高級和包丁の切れ味 ―人参の断面―

(読了目安20分)

◎高級和包丁の切れ味 ―人参の断面―


今回は「包丁」の話なんですが、「読了目安20分」とあるように長編になりました。
ただ、包丁についての「本当のこと」がわかるのと、結果的に「付き合う人の選び方・仕事の選び方・生き方の選び方」につながる話なので、よかったら最後まで読んでみてください。


後半にはマスターが切った人参の写真を載せます。
お楽しみに。


・・・


以前以下のような記事を読み、不思議に思うのと同時に、「社会の仕組み」と「心の仕組み」について考えました。


マスターが読んだ記事

<高級和包丁と使い古した洋包丁の切れ味の違いに驚き 人参が煮崩れず、角がとがってる!>

まいどなニュース
https://maidonanews.jp/article/13958014



上記の記事を要約すると以下のようになります。

「アキポ」さんが、「買ったばかりの高級和包丁」と「使い古した洋包丁」で人参を切り、切り口のツヤに大きな差があったとツイートしたところ、大反響だった、というものです。

そして、「友達に知らせるつもりで軽くツイートしただけなのに、こんなに反響があるとは!」と驚いていました。

また、この記事を書いたライターさんは、最後に、「興味がある人はチェックしてみてください」と包丁メーカーの名前を出して締めくくっています。


さっそく「アキポ」さんのツイッターを見たところ、ツイートは11月20日のものでした。

人参の断面の違いがはっきりわかるインパクトのある写真でした。

※アキポさんの実際のツイートはこちら
https://twitter.com/pyontakito/status/1329759459674001409


いろいろ見ていくうちに興味深いことが9項目あったので、みなさんにお知らせします。

以下、本質を伝えるために、あくまでもマスター個人の意見として書きますね。

懐疑的・否定的な内容を書きますが、記事に出てくる関係者を誹謗中傷する意図は全くありませんので、そのつもりで読んでみてください。
近年、誹謗中傷による死者が続出しています。
誹謗中傷は、「しない・させない」ということを意識してください。



記事の内容とは順番が前後しますが、記事の内容の引用も含め、マスターが興味を持った順に書いてみます。

スマホ2台、またはパソコンを持っている人は、紹介した記事にある「人参の写真」を見ながら読んでみてください。


1:誤解を生みやすい表現

ツイートの内容は、「洋包丁より和包丁の方が切れ味がいい」と誤解しやすい内容だと思いました。

実際は、和包丁も洋包丁も、よく砥いであれば同じように切れます。

ただ、「切れ味」というのは、人間の主観もあって説明が長くなってしまうため、一概に「良い・悪い」と言えるものでもないということはお伝えします。




2:同じ「切り方」をしたか

食材の断面のツヤに影響を及ぼすものは2つあります。

ひとつは「切れ味」、もうひとつは「切り方」です。

食材の断面は、同じ包丁を使うなら、刃渡りを長く使って切るほどツヤが出ます(マスターはこの切り方を「低圧スライド切り」と呼んでいます)。

※「刺身」を切るとき、長い包丁を使って刃渡りを長く使うのも、断面にツヤを出すためです


実験をすればわかりますが、食材の断面にツヤを出すためには、たとえ包丁の切れ味が良くても、また、包丁の素材がなんであれ、「スライド切り」は必須条件です。
その証拠に、よく砥いだ一本鋼の和包丁であっても、職人たちは刺身を切るときに刃渡りを長く使います。


理由は、「断面にできる限りツヤを出すため」なんです。


いくら切れ味が良い包丁でも、刃渡りを長く使わないと断面にツヤが出ないということは、和食の職人たちも教えてくれているわけです。

ですから、アキポさんのツイッターの「ツヤのある人参」は、刃渡りを長く使った切り方であることは間違いありません。

そしてアキポさんの洋包丁は、「使い古し」とは言え、日常的に使っている包丁ですから、刃渡りを長く使えばある程度の切れ味を出せることも間違いありません。

つまり、「和包丁と洋包丁で同じスライド切りをした場合、写真のような差にならない」ということです。

ですから、想像できるのは、「切り方を変えている」ということです。

マスターはアキポさんの人参の写真を見て、高級和包丁は刃渡りを長く使って切り、使い古した洋包丁は刃渡りをほとんど使わない切り方をしていると感じました。

「断面のツヤ」については、みなさんもすぐに実験できますので、料理をするときに試してみてください。

実験項目は、


1)ニンジンを真上から真下に切る「垂直切り(食材に刃元を乗せて垂直に切る)」


2)ニンジンを刃渡りを長く使って切る
※スライド切りで切る(食材に切っ先を乗せて押しながら切る


この2つです。

同じ包丁を使っても、人参などの硬い食材を切れば必ず差が出ます。

さらに興味がある人は、切れ味が良い包丁で垂直切りをし、切れ味が悪い包丁でスライド切りをしてみてください。

興味深い結果になると思います。




3:写真のクオリティが高い

アキポさんは、通常は一般主婦としてツイッターをやっているようです。
マスターが見たときのフォロワーは220人程度でした。

アキポさんが掲載した人参の写真は、「友達に見せるためにツイートしただけ」というわりに、日常的に撮っている「お弁当」や「景色」などの写真とは異質で、奥が暗い写真(ある意味特殊な方法で撮ったもの)です。

アキポさんはおそらく自分の両手を使って人参を持っています(両手ではないなら、誰かに持ってもらっています)。

みなさんもやってみるとわかると思いますが、写真の奥を暗くして、両手で人参を持った状態で、断面のツヤがわかるように光を当てて撮るのは、意外と難しいんです。

(「リモコン・セルフタイマー・音声シャッター」などを使えば、両手がふさがっていてもシャッターを切ることはできます)

簡単に言えば、ある程度のカメラの知識が必要なことと、2人いないと撮るのが難しい写真なので、一般主婦が友達に知らせるためだけに撮った写真としては、手間がかかっているように感じました。

友達に知らせるだけなら、まな板の上で手軽に撮ればいいんじゃないかと思います。

包丁メーカーやライターから、バズることを狙って「この写真でツイートしてみて」と渡された写真かもしれません。




4:「同じ包丁でも材質によってこんなに違いがあるのかと驚くばかりです」

この言葉も、「和包丁は切れ味が良く、洋包丁は切れ味が悪い」という誤解を生みやすい書き方です。
切れ味の違いが出るのは「材質」よりも「砥ぎ方」によってです。
ですから書くなら「同じ包丁でも、砥いであるのと砥いでないのではこんなに違いがあるのかと驚くばかりです」となります。

実際、切れ味に大きな影響を及ぼすのは、素材ではなく「砥ぎ方」です。

わかりやすいように、今回の投稿の最後に、「マスターが使っているステンレス洋包丁(砥いである)」と、「使い古しの一枚鋼の和包丁(もらいもの)」で切った人参の写真を載せますので見てみてください。

つまり、アキポさんのツイッターの逆のパターンで切った人参です。

よく砥いでいれば、どの包丁を使っても切れ味は良くなります。

※それにしても、アキポさんが撮った写真の奥の人参の断面のツヤは素晴らしいと思います。
ネット上に「まるで作り物のような」というコメントがあるのもうなずけます。





5:切れ味がいいから煮崩れしない

これも本質的には間違いです。

マスターは、切れ味が悪い包丁で切った人参も、切れ味が良い包丁で切ったものとほとんど同様に煮ることができます。
「落とし蓋」や「静かに煮る」などの工夫をすれば煮崩れしないで煮ることができますから、一概に「切れ味のいい包丁で切ったから煮崩れしない」とは言えません。

また、品種にもよります。
ジャガイモやサトイモなどは、煮方を間違えれば煮崩れしますし、人参も細胞の密度が低い人参ほど煮崩れしやすくなります。


「煮崩れしないこと」にこだわるなら、「切れ味」より「煮方」です。


また、煮崩れしなかったという「ダイス状の人参(以下URL)」の写真も、「アキポさん提供」と書かれていますが、これも、背景を暗くし、光の向きを考えたマクロ撮影などの技術が使われた写真です。
ニンジンをここまでの形に切ることができる人が、普段使いの自分の洋包丁をしっかり砥がないのはおかしいと思いました。

アキポさんがダイス状に切った人参。
https://maidonanews.jp/article/13958014?p=24287943




6:「手ブレ」ではなく「ピンボケ」

アキポさんは、インタビューの中で、「写真はブレてるし」と言っていますが、写真はブレていません。

右手の親指の指紋やシワを見れば、ブレていないことがわかります。

原因は「ピンボケ」です。

ただ、ピントは手前に合っていて、奥の方はピンボケですから、これはシャッターの「絞り」の関係で、「ピントが合う範囲(被写界深度)」が狭い写真だからこうなるとわかります。




7:硬い野菜はバリバリと割り切るような・・・

これは包丁の手入れが悪いことが原因ではなく、包丁の刀身の「厚さ」が主な原因です。

刀身が薄い包丁なら、刃先の手入れが多少雑でも硬い野菜を切ることができます。

硬い野菜を切る作業は、刃先の鋭さより、刀身の厚みが影響するんです。

逆に、いくら鋭く砥いだ包丁でも、厚さが3ミリ以上あるような包丁を使えば、切り込みは一瞬軽いですが、途中からバリバリと割り切る感覚になります。

たとえば、刀身が厚い「斧(オノ)」の先端だけをいくら鋭く砥いだとしても、硬い野菜を割らずに切ることはできないわけです。




8:宗近で切ったもの

人参の写真のすぐ下にある説明書きには「奥が宗近で切ったもの」とありました。

一般の人はいきなり「宗近」と書かれても意味がわかりませんよね。

記事のタイトルには「高級和包丁」とあるわけですから「奥が高級和包丁で切ったもの」と書いた方がわかりやすいはずです。

あえて「宗近」と書いたということは、このメーカーに対する「思い」が強いということです。

上に紹介した記事は「中将タカノリ」というライターさんが書いたものなので、このライターさんは、もしかしたら宗近というメーカーに近い人かもしれません。



9:シナリオのようなインタビュー記事

紹介した記事に登場する人物は、「ツイッター管理人」のアキポさんと、「インタビュアー&ライター」の中将タカノリさんですが、記事の出来は良くないです。

アキポさんも中将さんも、予め用意されたシナリオを読んでいるような印象を受けました。理由は、この記事を書いたゴーストライターがいて、そのゴーストライターの知恵の度合いがその程度だったことと、アキポさんと中将さんに、シナリオを訂正できるほどの包丁の知識やカメラの知識がなかったからかもしれません。

アキポさんと中将さんには、たとえば「インタビューの内容はアキポさん本人の言葉なのか」「写真を撮ったのはアキポさんなのか」「人参は同じ切り方をしたのか」「普段どうやって包丁を砥いでいるのか」「なぜ高級和包丁ではなく宗近という名前を出すのか」など、いろいろな質問をしたいと感じました。



細かいところはまだあるんですが、だいたい以上です。



ここで教訓があります。

高級和包丁の切れ味に感動し、写真を撮ってツイートしたアキポさんでしたが、記事にあるように、「洋包丁は20年間自分が砥いできたものなので、切れ味は悪くなる一方でした」と言っています。


いくら素材が良くても砥がなければ切れ味は落ちますから、今回買った高級和包丁も、数か月後には切れ味が悪くなっていき、やがてツイートした写真の右側の人参のような切れ味になってしまうわけです。


今後プロの砥ぎ師に砥ぎ直しをお願いすることになるなら、切れ味を維持するためにかなりのコストがかかります。


アキポさんに必要なのは、高級和包丁ではなく、包丁を砥ぐ技術だったということです。


そして、砥ぐ技術を手に入れれば、維持が楽なステンレスの包丁でもOKということになるかもしれません。


このあたりの話は、「高収入の男と結婚しても、結局幸せになれなかった」「必要なのは高収入の夫ではなく、幸せになる力だった」「幸せになる力があれば誰と結婚してもよかったことに気付いた」という話に通じるところがあると思いませんか?


アキポさんが写真をアップしたいきさつ、中将さんがそれを取材したいきさつ、そして包丁メーカーの思い・・・誰がなにを考えて一連の出来事が起こったか・・・マスターはマスターなりの解釈がありますが、みなさんも考えてみてください。

情報は、多くの場合、その情報を流すことで利益を得る人が流している可能性が高いです。今回はどうなんでしょうか・・・複雑な背景があるように感じました。



そしてマスターからのメッセージです。

「高級和包丁は切れ味がいい」という言葉を鵜呑みにしないでください。

たしかに、しっかり砥げば切れ味はいいです。

しかし他の包丁も、しっかり砥げば切れ味はいいんです。

そして包丁の評価は、切れ味だけでできるものではありません。

手入れの手間や包丁の価格を考えた場合、コスパはステンレス素材の洋包丁が圧倒的に上です。

ではなぜ、世間では和包丁と洋包丁を比較して「和包丁は良く切れる」という宣伝が多いのか、わかりますか?

それは、和包丁には「切れ味」しかセールスポイントがないからなんです。

ステンレス素材の洋包丁は、長所がたくさんあるので、ひとことでは言えません。

たとえば、ガラケーとスマホが混在していたとき、スマホの性能が上がるにつれ、ガラケーは「小ささ」しかメリットがなくなってしまいましたが、そのころの状況と似ているかもしれません。

携帯電話は「携帯性」が最優先されるものかもしれません。

しかし携帯性で劣るスマホでも、ガラケーより便利な機能があれば、大衆から支持され社会の主流になるわけです。

同様に、包丁は「切れ味」が最優先される道具かもしれません。

しかし切れ味で劣るステンレス製の洋包丁であっても、一本鋼の和包丁より便利な機能があれば、大衆から支持され社会の主流になるわけです。





◎マスターは和包丁が嫌いではありません

ここまで書くと、マスターは「アンチ和包丁」かと思うかもしれませんが、マスターは和包丁が嫌いではありません。

和包丁について良く思わないことがあるとしたら、「誤解させる情報を流したり、充分な実験をせず、思い込みで和包丁を売ろうとする心を持った人」に対する気持ちかもしれません。

高級和包丁はけっこう高い買い物ですから、売る側も、相手のことを考え、愛を込めて売ってほしい気持ちはあります。

たとえば、「健康食品を売っている人が自社製品を食べていない」とか、「ダイエット機器を売っている人がその商品を使っていない」とかありますが、「和包丁を売っている人が和包丁を使っていない」ということもよくあるんです。

そういう人が笑顔で和包丁をオススメするのは、愛に反していると思います。

マスターは、家庭で使う包丁について愛をベースにして考えたとき、「ステンレス製のシェフナイフ」がいいと思っています。

もちろん子供たちにも使わせたい包丁です。

だからと言って和包丁が嫌いなわけではありません。
嫌いではない、というよりも、「興味がない」と言った方が適切かもしれません。


話は少しズレますが、みなさんの仕事は、愛がベースでしょうか。
愛をそそぐために仕事をしていますか?
みなさんの仕事で喜ぶ人がいて、あなたも嬉しいでしょうか。
そのあたりを考え、愛だと思う仕事を胸を張ってやってください。




◎包丁選びのポイント

ではここで、切れ味以外の包丁選びのポイントを簡単に書きます。

以下を参考に包丁選びを考えてみてください。


・刀身の形
「シェフナイフ・牛刀」と呼ばれる形がいいと思います。


・ハンドル
衛生面を考えるとオールステンレスか口金付きのハンドルならOKです。
樹脂製のハンドルは硬さがいろいろあるのでお好みで。


・値段
同じ素材を使った包丁なら、安い方がいいと思います。
高価なほど良い包丁とは限りませんが、高価なほど良い包丁の傾向はあります。


・刃渡り
180㎜~200㎜がオススメです。


・メンテナンスのしやすさ
ステンレス製の刀身がオススメです。


・重さ
160グラム前後がいいと思います。


・重心位置
重心は手前の方が楽です。
高価な洋包丁はハンドルが重いので重心が手前の傾向です。


・砥ぎやすさ
シームレス砥ぎができる厚さ1.8ミリ以下の包丁だと、砥ぎ作業は1回1分です。


ということで、以下終盤に入りましょう。

マスターが撮った写真です。

左が「使い古した和包丁(一本鋼)」、右が「よく砥いだ洋包丁(ステンレス)」で切った人参です。
これはアキポさんの写真と逆のパターンです。


アキポさんが撮ったものと同じ写真を意識して、背景を暗くして照明を当てて撮りました。
(友達に送るために気軽に撮るには意外と難しいです)。

差がわかりやすいように、和包丁ではあえて断面が荒れる「垂直切り」、洋包丁ではあえて断面にツヤが出る「スライド切り」をしています。

繰り返しますが、写真左が「使い古した一本鋼の和包丁」 右が「よく砥いだステンレスの洋包丁」で切ったものです。

左は使い古した和包丁、右はよく砥いだステンレスで切ったもの


違いは一目瞭然ですが、みなさんにお伝えしたいことは、決して「和包丁の切れ味が悪い」ということではなく、「素材がどうであれ、砥げば切れ味が良くなるし、砥がなければ切れ味は悪くなる」ということです。

ですから、両方とも洋包丁で比較してもいいですし、両方とも和包丁で比較してもかまいません。



また、ここが大切なところですが、上記「2」にも書いたように、包丁は、「砥ぎ方」だけでなく、「切り方」で断面のツヤが変わります。

念のためもう一度書くと、食材を垂直に切れば断面が荒れ、刃渡りを多く使えば滑らかになります。

実際マスターの実験でも、和包丁と洋包丁を同じ切り方にして使うと、差はほとんどありません。

また、使い古した和包丁でスライド切り、よく砥いだ洋包丁で垂直切りをした場合、断面の荒れ方は「逆転」しました。

使い古しの包丁でも、刃渡りを長く使えば断面のツヤは出せるわけです。

つまり、「切れ味がいいか悪いか(刃の状態がどうか)」も大切ですが、「どういう切り方をしたか(刃渡りを長く使ったかどうか)」ということも大切なんです。

ですから、高級和包丁で「垂直切り(表面が荒れる切り方)」をし、使い古しの洋包丁で「スライド切り(ツヤが出る切り方)」をした場合、アキポさんの写真にはほとんど差は出ず、結果が逆転してしまう可能性もないとは言えないわけです。


ここまでの話で、「切れ味」に影響するのは、主に「砥ぎの良し悪し」であること、そして「断面のツヤ」に影響するのは、主に「切り方」ということがわかったと思います。
食材の断面にツヤを出すには、よく砥いだ包丁とスライド切りの組み合わせが必要なわけです。


以上のことからわかるのは、食材の断面にツヤが出ない場合、「切れ味のせいにしてしまう前に、切り方の工夫をしたかどうか」、つまり「包丁のせいにしてしまう前に、自分は刃渡りを長く使って切ったか」と考える必要があるということです。

さらに「人生」という視点で視野を広げれば、「外側のせいにする前に、自分に工夫できることをやりつくしたか」「相手のせいにする前に、自分に落ち度はなかったか」と考えることもでき、人参の断面ひとつが、人生にまつわる多くのことを気付かせてくれるとわかります(マスターにとって料理のおもしろさは、まさにここにあります)。


ここまで包丁の話がメインでしたが、以下、人生系の話を少しだけ書きますね。



◎付き合う人の選び方・仕事の選び方・生き方の選び方


男性が自分を売り込むときは、たとえ相手を誤解させる内容でも、自分に有利な情報を流します。


また、企業は、自分に都合のいい人材を集めるためなら、誤解させる内容を流して社員を募集します。


そして生き方に迷っている人は、目先の安心や利益を得るために、企業が流すヘンな情報を信じてしまうことがあります。


相手を意図的に誤解させる手法は、婚活、就活、様々な趣味の世界などで、日常的に行われています。


今回は包丁の話でしたが、男選び、仕事選び、生き方・・・どのジャンルにも「本質」があり、愛に近づくには、それをどこまで見極めることができるかが大切です。


・・・


ここからは気分を変えて、コーヒーの実験の様子です。

マスターの店には複数のスタッフがいるので様々な意見が出て、どんな実験でもやりやすい環境があります。

写真は、外出したスタッフが買ってきたコーヒーと、マスターの店で売っているメインのコーヒーの味比べです。

スタッフにはテーブルについてもらい、マスターがドリップし、他3人にはどっちがどっちなのかわからないようにします。

以下の写真のように、カップは温めておき、みんなで飲んで、香りや味について話します。

こういう実験から得られるデータはいろいろあり、時々やっています。


よく温めたサーバーに2種類の豆をドリップして・・・
このときスタッフたちは違う場所で待機しています

味の実験


みんなに出します。
舌をリセットするための水も出します。

3人で味見


カップが冷えないように、お湯をはったバットに入れておきます

実験の様子


この実験で主にわかったのは、全員がマスターの店のコーヒーの方がおいしいと思ったことと、マスターの店のコーヒーは、冷めてからもおいしいということでした。
ホットコーヒーは、ついうっかり話に夢中になると冷めてしまいますが、マスターの店のコーヒーは、冷めてからも比較的おいしく飲むことができました。


この実験以外にも、ミルクを入れたらどうか、砂糖を入れたらどうか、ミルクと砂糖を入れたらどうか、牛乳と植物性ミルクではどうかなど、いろいろな実験ができます。


マスターを含めた4人の意見が一致する場合は、それがほとんど本質だと考えていいですが、さらに実験を繰り返すことで精度を上げていきます。


特にスタッフたちには、「ヘンなオバサン」にならないように、本質について念入りに説明します。


コーヒーや水についての話だけでなく、包丁や掃除の仕方、仕事の考え方などの本質についても話します。


マスターは20年近くコーヒーの実験をしてきました。
マスターなりのこだわりはたくさんあり、実験項目は数百になったと思います。
そこである程度の結論として、「こだわらないというこだわり」にたどりつきました(「気を使わないという気使い」と似た感じです)。
コーヒーのおいしさを決める条件はいろいろありますが、マスターにとっては、明るい気持ちで、飲みたいときに飲むコーヒーが「おいしいコーヒー」です。
現在マスターは、インスタントからレギュラー、缶コーヒー、ペットボトルコーヒー、なんでもおいしく飲めます。


※コーヒーに興味がある人は「コーヒー」マガジンをどうぞ。
第一話はここ


では、今回は以上です。
包丁を使う仕事がら、話は長くなりましたが、料理をする人には参考になったかと思います。
参考までに、マスターの弟子のサイトも見てみてください。
このページの紫玉ねぎの薄切り動画は、マスターの包丁で切っています。

「結Yui」
https://www.katabayui.com/


最後までありがとうございました。

・・・

投稿タイトル一覧は以下です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?