包丁の使い方 自分の使い方

(読了目安6分)

「自分の使い方」を練習していくと、そこには別世界が待っています、という話です。

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体験学習希望者」としてマスターの店に滞在するスタッフの中には、カフェ経営のノウハウだけでなく、「車の運転」の練習をする人もいます。
特に車の運転については、練習初期と比較してかなり上達する人がほとんどです。
ほんの1週間で車に対する意識も変わり、本人もきっと充実感を味わっていると思います。

スタッフが充実感を得られるようになれたのは、「練習」という少しの苦労に耐える努力や勇気を惜しまなかったからです。
もちろんまだまだ練習が必要ですが、これまで車に乗せてもらうだけだったスタッフは、これからは「乗せる側」という大人の世界を体験することができるようになります。
努力や勇気の結果として、社会貢献できる人に成長したわけです。



◎包丁の使い方 自分の使い方


車の運転に限らず、たとえば

「焼きたてパンをつぶさず均等に切ってみる」

「大根を薄く切ってみる」

「トマトをキレイに切ってみる」

などの作業をスタッフにやってもらうと、初めから業務レベルでできる人は一人もいません。


「もっとキレイに切ってみよう!」とマスターが言っても、「キレイ」の定義がわからなかったり、わかったとしても、どうやったらキレイに切れるかわからないため、それ以上のことができないんです。
理由は、それまでに包丁の使い方について「意識的な練習」をしていないからです。


しかし・・・


様々なコツを教えてからもう一度やってもらうと、どんどん上達していきます。
以前、2週間滞在したスタッフは、はじめは大根の千切りなんて、ぎこちない切り方で、太さもまちまちで時間もかかっていましたが、練習後は、トントントンとリズミカルな動きで均一に切れるようになりました。


マスター 「うちに来る前と比べて、野菜を切る楽しさがわかった?」

スタッフ 「いや~全然違いますね~、楽しいです!」



こんな感じです。


彼女は練習を始めて1週間で、「野菜を切る」という行為が楽しくなったんです。


「野菜を切る行為が楽しくなる」・・・これには重要な意味が含まれているんです。
包丁の使い方を練習し、野菜を切るのが楽しくなると、「もっとやってみよう・もっと練習しよう」と心から思えてきます。
野菜を切る作業が楽しいわけですから、料理そのものが楽しくなります。
そして、料理が楽しいと積極的に作るようになりますから、料理をすることが「娯楽」になり、ストレスが溜まりません。
また、「楽しく作れる」ということは、料理に愛をこめていることでもあります。
「人は心で食べる」という話をこれまでにしてきたように、楽しんで作っているあなたが、笑顔で出した料理がおいしくないはずがありません。
つまり、野菜を楽しく切ることは「愛」なんです。


愛の発信の仕方は無数にありますが、包丁の使い方の練習も、愛を発信するきっかけになるわけです。
さらに、より高度な技術を身につけることで、今までに気付かなかった「他人の技術」もわかるようになります。


他人が高度な技術を使っていることがわかると、その人を尊敬できるようになり、高度な技術がない人には、必要に応じて自分の技術を教えることができます。
「教える」という行為は、たとえあなたの技術そのものは上がらないにしても、相手が上達すれば人類の平均的な知恵が上がるわけですから、人類レベルで考えればやはり「愛」なんです。
また、たとえば男性の「オレは料理が上手だぜ」という言葉に惑わされることもなくなり、本質が見えてきます。


以前も掲載した「大根の薄切り」の写真をもう一度掲載しますね。
「切るのが楽しい」と言っていたスタッフは、写真左側の薄切りのレベルになりました。

左がスタッフ・右がマスター




ここでクイズです。
下の大根の薄切りは、同じ包丁で切ったものです。
それぞれ断面の表情が違いますが、どうやって切ったでしょうか。
みなさんもよかったら再現してみてください。
ちまたの料理教室ではやりませんが、これは包丁の使い方の基礎です。

右奥は、線が入っているが断面にかなりツヤがある
真ん中は、断面にツヤがある
左手前は、断面がザラザラ

3枚とも断面の表情が違います


答え:
右奥:包丁を往復させながら切る(断面にツヤはありますが往復した数の分だけ横線が入ります)
中央:切っ先からアゴまでの刃渡りの全部を使って往復させず切る(断面がきれいです)
左手前:包丁を前後させず垂直に切る(繊維を引き裂くので断面がザラザラになります)


※おまけのクイズ
この大根の断面には、ツヤツヤとザラザラが混在しています。
どうやって切ったか考えてみてください。

半分ツヤツヤ半分ザラザラ



上の写真のように、断面の模様をコントロールできるということは、包丁の使い方を理解し、食材に合わせて包丁の動きをコントロールできるということです。
「包丁の使い方」を練習し、実践できるようになるほど、食材との会話ができるようになり、キッチンに立つことが楽しくなるんです。


ということは・・・人生を楽しくするにはどうすればいいんでしょうか・・・


そうです、「自分の使い方」を練習し、実践すればいいんです。


上記のスタッフは、30年以上の人生で、初めて「包丁の使い方」を練習したんですが、多くの人が、それまでに包丁の使い方の練習をやっていないだけで、やればちゃんとできるようになります。


「自分の使い方」も同様です。
ほとんどの人が、それまでに「自分の使い方」の練習をやっていないだけで、やればちゃんとできるようになります。


包丁をどう使えばどうなるか学ぶと、料理が楽しくなるように、自分をどう使えばどうなるか学ぶと、生きることが楽しくなります。


◎まとめ

その道の先人は大根の薄切りの断面を見れば、包丁がどう動いたかわかります。
そして、作りたい断面に応じて包丁をどう使えばいいかわかります。


同じように、人生の先人は、「その人」を見れば、その人がどう生きてきたかわかります。
そして、その人が望む人生にするにはなにをすればいいかわかります。


ですから、他人からの助言がもらえる環境なら、どんなことでもたくさんもらってください。
ひとつひとつの助言があなたにとって「宝物」です。
助言を聞こうとすると、それまでの自分を変えることになりますから、「苦しい作業」と思うことはあるはずです。
しかし、包丁の使い方の技術が上がれば切ることが楽しくなるのと同じように、自分の使い方の技術が上がれば生きることが楽しくなります。


包丁の使い方を練習していくと、そこには別世界が待っています。
自分の使い方を練習していくと、そこには別世界が待っています。


せっかく切るなら、楽しく美しく切りたいですよね。
せっかく生きるなら、楽しく美しく生きてください。


※料理については「料理に愛を」マガジンを参考にしてください

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