
そして視聴者も祈り続けます。


しばらくしてユリ・ゲラーが言います。


「みなさん、時計を見てください、動いていませんか?」



時計を見ると、なんと! 時計が動いているんです。


しかし、ここで「すごい!すごい!超能力だ!」なんて言っているようではいけません。


「なんで動いたんだろう?」と冷静に考えるのが大人の思考です。
(マスターはまだ子供だったので、仕組みがわからず不思議だったのを覚えています)


止まった時計が動く主な理由は以下のとおりです。


★電池式の時計は、手で温められたことで電池の電力が回復し、一時的に動き始めた

★電池を使わない「ぜんまい式」などの機械式時計は、手で温められたことで、歯車や軸に塗ってある油脂が柔らかくなり、抵抗が減った影響で動き始めた

★上記両方の特性を持っている時計は両方の影響で動き始めた


電力やぜんまいの力が弱ってギリギリで止まっている時計は、ほんの少しの刺激で動く可能性があるわけです。


当時、生放送中の番組には「時計が動いた!」と電話が殺到したらしいですが、それはもちろん番組製作側の予定通りの出来事でした。
電話が殺到した理由は簡単に説明できます。
なんと言っても、動かなくなった時計の多さ、つまり「母数」の多さです。
当時の番組の視聴率は30%を越えていたとも言われています。
周到に予告されていた番組ですから、放送当日は1000万世帯以上が動かなくなった時計を用意してテレビを見ていました。
テレビの前で温められた時計の数は、1世帯に1個の時計だとしても1000万個あります。
少なく見積もっても半分の500万個はあったと思われます。


番組放送当時、動かなくなった時計が500万個、人の手で温められたわけです。
そして、その中の1パーセントでも動き出せば、5万個の時計が動いたことになり、番組には、視聴者から「すごい!動いた!」という電話が殺到します。


その他、生放送か確認するための電話や、オペレーターと話してみたい視聴者、冷やかしの電話なども含めれば、番組で用意した電話機が、鳴りっぱなしになることは予想できます。
これが、生放送中のテレビ局に電話が殺到した理由です。


見方を変えれば、99%の時計が動かなかったわけですから、「全然ダメじゃん」という評価になるはずですが、実際はそうではなく、「ユリ・ゲラーの超能力は本物」という根強い信者を生み出す結果になりました。


ここが人の心理のおもしろさです。
多数を相手にこのようなパフォーマンスをすれば、たいていのことはできてしまいます。


最近の商業世界での典型的な例としては、病気の人に自称「健康食品」を与え、「これを飲んで治った」という体験談を自社サイトに掲載する業者です。
対象が多いほど、それを飲んだタイミングでたまたま治る人は出てきます。
1万人に健康食品を試食してもらえば、効くにしろ効かないにしろ、そのタイミングで体調が良くなる人は必ず現れ、その人たちが健康食品の信者になります。


「飲んで治った人・飲んで治らなかった人・飲まないで治った人・飲まないで治らなかった人」この4つの視点からデータを見ないと本質は見えてきません。
みなさんはひとつの方向だけから物事を判断しないようにしてくださいね。



マスターは、10代のころには時計が動く仕組みを知りませんでした。
そして今は、理解力と情報量によって、その理由を知っています。
このように、物事の仕組みを知ることで人は本質に近づきます。
本質に近づけば、「私は超能力者です」と近づいてくる人にも騙されませんよね。


いつも繰り返すように、あなたの人生や人間関係がうまくいかない理由がわからなくても、将来それがわかるときが来ます。
少しずつ本質に近づいてください。


さて、ここからさらに大切な話です。


今のスピリチュアル系の世界の指導者たちの多くは、当時スプーン曲げや念力のパフォーマンスをやった「ユリ・ゲラー世代」で、いまだに彼の力を超能力だと信じている世代です。
具体的には、50代前後の人たちです。
スピリチュアル系の指導者たち全員がユリ・ゲラーの影響を受けているとは限りませんが、なんらかの形で影響を受けていることは想像できます。
なんと言っても、当時のテレビ番組の視聴率は30%以上とも言われていますからね。


では、それを踏まえて以下を考えてみてください。


まず、ユリ・ゲラーは、温めたりショックを与えたりすることで、一定の確率で時計が動く仕組みを知っていたのでしょうか。
それとも本心から超能力で動くと思っていたのでしょうか。
おそらくユリ・ゲラーは、手で温めた時計が一定の確率で動くことを知っていて、日本で何個の時計が動くか、計算もしていたと思います。
この企画の後、極論すれば、ユリ・ゲラーは日本で5万人の信者を手に入れたことになります。


・・・人を熱狂的に信用させると、なにができるか。

圧倒的なカリスマ性を利用して、人々を癒すことができる。

圧倒的なカリスマ性を利用して、人々を騙すことができる。


大きく分けてこの2点です。

前者は、自分のカリスマ性を人々の病気や悩みの改善に使います。
後者は、自分のカリスマ性をお金や肉体関係などの俗的な欲のために使います。
しかし単純ではありません。
前者を装う後者、つまり人を癒すフリをして人を騙す人が多いのが今の世の中ですから、その見極めをする必要があります。


この2者の見極めは、彼らの普段の生活でわかります。


だれがどう見ても「質素な生活」なら、前者です。
だれがどう見ても「贅沢な生活」なら、後者です。


スピリチュアルリーダーとして、信者や相談者から高額なお金を取り、豪邸に住んでいるなら間違いなく後者です。
ちなみに「ユリ・ゲラー」の住居は億単位の豪邸だとのことです。


豪邸に住むカリスマを信用するかしないか・・・みなさんもじっくり考えてみてください。



◎信じる気持ち


「信じる気持ち」というのは大変強い力を持っています。

しかしその気持ちが強い分、方向が間違っていると、「自分だけ気持ちよく、相手が気持ちよくない、周りが迷惑している」という状態になってしまいます。
これは「愛」ではありませんから、やがて破綻します。


「マジック(手品)」に代表されるように、仕組みが分かれば「あたりまえの現象」と思えることを、あたかも超能力だと思わせる技術は多くあり、その技術は日々進歩しています。


止まった時計が動く仕組み・・・わかってしまえば簡単ですが、わからないと超能力です。
ユリ・ゲラーのやり方を知っている今のスピリチュアルリーダーは、信者に対して「愛」で接するのか、または「俗欲」で接するのか、どちらでしょうか。
みなさんはどうか本質を見抜いてください。


では最後に、今回のテーマ、
「遠くから念じて時計を動かすことはできますか?」
という質問に対しての回答は、


「遠くから念じるだけでは動きません」
となります。


温めたり衝撃を与えたりすることで、動く可能性はあります。


以上です。


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