虚像が膨らむ世界で ―食品偽装問題―

(読了目安7分)

以前「食品偽装」が日本中で話題になったことがありました。
世の中のホテルやレストランなど、食品偽装をしているとわかった事業所は、当時400施設にまで及んだそうです。
大きな会社は記者会見を開き、社長がお詫びする場面が多く見られました。
それより以前には米の偽装、肉の偽装などもありました。
そしてマスターが毎日飲むコーヒーの業界も、偽装問題が絶えません。


食品の偽装をした事業所が400ということは、偽装品目は数千に及んでいます。
いまだに「あれは偽装ではなく誤表示です」と言い張る事業所もあるみたいですが、400の事例は例外なく、安価なものを高価なものとして表示しているようでした。
単なる「表示の誤り」なら、高価なものを安価で売ってしまうこともありえますから、誤表示の確率は半々になるはずです。
数千の品目で、例外なく安価なものを高価なものとして表示しているということは、どんなに甘く見積もっても、半数の事業所は偽装を意図的にやっているということです。



◎ブラックタイガーと車エビの話


「ブラックタイガー(安いエビ)」を「車エビです(高価なエビ)」と偽って売った店の中には、偽装発覚後に、「味はほとんど変わらないです」と開き直った説明をした業者もいたみたいですが、そういう問題じゃないですよね。

ちなみに販売業者が「車エビ」を売るときは、「ブラックタイガーより全然おいしい」と宣伝して売ります。
逆に「ブラックタイガー」を売るときは、「車エビとほぼ同じ味」と宣伝して売ります。
・・・不思議ですね。
全部の業者がそんなことをするわけではないと思いますが、売りたいものがあるときは、いろいろと理由をつけて売ろうとするのが販売業者です。
自分が使う宣伝文句が矛盾しているかどうかなど関係なく、売る側の都合で「こっちの方がおいしい」とか、「ほとんど同じです」と言われるわけです。


みなさんが人間に食べられるエビの立場だったらどうでしょうか。
自分の命をお金儲けの道具にされたくないですよね。
人間の利害に巻き込まれて、おいしいとかまずいとか言われるのではなく、お腹が空いてる人に「おいしい!」と言われて食べてもらいたいはずです。
そう考えると、食品偽装は、人のために死んでいく生命に対する侮辱でもあるんです。


お金で手に入るのは、「愛」ではなく、「愛のようなもの」ですし、しかも「短時間」です。
それを知らない人たち、または知っていてもやめらられない人たちが、誇りを捨てて目先の利益に走ってしまう、それが食品偽装問題です。


一流デパートや一流ホテルと呼ばれる事業所でも偽装問題が相次いでいるということは、一流業界の人たちも、お金で愛が買えると思っているということです。
本当に一流の人は愛はお金で手に入らないことを知っていますから、そんなことはしないはずですよね。
お金で愛が手に入ると思っているから、愛が手に入らないんです。
業界の「一流」はどうでもいいですから、みなさんは、人間として一流を目指してください。


今後、飲食業界の大変革があるにしても、お金で愛が手に入ると思っている人がいる限り、偽装はなくなりません。
大切なことは、食べる側が、食べ物に頼って幸せになろうという気持ちをなくすことです。
食べる側が、「おいしいものを食べる」という考えではなく、「おいしくものを食べる」という考え方を身につければ、食品偽装はなくなります。
食品に頼るのではなく、冷たいおにぎりひとつでも、おいしく感じる心の感度を身につけることができればいいわけです。



◎高級ホテルの一流レストラン


ちょっと想像してみましょう。
わかりやすくするため「極端」な表現ではありますが、本質的な内容を書いてみます。


あなたはお金持ちの男性から誘われ、高級ホテルでディナーを楽しんでいる・・・そんな場面です。


あなたの周りで、なにが起こっているんでしょうか。
あくまでもマスターの創作ですが、以下太文字を想像してみてください。
大きく間違えた内容ではないと思います。


そのホテルは、営利目的の出版社やテレビ業界が作り上げた情報によって、ヨーロッパの伝統を受け継いだ一流ホテルということになっています。
有名芸能人や俳優がオススメする高級ホテルでもあり、場所はその中にある一流レストランです。
出てくる料理はどれも華やかな名前がつけられていて、とてもおいしそうに見えますが、実際は食品偽装されたもので、料理長も認識しています。


たとえばロコ貝をアワビとして売り、トビウオの卵はレッドキャビア、ブラックタイガーは車エビといった調子ですが、2人はそれに気付かず、「やっぱり違うよね、最高!」と言いながら食べています。

水は水道水を浄水しただけのものですが、「クリスタルアクア」と呼ばれ一杯600円で売られていました。
あなたは「こんなおいしい水、飲んだことない」と感動します。


ワインも偽装されたものでしたが、あなたの連れの男性は「やっぱりワインがいいと酔いの質が違うよね」と、わけのわからないことを言い、あなたはその男性の言葉に「オトナね」と惹かれていきます。
裏事情を知っている店のスタッフたちは、そんなあなたたちを笑顔で見つめています。


レストランの調度品は、「全て本場ヨーロッパ直輸入のアンティーク」と宣伝されていますが、実はアジアで作られた新しいものでした。
店舗内の照明が暗いのは、ムードの演出ではなく、電気代を節約し、調度品や料理のアラが見えないようにするための工夫でした。


レストランの料理長は50代の男性です。
仕事の後に予定している愛人との不倫デートのことばかり考え、自宅に帰れば妻との口論が日常です。
不倫発覚後は、妻と娘から「汚いオヤジ」とののしられ、家には居場所がないお父さんでした。
お金がないと愛人を囲えないため、自分の給料が上がることばかり考え、食材を横流ししてお小遣いを稼いでいます。


さて、そんなレストランの人間模様を知らぬまま、あなたと連れの男性は、楽しく食事を続けています。
連れの男性は、物事の表面を重要視するタイプで、本質を見抜く力がありませんから、とりあえずあなたの身体を目当てにし、ムリして大金を使っているような男性です。
結婚しても夢や理想ばかり口にして、愛をそそぐ力はないと予想される男性でした。


あなたは、各々が自分の目先の利益だけを考える人たちが作り上げた世界の中で、偽りの笑顔に囲まれてその時間を過ごしているわけです・・・


連れの男性は、物事の本質を知らず、あなたの身体が目当てでお金を使う人です。
メディアの人間は、風俗に通うお金が欲しい人たちです。
料理長は、愛人と別れたくなくて横流しの利益の計算ばかりしている人です。
あなたが着ている高価な服も化粧品も、その「価値」はメディアが作り上げたものです。


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以上です。
人生の目的は、ホテルでのディナーじゃありませんよね。
おにぎり一個をみんなで楽しく食べる方が、よっぽど愛に近い行為です。
マスターはいつも、「人生は一回だけの本番です」と書いています。
あなたの貴重な時間を、虚像が膨らむ世界で浪費するのはもったいないと思います。
「長く愛されたい・パートナーと幸せに暮らしたい」と、心から願う女性がこんなことをやっても、短い恋愛を繰り返すか、結婚しても夫の浮気や酒グセの悪さに悩まされるだけです。



◎健康食品や高級食材より大切なもの


食品に頼って幸せになろうという気持ちの典型的な例が、オーガニックや健康食品、または高級食材です。
人気の食材には、必ず偽装が伴うものが出てきます。
心の空白や不安を食品で補おうとする気持ちが、食品偽装に拍車をかけるわけです。
話は少し変わりますが、たとえば子どもに対して「身体に悪いからあれはダメ」「これは身体にいいから食べなさい」と言っている親が、もっと身体に悪いお酒を飲み、夫婦ゲンカをしているなんていうことは普通にあります。
また、健康食品を売る会社は、「お子さんの健康のために」と宣伝するかもしれません。
しかしそれを買う親は、「子どもを怒鳴ってプレッシャーをかけたりしない」など、健康食品以前にできることを全てやりつくしているんでしょうか・・・
子どもは、親のだらしなさを健康食品で補ってほしいなんて思っていないんです。
また、親は親でストレスから解放されず、「たまにはおいしいものを食べに行こう」と高級レストランでストレスを解消しようとしますが、それが偽装された食材だとわかると、怒るわけです。
これらはみんな、「自分の力」ではなく、「食べ物」に頼って幸せになろうとすることが原因です。
マスターは、親が仲良く過ごし、子どもが安心できる環境を作ることの方が、親にとっても、子どもにとっても、健康食品や高級食材の何倍も大切なことだと思います。

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