電話に出んわ?

 とある所が行ったアンケート調査によりますと20代の7割超が「電話(の応対)が苦手だ」という意識を持っているんだそうな。
 まあ、彼らの生まれ育った時期というのは固定電話……俗に言う『家(いえ)電』の事ですけれど……を持たない世帯が増え始めた時期であります。
 携帯電話が当たり前と言われる程に普及しきってしまい、進学・就職・結婚で新たに所帯を持った時、全員がそれぞれ携帯電話を持っているのに割と高額な保証金が必要な固定電話をわざわざ“引く”(=導入する)必要があるのか?否、無い!(反語)となって固定電話を持たない世帯が今もなお増え続けている訳であります。

 ただ、若者が固定電話の応対に苦手意識を持っているとは申しましたが、私の実感からしますと、それより上の世代は無自覚に電話のかけ方を忘れてると思います。
 私の実感を基にする統計からしますと、日本人の9割が電話のかけ方を間違えている!

 固定電話へ電話をかける場合、個人to個人の携帯電話とは違ってお宅であったり、会社であったりという“団体”へ向けてという事になります。
 具体的に申しますと、例えばとある男性が彼女さんにかける場合、携帯電話同士であれば「おう、満子(どう読んでも構わんよ)?」で済む訳ですが、固定電話へかける場合は初っぱなで御家族の誰が出るのか分からん訳ですから、「あ、私満子さんとお付き合い(突き合いではなく×)させて頂いております○○と申しますが…」となる可能性がある訳です。
 
 物心がついた時から携帯電話が当たり前であった20代の若者達が固定電話が苦手だと思うのは理解出来ますが、最もタチの悪いのがこれより上の世代でありましても子供時代や若者だった頃に固定電話を経験しているにもかかわらず、携帯電話の便利さ、気軽さにすっかり毒されてしまって“電話のかけ方”というのもすっかり忘れ去ってしまっている!
 これは学歴や社会的ステータスの高い低いを全く問わず、です。
 某T海大学の教授なんか酷いもんでしたな。
 初っぱなから「あ~、T海大の教授だがね、理事長出して」(原文ママ)ですから。自分の名前は名乗らんわ、「だがね」なんて高圧的の極みでしょ?ほいで、何処の病院の理事長が朝の7時半から出勤してますのん?最低限のタイミングの見極めすら出来とらん!
 ……固定電話で電話をかけるというのは「相手のお宅にお邪魔する」という意識が無いとイカン訳ですから、他人様のお宅に土足で上がり込んで「あ~、T海大の教授だがね」と胸反っくりかえらせたところで自分の大学の看板に泥塗ったくってる事にも気付かんとなったら、ナンボ学問極めたか知りませんが小学一年生レベルの常識やマナーも身に付いとらん時点で【人として終わってる】と言わざるを得ませんわな!!

 私の仕事の最初の1時間は主に電話の取り次ぎなんでありますが、まず皆さん勘違いされとるのは『固定電話は思った以上に音質が悪い』事でして、つまり対面で会話しとるのの10~20倍は聞きづらいんでありますよ。
 その上で、合唱や演劇、アナウンス等の基礎である発生や滑舌の訓練を受けた訳でも無い一般人が“立て板に水”とばかりに捲し立てられたとて、取り次ぎの為に聞き分けねばならんこちらにそれがどれだけ伝わると思います?
 
 水掛け論の代表例であります「言った、聞いてない」。これね、「言った」というのは単なる事実であってアリバイに過ぎないのですよ。
 “相手に言う”とか、例えば“上司が部下に指示する”という場合肝心なのはその内容や意図がキチンと【伝わっているか】であって、言っただの指示しただのの“事実”なんてのは【何の価値も無いガラクタ】に過ぎません。

 電話に於いても肝心なのは自分が何処の誰であって、誰に、どういう用向きで電話をかけているのかをキチンと【伝える】という意識なんです。
 私ら世代ですと小学一年生ぐらいの頃に学校で『電話のかけ方』と題して教わっていた筈なんですかね。
 
 電話は漢字表記ですと“電”ですが、使い方ですとか精神という意味に於いては『伝話』なんです。
 これこそどんなビジネス書やマナー本にも書かれていない“真理”というやつですわな。

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