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岩手で母娘3人旅

祖母のお見舞いに、2ヶ月に1回ペースで岩手を訪れている。

最近は、ついでにと観光を楽しむようになった。

今回は、そんな旅の記録。


1日目は念願の『餅御膳』

もち文化が根付く一関で、「餅御膳」というものが食べられるらしい。

と知って、ずっと食べてみたかった。

というよりも、観光パンフレットに掲載されているカラフルな『餅御膳』を見たい!のほうが正しい。

実際、目の前に運ばれてきた餅御膳は期待を裏切らないカラフルさ。

蔵元レストラン せきのいち

「えび・じゅうね・ごま・くるみ・おろし・あんこ・納豆・ずんだ(左上から時計回り)」の8種類。真ん中は箸休めの甘酢大根。

どれも定番の餅ではあるけど、普段8種類もの餅が一気に目の前に並ぶことはない。

お雑煮もついていたから、餅の数で言えば10個。

お正月に、欲張って食べたとしても3個程度だから、もう、お腹も心も満足だ。


この餅御膳のどれかひとつには、萩の小枝が隠されている。

最初に食べた餅に入っていれば1日目に幸運が、2個目なら2日目に幸運が訪れる…ということで、わたしは最初に食べたじゅうねに入っていた。

幸せな旅の始まりだ!


このあとは祖母に会いに行った。

祖母は、わたしたちが遊びに行くとよく草餅を作ってくれた。

餅御膳の餅は真っ白できれいな餅だったけど、祖母が作ってくれた緑色の草餅も、今となっては懐かしい。

あの、青々とした香り。

もう長いこと、祖母が作る草餅を食べていない。


祖母が高齢になって料理をしなくなって、認知症が進んでグループホームに入って、大好きだったけどもう食べられないものがいくつかある。

祖母が作る草餅。がんづき(東北の蒸しパン)。紫蘇ジュース。

継承していかなければ失われていく味ってあるよなぁ。と思う。


そう考えると、お雑煮とずんだの作り方は、母から教わっておくべきかもしれない。なんて思ったり‥‥。


会いに行った祖母は、比較的調子が良い様子だった。

母やわたしの名前がちゃんとわかって、姉の名前だけ出てこなかったけど、頻繁に会いに行っていることも記憶にあるようだ。

「しょっちゅう来て大変でしょう」と。


部屋の壁には「白寿」の表彰状が貼られていた。

数えで99歳。

もうすぐ100歳だ。

子供のようにすっかり小さくなって、時折うつらうつらと眠ってしまう祖母だけど、食欲はしっかりあるらしい。

100歳を一緒にお祝いできたらいいなと思う。



祖母と別れて向かったのは大船渡。

今回のメインイベント「三陸鉄道に乗る」ために、めったに行かない岩手の海側へ向かった。


大船渡に近づき辺りが薄暗くなってきたころ、景色の中に浮かび上がってきたのが「奇跡の一本松」。

奇跡の一本松

母は来たことがなかったから、急遽立ち寄ってみることにした。


わたしと姉が6年前に訪れたときよりも、周辺はさらに整備されている。

震災遺構と共存するかたちで。


高くそびえたつ防潮堤に上ってみると、そこに広がるのは穏やかな海。

高田松原

手前には、まだわたしたちの背丈ほどの松が並んでいる。
暗くて見えないけど。

これが将来、大きく育って立派な松林になることを願う。

2日目は三陸鉄道の旅

今回の旅のメインイベントは「三陸鉄道に乗る」こと。

乗り鉄の母の希望。

三陸鉄道切符

大船渡に車を置いて、三陸鉄道の始発である盛駅までBRTバスに乗車。

盛駅から釜石駅までの鉄道旅だ。

三陸鉄道 宝くじ号

2両編成の電車のひとつは、ノスタルジックな雰囲気漂う特別車両。

テーブルつきのボックス席に家族3人で座ると、なんだかワクワクしてくる。

車窓からリアス式海岸が見られるポイントでは、速度を落として走行してくれる。

こうした観光列車ならではのサービスのおかげで、旅の気分を存分に味わうことができた。


釜石に到着してからは、歩いて30分ほどの『魚河岸テラス』へ向かう。

海を見ながらのランチ目当てに。

4店舗あるレストランの内、選んだのはイタリアンレストラン『HAMAYUI』。

魚河岸テラス レストラン『HAMAYUI』のジェノベーゼ

魚市場がそばにあるんだから海鮮丼!にいきたいところでもあったけど、事前調査の口コミが一番良かったイタリアンにした。

いいチョイスだったと思う!


わたしは魚介たっぷりジェノベーゼ。

母はホタテのイタリアン風漬け丼。

ホタテの漬け丼

姉は、店員さんが他のお客さんのオーダーとテレコにしてしまい、パエリアのはずがリゾットになった。

エビ出汁のリゾット

だけど、リゾットも絶品!

濃厚なエビ出汁のスープに、生米から炊いたであろう柔らかすぎないお米が美味しい。

ホタテは半生のぷりぷりホタテで、母のトロトロホタテとは違った味わい。

わたしのジェノベーゼは、ほろほろのホタテとしっかり噛み応えのあるタコがたっぷりだった。


オーダーをテレコにしてしまった店員さんは、申し訳なさそうに、ちょっと恥ずかしそうに手を合わせて謝ってくれて、お詫びにとドリンクをサービスしてくれた。

そこで何気なく頼んだジンジャエールは自家製で、これがまた美味しい!

なにかと手の込んだ料理や飲み物を出してくれるお店に、母も姉も、わたしも大満足だった。



岩手の旅全体を通して思うのは、人の雰囲気がゆっくり、ゆったりしているということ。

仕事だから、サービス業だからという気負いがなく、そのまんまで感じが良い。

心がそのまんま伝わってくるから、ミスがあってもイライラさせられない。

こっちまで良い人になってしまう、そんな空気がただよっていた。



そのあとに立ち寄ったミッフィーカフェでは、ちょっと残念な気分を味わうのだけれど。

ミッフィーカフェ釜石

魚河岸テラスから釜石駅までの中間地点にあるミッフィーカフェは、釜石情報交流センターの一角にある。

復興のシンボルとしてスタートしたそうだけど、想像していた明るくてポップなイメージとはちょっと違って、なんとなくどんよりした雰囲気。


呼び鈴を鳴らしたときと、オーダーした食事を運んでくる以外に店員さんの姿を見ることはなく、食器返却口には片づけられない食器が並んだまま。

そこに置かれた業務用の青いゴミ箱はとても汚れていて、ミッフィーの世界観が崩れ去る。

店内にいるたくさんのミッフィー達が薄汚れているのは仕方ないとして、なんとなく全体的に清潔感がない‥‥。

ミッフィーもがっかりしているかもしれない。

ミッフィーカフェ釜石

だけどまあ、ミッフィーと相席したり。

ミッフィーカフェ釜石

ミッフィーのマシュマロが乗ったカフェラテをいただいたり。

ミッフィーカフェ釜石

40代のわたしと姉と、70代の母のおばさん3人で、かわいいミッフィーを満喫してきた。

「子供のころ、歯医者さんにミッフィーの絵本があったよね」

なんて思い出したりしながら。


そういえば、お店の前のマンホールはミッフィーになっている。

ミッフィーカフェ釜石前のマンホール

やっぱりかわいい!


ミッフィーカフェで小休憩したわたしたちは、15分歩いて釜石駅へ。

再び三陸鉄道に乗って大船渡に戻り、かもめの玉子のお店「かもめテラス」の縁側でソフトクリームを。

かもめテラス

ここは清潔感があってかわいらしいお店になっている。


この日の歩数は3人とも1万2000歩くらい。

ヘトヘトになった体にひんやりとしたアイスが染みわたる。

車で一関へ戻るための英気を養った。




翌日は、祖父の眠るお墓へお墓参りをし、祖母のところに顔を出して茨城への帰路についた。


普段アクティブに動くほうじゃないから、旅行に行くと疲労困憊。


だけど人に触れ、大自然に抱かれ、美味しいものを食べると、心は元気になる。

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