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「さも当たり前であるかのように」2024年3月10日の日記

・攻撃的な枝。

・昨夜中央駅の自販機でカードを使おうとしたら認証が通らず、カードが止められてしまったのかと思ったがそういうメールは来てなかった。今朝改めてコーラを買ってみたらカードは問題なく使えた。機械の気まぐれで弾かれることがあるっぽい。


・VLOF2024の2日目なのだった。今日は6部門中、上から2つの部門の大会が行われた。

・今朝は無駄に早起きすることもなくきっかり6時半に起きたが、それでも6時間睡眠とかなので結局最後の方はやっぱり睡魔に襲われていた。


・Ere-afdelingの課題曲De Onderwaterzetting は持っているCDに入っているし聴いたこともあるはずなのだが、ほとんど初見のつもりで聴いた。中盤にソプラノサックス、フリューゲル、アルトサックスを中心としたアンサンブルがあって、その場面がずっと印象に残っている。譜面がどうなっているかわからないが、アーティキュレーション感の参考にもなる。ああいうスタッカートを吹きたい。

・Ere-afdelingではフランス・ヴィオレット(ブラスバンド・ウィルブルークの指揮者)が指揮しているバンドが優勝していたけど、私は2位のSint Jansvrienden Wiekevorstの演奏の方が好きだったなあ。以前ファンファーレのサウンドについて2人くらいから「しなやか」と評してもらったことがあるのだが、ヤンスフリンデンはまさに「しなやか」という言葉を体現したようなハリとツヤのあるサウンドをしていた。ソロでもトゥッティでも。優勝バンドは、言葉は悪いけど「ブラスバンドフリークの考えそうなファンファーレ」って感じだったなあ…

・ヤンスフリンデンが自由曲として演奏していたレオン・フリークスの曲、後半で体感5回くらい(本当は何回だったんだろう)まっったく同じ場面を繰り返すところがあって、なんかタイムリープに巻き込まれたような感覚を覚えた。


・最高部門の課題曲「約束の大陸」は本当は4年前のVLOFで初演されるはずだった曲で、4年間ずっと聴ける日が来るのを待っていた。

・この曲に「歓喜の歌」が引用されているのは元の初演予定がベートーヴェンのアニバーサリーイヤーだったこととも無関係ではないのだろう。しかしシリア難民を題材に取った曲、しかもその難民を旧約聖書のさまようユダヤ人になぞらえた曲で「歓喜の歌」を持ち出すのは、なんか…西欧人の立場から痛烈に難民とか、イスラム教とか、全部を皮肉っているのではないか??という穿った見方をしてしまう。今のパレスチナのこともあるし、そもそもパレスチナのことだって今に始まったもんではないし。実際、歓喜の歌は「ヨーロッパにたどり着いた」ことを表してはいるのだろうが、それにしたってなあ、うーん、難民側の「ヨーロッパに命からがらたどり着いた」心情は果たして歓喜の歌で表すべきものなのか?表せるものなのか?ちょっと今は主義信条の面で相容れない部分が多すぎる曲だと感じた。

・ブラス・オー・サックス(Brass aux Saxes、この発音でよかった)が演奏していたジェフ・ネーヴェの「地球の再生」はいい曲だったなあ。生命の躍動感に満ち溢れるような曲だった。ネーヴェはピアノの人なのにファンファーレの特徴をよく掴んでいる。

・ヤコブTV(Jacob ter Veldhuis)のTallahatchie Concert第1楽章もよかったなあ。同じバンドが演奏していたエド・デブールの曲と合わせて、「技術と音楽性があるなら、少人数でのアンサンブルを重ねていくような曲やりたくない?」という意欲、トゥッティでがんがん鳴らすタイプの曲への反旗であるようにも感じた。ここは最高部門のなかでは最下位だったのだが(課題曲で少し点を落としすぎたかもしれない)、プログラムは一番好きだったし演奏も良かったな。


・最高部門で優勝したのはやはりケンペンブルーイだった。98.33点という凄まじい点数だ。うまいとかいう次元にない。ものすごく難しいことをやっているはずなのに、音楽の全てが滞りなく、さも当たり前であるかのように進んでいった。
・あれほど大人数で演奏しているにもかかわらず、うるさく聴こえるところがない。しかし確かに大きなエネルギーで観客を包み込む。トゥッティの弱奏があんなに美しいのはあの人数があるから、そして全員が音楽的に同じ方向を向いて演奏しているからできることだろう。

・ブリュッセルレクイエムはブラスバンドのために書かれた曲のはずなのに、まるで最初からファンファーレのために書かれたかのように聞こえた。全てが自然だ。前回WMCのガブリエリ幻想曲を聴いたときは「気持ち悪っ!」という感想が先行してしまったが、今回はただ迫力と感動があったなあ。

・ブリュッセルレクイエムはいい曲だし、もう名曲と呼んでも差し支えないと思う。まるで日本でだけ爆発的な流行があったかのように述べる意見を多く見てきたが、欧州でもずっとちゃんと愛されてる曲なんだよな。

・そして私はベルギーでブリュッセルレクイエムの生演奏を聴いた人間になったんだな…


・表彰式の後は足早にホールを後にした。私が声をかけたいような人は他にもたくさん挨拶すべき人がいて、絶対に忙しいだろうと思って無理に姿を探すようなことはしなかった。あとから思えば隙を見て「今度あなたの曲演奏するんですよ!」くらいのこと言ってもよかったのかな〜、相手も日本からわざわざ来た人が声掛けてくれたら嬉しいよな〜、なんて後悔の念もあるけど、まあ初めての自力海外旅行でみんな何話してるかわからんところに放り込まれたらそんなもんです。次頑張ろう。


・大会中は充電節約のために機内モードにしていたのだが、舞台転換のときに機内モードを解除したら日本じゃない電話番号から不在着信があった。調べたらどうやら宿の人の電話らしい。英語で電話とか無理〜かけたくねえ〜とごねつつ折り返したら、簡単な安否確認だけされて終わった。2日間、早朝に外出して深夜に戻ってくる生活で全くホストと顔を合わせていなかったので、行方不明になったかと思って心配されたらしい。次そういうことがあったらなんか書き置きしておこうかな。

・昨日よりは早く宿に着いたが、それでも23時を回っていた。今朝寝ていた人たちがあらかたいなくなって片付いている。手早くシャワーを浴び、歯を磨いて寝た。

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