いいなこんな生活

(読了目安7分)

「いいなこんな生活」がキーワードの、少し長めの投稿です。


だいぶ前のことですが、マスターの店に「シンガーソングライター」の女性A子さんが来てくれたときの話です。

一曲歌ってくれて、薪割りに付き合ってくれて、その後マスターの子どもたちとおしゃべりをしていたとき、マスターは厨房から出て、薪ストーブで焼いておいた「さつまいも」をA子さんに投げました。

A子さんがそのさつまいもをキャッチしました。


厨房に戻ろうとして歩きはじめとき、後ろから声が聞こえました。



「いいなこんな生活~」



シンガーソングライターと言えば、日々「愛とはなにか」と自問し、自分なりの愛を発信している人たちです。
そんなシンガーソングライターが「いいな」と言うマスターの生活・・・いったいどんな生活なんでしょうか・・・


・・・


当日はマスターの誕生日だったんですが、朝からとてもいい一日でした。
まず寝起きに息子が「お父さん誕生日おめでとう」とひとことくれ、起きてきた娘が家族を代表して、「おめでとう」とハートの箱に入ったチョコレートをくれました。


当日は日曜日だったこともあり、たくさんの常連さんが来店し、忙しい日中を過ごしました。


数人の常連さんが来店してくれた後、常連のプロライダー率いるツーリンググループが10人以上で来てくれ、マスターは彼らの食事を忙しく作りました。


他の常連さんが連れてきたのがA子さんで、彼らとは少しだけゆっくりする時間がとれました。


A子さんはマスターの店の常連さんが初めて連れてきてくれたんですが、サービスでお茶を出したところ、「ではお礼に」と歌を一曲歌ってくれたんです。


以下がそのときの写真です。

デッキの上でミニライブ

その日A子さんは時間に余裕があったらしく、薪割りにも付き合ってくれ、学校が休みで退屈している子どもたちとも遊んでくれました。

そしてマスターが投げた焼きいもを食べながらおしゃべりです。

この写真のちょっと前に、「いいなこんな生活」という言葉が彼女の口から出たんです。


場所は自分の店。

穏やかに晴れた日。

ウッドデッキには好意的な常連さんがいて、優しい妻のそばで子どもがはしゃぎ、薪ストーブの火が暖かく、その中には焼いもが入っています。
常連さんたちは各々薪割りをやり、子どもたちとおしゃべりをしながら焼いもを食べる・・・
これはマスターが結婚前に夢見ていた風景でした。

そして、そんな風景を見て、シンガーソングライターのA子さんは「いいなこんな生活」と言ったんだと思います。


さて、ここから大切なことです。

一度深呼吸して気持ちを整えてください。

「いいなこんな生活」という言葉を聞いたとき、マスターはなんとも温かい気持ちになりました。

「シンガーソングライター」という仕事は、言ってみれば、日々「愛」について考える仕事です。
そんな「愛」のプロから、たとえ一瞬でも、「いいな」と思われる生活を送れていることがマスターの誇りになったんだと思います。
きっとそこに至るこれまでの努力を褒めてもらえたような気がしたのかもしれません。


だけど・・・A子さんが「いいな」と思う生活をしているマスターが、過去にどんな努力をしてきたか、そしてどんな考え方を実践して生きてきたか、彼女は知らないんです。


彼女もきっとお金では買えないもの、つまり「愛」を探して人生を歩いているんだと思います。
しかし「いいなこんな生活」と言っているだけでは、欲しい生活は手に入りませんよね。
「努力」を経由して手に入れないと、喜びを感じることができないからです。


たとえば「いいなこんな生活」と言う彼女に対してマスターが「そう?それじゃこの生活まるごとあげるよ」と、マスターと仕事を入れ替わったとします・・・

・・・どうでしょう。

A子さんが喜ぶとは思えませんよね。

「生活の変化に圧倒される」

「心の準備ができていない」

「土地と建物をタダでもらえるなんておかしい」と不信になる

「客席40の店を自分一人で維持するスキルがあるか不安」

「信頼できる協力者(パートナー)がいない」

などの理由から、素直には喜べないわけです。

※もちろん「他にやりたいことがある」という理由もあると思いますが


マスターにとっては、努力をして作り上げた環境ですから、今の生活が幸せです。

しかし、ただいきなり与えられるだけでなにも努力をしていないと、それが幸せだとわかりません。

「幸せをくれるなら努力をする」というのはあり得ないわけです。
ですから、努力はどうしても必要です。

逆に言えば、今努力をしているなら、その努力は将来必ずあなたを幸せにします。
他人が幸せにしてくれるわけではなく、あなたの努力があなたを幸せにしてくれるんです。


愛を探し続ける「シンガーソングライター」から出た「いいなこんな生活」という言葉は、まるで「愛はここにある」と言われたようで、誕生日のマスターにとって最高のプレゼントでした。


◎幸せはお金では買えない(お金がなくても幸せになれる)

「幸せな生活」というのは、たとえ大金を手に入れても変わらない生活です。

言い方を変えると、「お金の力では変えられない生活」です。

人生の目的は、お金を貯めることではなく、「いくらお金があってもこの生活を変えたくない」と思える環境を自分で手に入れることなんです。

「大金があれば今の生活を変えたい」と必死にお金を貯めている人にとって、「いくらお金があっても変えたくない生活」をしている人は、「世の中の誰よりも豊かな人」と言うこともできるわけです。


自分で自分の機嫌をとれない人ほど、自分個人のためにお金を使おうとしますが、幸せはお金では手に入りませんし、ましてお酒やギャンブルなどで逃げ回っていたら、永遠に手に入りません。


「たとえ大金を手に入れても今の生活を変えるつもりはありません」・・・本気でこう言える人が増えたらどんなに人類は愛に近づくか、想像してみてください。



◎「いいなこんな生活」

マスターは東京に住んでいたとき、大学に2年間通ったことがあります(つまり中退です)。

以前、大学時代の同級生がマスターの店に何度か遊びに来て、「お前が一番楽しそうに見える」と言ってくれたとき、マスターはその言葉を信じることができました。

数百人の常連さんたちも、「ここに来ると癒される・こんな生活ができたらなあ」と、数時間の道のりを経て来店してくれます。

もちろんマスターは嬉しいです。

人間は、他人から「いいなこんな生活」と言われるために生きているわけではありませんが、愛や幸せとはなにか、真剣に模索して地道に実行していくと、自ずと人が集まる場所ができます。
マスターの店の売上げは、決して良いとは言えません。
以前住んでいた東京に出れば数倍の売上げになることも分かっているんですが、マスターは今の生活を変えたくないんです。


マスターの店は、今の経営体制で15年ほど営業を続けていて、創業当時から数えればもう20年以上になります。

新規オープンの店は5年続かないことがほとんどですが、なぜマスターの店が20年続いているのか・・・

ちまたでは、「立地条件がいいからだ」という意見もあるようです。

しかし、そう言う人にマスターの店を丸ごとプレゼントしたら、店を維持できるかどうかは疑問です。
たとえ売り上げが伸びても、アルバイトを雇うことになり、アルバイト同士のケンカや不正もあるかもしれません。

お金目当てで仕事をしている人は、忙しくなれば気持ちが荒れはじめ、口論をするかもしれません。
その口論がストレスになり、内部不和や、飲酒が始まり、盛り付けの乱れや会計間違い、皿を割る、トイレ掃除が甘いなどのミスを連発するかもしれません。
そのミスが店の評判を落として売上げが減れば、対策として経費削減に走り、悪循環を生み出すかもしれません。

「立地条件がいいレストランが長く続く」とも言えないわけです。

経営を20年続けるには、「立地条件」だけでは語れないものがあるとマスターは思っています。

また、仮に何らかの理由でマスターの店が潰れても、マスターの幸せが変わることはありません。

マスターにとって「売上げがいいから幸せ、売上げが悪いから不幸」、ということではないからです。

売上げが良くても内情が悲惨な店はよくあり、それは飲食店で仕事をしたことがある人の一部は、きっと体験していると思います。



◎終わりに

マスターは東京で33年間、人の心や社会の仕組みを勉強した結果、南伊豆に引っ越し、20年ほどは自分が理想とする生活を楽しんでいます(未来のことはわかりませんが)。

結果的に、A子さんや友達からは、「いいなこんな生活・お前が一番楽しそう」と言われる生活でした。

みなさんにも「理想の生活」があると思いますが、「いいなこんな生活」と言われることを目標にして生きることがないようにしてください。
理想を追い、努力して手に入れた生活は、誰がどう評価しようとあなたを幸せにします。

まず「自分がどうしたいか」ということにポイントを絞り実践し、その結果「いいなこんな生活」と言われたとき「そうでしょ」と胸を張れればいいんです。

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