2020年9月12日『えんとこの歌』自主上映会 @京都教育文化センター(前編)
NPOココペリ121では、2020年9月12日に京都教育文化センターにて、ドキュメンタリー映画『えんとこの歌〜寝たきり歌人・遠藤滋』自主上映会を行いました。
新型コロナウィルスの影響で一時は開催が危ぶまれましたが、みなさまのご協力のもと、なんとか上映にこぎつけることができました。
会場に足をお運びいただいたみなさま、誠にありがとうございました。
『えんとこの歌』の上映後、舞台より伊勢真一監督が、東京の遠藤滋さんとZoom(ズーム)で繋がって、アフター・トークをしてくださいました。
そしてなんと、観客としてお見えになっていた鷲田清一先生にも舞台に上がっていただき、豪華な顔ぶれのトークとなりました。
そのトークの様子を以下、テキストにてお伝えします。(敬称略)
伊勢監督・遠藤滋さん・鷲田先生によるアフター・トーク
(ドキュメンタリー映画『えんとこの歌』上映終了後)
司会:みなさま、大変長い間のご着席おつかれさまです。この後は『えんとこの歌』を手掛けた伊勢監督とあの遠藤滋さんがZoomを通して、短い時間ではありますが、トークをしてくださる予定になっております。
すぐにといきたいところですが、ここでちょっと喜ばしいお知らせがあります。それというのも、この『えんとこの歌』が昨年、毎日映画コンクール(注1)にてドキュメンタリー映画賞を受賞されました。おめでとうございます。
(会場拍手)
司会:伊勢監督、舞台に上がっていただけますか?
(伊勢監督舞台に登場。会場拍手)
司会:この喜ばしいことを祝福して、花束が用意されております。花束を渡していただける関係者の方々、舞台にお願いします。
花束を渡していただく方々の中に、鷲田清一先生がいらっしゃってます。鷲田先生と伊勢監督が出会われて、今年で20年になるそうです。記念すべき今回の受賞を縁の深い鷲田先生にもお祝いしていただきます。どうぞ。
(鷲田先生・水谷さん・濱村さん・子どもたちより、伊勢監督へ花束贈呈)
伊勢:ありがとう。
鷲田:おめでとうございます。
(会場拍手)
司会:伊勢監督、本当におめでとうございます。
伊勢:ありがとうございます。キッズから花束もらったのは初めてだ(笑)。鷲田先生、「仏壇に供えるような花束ですけど」って言いながらくれたんだけど、うちに帰って仏壇に供えます。
司会:では準備も整ったようなので、次は遠藤さんに登場していただきましょう。
(スクリーンのZoom画面に、遠藤さん・えんとこメンバーが登場)
司会:右下に写ってらっしゃるのが、遠藤さん達です。
菅原:聞こえてますか?
司会:聞こえてまーす。では伊勢監督と鷲田先生、マイクのほうでトークよろしくお願いします。
遠藤(日下部が口伝え。以下略):こんにちは。
伊勢:えっと、遠藤と、谷ぐちくんと、菅原くんと、日下部くんかな? そうだね。
えんとこメンバー:はい。
伊勢:この映画に出演していた介助のメンバーと、主演の遠藤滋です。鷲田先生、
鷲田:こんにちは。
遠藤:こんにちは。
谷ぐち:マイク聞こえてますか?
鷲田:はい、よく聞こえてます。遠藤さんには僕、一方的に5、60回会ってる(笑)。うん。でも、はじめまして。
伊勢:あの、20年前の『えんとこ』のときに鷲田さんが映画を観てくれて、大感動して、それで、それから僕と鷲田さんの付き合いが始まったっていう。それから今日のこの映画会を主催してくれた長見くんっていうココペリのリーダーも、その20年前の『えんとこ』を観て、とても共感して今の活動を始めるようになったっていうふうに聞いてます。だから『えんとこ』は結構いろんな人にこう、強い影響を与えてる(笑)。今日、なんか「このことだけは言いたいっていうことがある」って言ってたのは、何ですか?
遠藤:えっと、こちらからというよりは逆に、見ていて、あの、ちょっと質問したいことがあるんですが、
伊勢:難しいことは駄目だよ。
遠藤:うん。よろしいでしょうか?
伊勢:いいよ。
遠藤:えっと、まず今回の映画で、要所要所に僕自身の短歌を、あの、入れたのは、どうしてなんでしょうか? まずそれです。
伊勢:あ、映画の中に短歌を入れたこと?それはもう、遠藤の短歌を初めて読んだというか聞いたのは、たぶん5、6年前だと思うんだよね、そんなに昔じゃなくて。前の『えんとこ』のときには、遠藤も短歌やってるってわけじゃなかったから。で、なんか僕が映画を作るように、遠藤も短歌を作るっていうことを、なんかきっと同じような気持ちでやってるんだろうなって、とても思った。なんかそれと、若い介助の周りのメンバーとすごく、短歌を作るってことを通じてね、むしろその僕が感じたのは、見事にこう解り合ってるっていうよりも、見事にすれ違ってるっていう感じが、とってもいいなあっていうふうに思ったの。それこそあの、谷ぐちくんが言ってる「寄り合う」って、もしかしたらそういうことじゃないかな?っていうか。なんか「一緒に仲良くやってます」とか、「よーくわかってます」とかいうんじゃなくて、それをこう一つ一つすれ違いながら、でもすぐそばで、すぐそばで、こう耳元で口元で、お互いがこう繋がっているっていうのが、とっても僕は感動したっていうか。「あ、これは短歌が遠藤のことや遠藤と、そのみんな、介助のみんなのことを伝えるだろな」っていうふうに思ったから。これは、かなりほんとにそう、真面目にそう思ってます。
遠藤は、大学で2年先輩なんですね。日文科。もう完全な文学青年。で、とても文語的な文学青年、の今もですね。で、片や後ろに立っている連中は文語的なタイプではまったくなくて、口語的なお兄ちゃんたち。文語は全然ぴんとこない。でも、遠藤も口語は全然ぴんとこないかもしれないっていうことを含めて、こんな風にこうぶつかりながらこう繋がるんだっていうのに、とってもこう共感した。うん。
鷲田先生、今日ちょっと感想とか、
鷲田:いや、遠藤さんってこう、とことん教師なんだなって思います。学校に行けなくても、寝たきりであっても、みんなにいろんなことをしてもらっても、それでも教師を続ける、人を支える、背中を押す、そういう仕事をずーっとやってこられたんだなって思ってきました。
昔、20年以上前ですが最初に映画観たときに、えんとこのスタッフの連絡帳っていうのを見せてもらったことがあるんだけど、そのときに正反対の感想が。連絡帳っていっても連絡事項だけじゃなしにだんだん、遠藤さんへの想いとかむかついたこととか、みんな好き放題書くんですが(笑)、その中に二つ正反対の感想があって。一人は遠藤さんにこう、「他の人に言ったらこう軽く取られる、馬鹿にされるようなことでも、遠藤さんはひと言ひと言、言葉を待って聞いてくれた。言葉を聞いてもらえて嬉しかった」っていう感想が一方にあって。その正反対に、ものすごい印象に残ってるんですけど、遠藤さんに向かって、「あなたに言語障害があってよかった」って言って。で、「えっ」って思ったんですけど、「なぜなら遠藤さんの言葉を一つ一つ聞き漏らすまいと」、今もそうですけども、「必死で聞くことができた」。つまり前の人は、「聞いてもらって嬉しかった」。もう一人の人は、「聞く、自分もそうして人の話を聞ける、必死で関心持って聞けるんだって、そのことが嬉しかった」っていう正反対の感想が書いてあって。つまり、「聞いてもらいたい」っていう、「自分を支えてほしい」っていう人がそのまま遠藤さんのところにいる、入るってことは、人の話を聞く側に、必死で聞く側にひっくりかえってしまう、反転してしまうってことが、まさにここの学校の一番すごいところだなって思いました。
伊勢:ちょうどって、ちょうど鷲田さんが『「聴く」ことの力』を書かれて発表されたちょっと後ぐらいにだったんですよね。で『「聴く」ことの力』って僕も読んで感動して、鷲田さんところに手紙を書いたんです、ラブレターみたいに(笑)。で、今日は始まる前に言ってたんですが、新しい本の、えっと、素肌の…、
鷲田:違う違う、素肌じゃない、素手。
伊勢:『素手のふるまい』。素肌のじゃない(笑)、『素手のふるまい』っていう、鷲田さんの新しい、とってもいい本です。文庫本で、今度出てる本が、「なんか今の状況、今の時代に向けて書かれたみたいだね」って話をしたんですけれども。
僕も『えんとこの歌』ができたのが実は去年なんだけども、この映画を観るっていう、観てもらうっていう意味で言うとね、ほんとに今の状況に、今の状況でこの映画を観るっていうことがとっても、なんかこう、「ああ、そういうことをもしかしたら見越していたんじゃないか?」っていうぐらい、「これを作った監督は」、そんなこと全然ないんだけど(笑)。でも今本当に誰もが、ある意味ではその、まあ傷ついてというか、誰もがいろんなことをこう考えないわけにはいかないという状況の中でね、それこそさっき言った「寄り添う」んじゃなくて「寄り合う」ってどういうことなんだろう? っていうようなことを、もっとこうなんか今、なんかこうみんなに考えてもらうっていうことのためにこの映画が生まれたんじゃないかって、ちょっとね、ここんところこの映画を観ると、自分の映画ながらなかなかいい映画だなって思うんですけども(笑)。で、なんか、もしかしたら映画とか本とか音楽ってそうやってその次の時間っていうか、これから生きていく時間をやっぱりみんなにメッセージしてるっていうことなのかもしれないですよね、いい作品はね。パンクロッカーの谷ぐち君のあの歌、なんていう歌だっけ? 映画の中で歌ってるの。
谷ぐち:『共生社会を実現させる歌』です。
伊勢:(笑)あれもたぶん、これからを歌ってるんだよね?
司会:そろそろお時間が近づいて来ているので、最後に遠藤さん達に『不屈の民』の歌を歌っていただけるというふうに聞いているのですが、準備のほうよろしいでしょうか?
谷ぐち:はーい。
司会:それではよろしくお願いします。
(遠藤さん、えんとこメンバーによる『不屈の民』合唱)
谷ぐち:ありがとうございましたー。
司会:遠藤さんたち、ありがとうございましたー。
(会場拍手)
司会:さて、遠藤さんたちとのお時間も短く惜しまれるとこなんですが、次のほうに移りたいと思います。伊勢監督と鷲田先生も、どうもよい時間をよいお話ありがとうございました。
伊勢・鷲田:ありがとうございました。
(会場拍手)
司会:では遠藤さんたち、さようなら。
(会場拍手)
演奏『不屈の民』&『えんとこぶし』 by NAI!
司会:これからは、先ほど遠藤さんたちに歌っていただいた『不屈の民』を、今度は『NAI!』の皆さんに演奏していただきます。準備の方はよろしいでしょうか?
小西:どうもみなさん、こんばんは、『NAI!』と申します。
(会場拍手)
小西:ようこそお越しくださいました。『えんとこの歌』、主題歌でもありました、『不屈の民』を我々がやってみようかなと思っています。
(準備中)
小西:じゃあ、ちょっと一曲やってみます!
El pueblo unido,jamás será vencido,
El pueblo unido,jamás será vencido,
El pueblo unido,jamás será vencido,
El pueblo unido,jamás será vencido.
(演奏)
小西:どうも改めましてみなさん、こんにちは、ようこそ、ようこそ、こんなとこに、ありがとうございます。
みなさんと、そして、『えんとこ』の、心の叫びを吐いてください。まずは私から。
給料上げろ。ボーナスを出せ。ココペリ。
こんな感じで。
(演奏)
(演奏終了)
小西:どうもありがとう。
(会場拍手)
小西:ありがとう遠藤さん。遠藤さんありがとうございます。
1年間以上僕も『えんとこ』に行かせてもらいまして、懐かしい限りです。じゃあ、最後に遠藤さんに捧げます。『えんとこぶし』
(演奏)
小西:どうもありがとうございました。それではみなさん、よい、よい、よい一日をお過ごしください。ではさようなら、『NAI!』でした!
(演奏)
小西:どうもありがとうございました。改めまして、『NAI!』でした!さようなら!
(演奏、会場拍手)
司会:『NAI!』のみなさん、本当に素敵な演奏ありがとうございました。
*上映会後編および前後編英訳はこちらをご覧ください。