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教え:土足で踏み荒らせ(2)

(実在の成功者達をモデルにし、ひとりの人物「先生」として描く小説です)


 家に帰ってからすぐ、教えてもらったカイさんのやっているゲームのホームページをノートパソコンで見てみた。
 世界大会の戦歴も公開されていて、準優勝のところにカイさんの名前といかつい金髪の戦士のアイコンがあった。

 ふふ、リアルの姿とは全然違う。
 バーチャルのカイさんは、私が最初に予想した姿に近かった。
 
 優勝者は「ミカ」。フィンランドの男性だ。

 この人が万年チャンピオンなのか・・・。

「あ!」

 思わず声が出た。

 ミカさんはこの試合を最後に引退するというコメントがあった。カイさんには、もう、この人を倒すチャンスはないのだ。


 たかがゲーム。されどゲーム。
 カイさんにとっては真剣な勝負の場で、リアルとバーチャルの違いはなかった。彼のリアルの人生の一部にバーチャルな世界での戦いがある。

 神力さんとの会話が思い出された。


 見たでしょ?
 彼の、あのくやしそうな姿。
 一生背負うのよ、好機を目の前に逃げたっていう事実を。
 彼の奥さんはね「準優勝でもいい」って言って、優勝するチャンスをある意味、彼から奪ったの。

 きっと、準優勝した彼に「おめでとう!」と言ったと思うわ。
 「よくやった!」って。

 カイ君がまだまっとうだから、その言葉に甘んじてないのが救いだけど、もしかしたら「そうか、準優勝でよかったんだ」と彼が思っちゃうようなことがあれば、奥さんの罪は大きくなるわね。
 彼を「そこまで」の人に止めてしまう罪、ね。

 
 罪、という言葉、私には随分重く聞こえた。
 罪、まで言う必要があったのか、と。

 
 でも、罪なのだ。

 カイさんは言っていた。

「人生の全てにおいて、戦うべき時に、二度と、一ミリも下がらない! 絶対に勝ちに行く!」

 教訓を得たならば、今回の負けもそれでいいんじゃないか。

 その想いを口にしたら、神力さんは言った。

「勝っていたら、もっと素晴らしい学びを得たのよ? 負けることからも学べる。それは事実だけど、勝って学べることの比較にはならないの。やる方も応援する方も、成功から学べることの方が圧倒的に多いのよ。そのことを忘れないで」

 負けからも学ぶことはできる。
 しかし、勝って学べることの比較にはならない。
 成功から学べることの方が圧倒的に多い。
 だから、勝つべし。


 付箋に書いて、金色のノートにはりつけた。
  

 そうだ。これも書いておかなければ。

 カイさんが、持っていなかったもの。
 それは、

 1 応援される者としての責任(多くの人が持とうとしないけど絶対に持った方がいいもの)

 2 心の中に土足で踏み込んでくれる人(多くの人にとって痛いものだけど、やっぱり絶対に持った方がいいもの)

 神力さんが教えてくれた答えだ。

 
 私は??
 土足で踏み込んでくれる人はいる。私が覚悟を決めたらガンガン入ってきてくれるのが、先生であり、先生の教えを受けている高橋さんだと思う。

 でも、応援される者のとしての責任は・・・っていうか、応援してくれる人がいないよね。それは私が何を頑張るって、ちゃんと公表しないからだ。きれいになるとは決めたけど、自分の中だけでおさめているんだもん、誰も応援のしようがないよね。

 これをみんなに宣言したら・・・

 怖いなぁ。言ったのにやれなかったら、どうしよう・・・。

 ぶるっと体が震えた。

 絶対に、成功しなきゃならないじゃんね。

 でも、これこそが力なのだ。


 よし!
 

 私はよくわからないパワーみたいなものを感じていた。

 ふと、パソコン画面を見ると、ひとつの広告に目が行った。

「〜ねばならないを捨てよう!
 have to があなたの能力を制限する」


 え?!

 今、私が思ったことと真逆ーーーーー!!!!!

 神力さーん!
 高橋さーん!
 せんせーーーーーーい!!!!!!!!!

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