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人生の目的を振り返る、心の一冊

医療系の方の本は普段あまり読まないのですが、母に勧められ手に取りました。
木村謙介さんの

人を見て、病気を診ず

序章の言葉、「耐久(寿命)を伸ばすことを目的とする現代医療」と述べる木村さんの説明が明確すぎてゾッとしました。私の移住理由の1つに友人の死があります。彼女は最後まで戦い続けました。
…ただ最後に会ったとき医師の言葉に彼女はひどく絶望していました。幼い子どもを置いていくことになるかもしれない、死との恐怖に戦っている人間に医者はそんなことも言うのかと怒りを感じた記憶が蘇ります。
言葉の重みを知っている医者は、決して患者に不安や恐怖を与えない
木村さんの言葉に、そんな主治医であったほしかった。そして、そんな医師が増えてほしいと思います。ただ病院で働いていたとき、彼女と同じ病の人もたくさんいました。人の死は身近で必死につなぎとめることが優先で、患者さんの心に寄り添えていたかと言われると私自身即答できない。だからこそ、このことの重みを医療者全員が持っていないといけないと改めて心に刺さりました。

社会に出て問題を起こす「エリート」、その背景には「勉強は自分のためにするもの」と教え込まれてきとことがある。
この言葉にもひやっとしました。私が大きな挫折をした理由はここにあったと。立ち直るのに時間はかかりました。今では必要な経験だったと思っていますが、辛かったです。そして今でもこの考えを持ってしまうことがあります。

勉強は、他の人や世の中を良くするために行うものである
当時私を助けてくれたのは、こちらの考えの人でした。心に刻んで行かなければと思いました。

そして、人生にとって最も価値のある資源は時間であるということ。木村さんはシューティングやロールプレイングゲームを一例に上げていますが、すごく納得できて。
イライラしているときにシューティングゲームをすることで「邪魔な敵は、速攻で倒すことを快感に繋げる」。ロールプレイングゲームで「自分中心の世界観を広げることが人生成功の秘訣」だと考えるようになる。
振り返ると、そんな人間に振り回される環境で私はよく頑張ったなとも思えるけど、私自身時間を浪費してしまったという後悔もあります。
だからこそ「万人に与えられた時間は平等であり、どう使うかで人生は確実に変わる」「人間の命は有限だからこそ尊い」ということを頭に刻み、あの時延ばされた命、貴重な時間を、体を鍛え、心を豊かにするように大事に使いたい。どうせなら、木村さんの言うとおり人生の上映終了後にスタンディングオベーションを受けれるような物語でありたいから。

自分を大切にしながら、利他に生きる。
自分を大切にするから、自分を否定することはない。
利他に生きるから、周囲に自分が生かされていることを「感謝」する。

最後に木村さんが述べる新型コロナウイルスが人間から奪った最大のもの「人間が暖かい存在であるという記憶」について。
このコロナ禍で過ごす子どもたちはこの「記憶」をまず知りません。人と接する恐怖心が、従わない人を敵視することへも現実に繋ってしまっています。そのことがこれからどんな影響を与えてくるのかは計り知れません。

離乳食を始めようとスプーンを子どもの口に近づけても、口を開かない子に対する相談を見かけました。親の「あーん」という口の動きがマスクで見えずスプーンが口元にある意味が分からないと。マスクがあることで子どもが人(親や先生、友達)の表情をよむことができないということ。子どもの表情も分からないという教師の嘆きも聞きました。赤ちゃんは、こどもは、お母さんや大好きな人の表情から学んでいくというのに…
子どもたちが手をつなぎ、肩を組み遊んだあの日々がいつもどるのか分からない今、なんとか、その暖かさを子どもたちに残したいと思います。


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