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減り続ける本屋と倍速視聴文化は共通しているのかもしれない

よく町の本屋さん、書店が閉店していくというのはよく耳にするだろう。

私も、身近で書店が減少していること実感している。生まれた時からずっと通っていた書店が昨年閉店した。家にある本の8割がその本屋で買ったと言っても過言ではない。

こうした書店が減少していく社会に経済省が歯止めをかけるようとしている。

このプロジェクトでは、書店の経営難や後継者不足といった書店側の課題に焦点を当てている。

しかし、この経済省のプロジェクトに対して、歴史小説・時代小説家であり、「佐賀之書店」のオーナーでもある今村翔吾さんは自身のXで意見を述べている。

書店だけでなく出版業界全体を見て改善していかないといけないと述べている。他にも、同じく小説家である三國青葉さんは、読み手に焦点を当てた意見を述べている。

今日では物価の上昇が起きており、食費や生活必需品費が家計を圧迫しているという人も多いだろう。しかし、出版業界、読み手の経済的な問題だけが書店減少の要因なのだろうか。今回は、ある本を種本とし、前述した二つの要因以外にも要因があるのではないかと考えていく。

種本の紹介

今回の種本は「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ ー コンテンツ消費の現在形」である。


https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784334046002

2年前に出版された本であり、この記事を読んでいる人の中でも読んだことがある、聞いたことがある人も多いと思う。

まず、タイトルで倍速視聴をする人を批判する内容なのかと思うかもしれないが、それは誤解である。実際は、倍速視聴や10秒飛ばしをしている人たちがなぜ生まれるのかを、コンテンツを視聴する人、作り手、そして社会に焦点を当て、なぜ倍速視聴という文化が定着したのかという内容である。

また、この本の著者も以前は倍速視聴をしていた一人でもある。著者が偉そうに書いたものではない。本編で使われるたとえ話が食事の例を出すことが多く、とても分かりやすく読みやすい本なので、読んでない人にも読んでもらいたい一冊である。

そこで、この種本を基に書店の減少と倍速視聴文化の関連性を考えていく。

多くて安いコンテンツ

種本では、様々な角度で倍速視聴の文化が定着したのかを考察している。その中の一つに、映像作品の供給過多を挙げている。種本では、映像作品だけを挙げているが、それだけではない。Amazon PrimeやU-NEXTといった配信サービス、YouTubeなどのSNSといったものもある。こういった、莫大な量のコンテンツの中で、自分が一番見たいものを選ばないといけない。

供給過多だけでなく、一つ一つのコンテンツが安いこともある。Amazon Primeは月額600円、U-NEXTは2,189円と映画館で1本映画を見る料金それ以下で何万もの映像作品を見ることができる。

映像作品に限ったことではない。KindleやSpotifyなど音楽や本といった娯楽コンテンツの値段が安くなり、供給過多な傾向にある。

こういった安価で供給過多なコンテンツが生まれたことで、一つ一つの作品を大切に観ようとしなくなり倍速視聴文化の定着の要因と言える。

我々は忙しい。だから、「タイパ」を求める

今回の種本では、実際に倍速視聴や10秒飛ばしをしながら視聴する大学生のヒアリングを行っている。ヒアリングした大学生の一人は、大学とバイトで一日が終わってしまうと語っている。

これを読んでいる人も毎日が忙しいと感じている人もいるだろう。学校や仕事だけに限らず、SNSなどで流行を取り入れるといった情報に追われることに忙しさを感じた人もいるだろう。

今日流行している「タイパ」というものがある。一分一秒に対してのパフォーマンスの質を求めるような文脈で使われることが多い。種本では、この「タイパ」が今の時代求められるようになった要因について語っている。

彼らはとにかく余裕がない。時間的にも、金銭的にも、そして何より精神的に。

稲田豊史 「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ ー コンテンツ消費の現在形」178p

とにかく余裕といったものがない。余裕がないから自分の時間といった貴重な時間を無駄にしたくない。失敗したくない。有効活用したい。こういったことから「タイパ」が求められるようになったと考察している。

先ほど挙げた大学生の一例を詳しく掘り下げると、平日の午前9時から10時までバイトをして、その後大学に行き、午後8時に帰宅している。このような生活をしていれば、自分の時間がいかに貴重なものかが分かる。2時間ある映像作品は落ち着いてみることもできないし、何百ページある本も整理して読むことはできない。

それだけではない。これに加えて前述した映像作品などの情報の供給過多もある。あふれかえる情報の中で、一番の最適解を短時間で見つけなければならない。自分が見たい作品を見つけるだけでも疲弊してしまう。

減り続ける本屋と倍速視聴文化の関連性

ここからは前述を基に減り続ける本屋と倍速視聴文化の関連性について述べていく。

前述した通り、現代のコンテンツの供給過多でコンテンツや情報も価値が下がっている。本を読まずとも分かることや学ぶことが増えていることも事実だ。

また、倍速視聴を取り入れている人は、とにかく早く情報を取り入れたい。時間やお金、新しい情報を取り入れる精神がないからだ。そういった人たちに本というものは相性が悪い。本を読むにも、読み切るまで数時間は掛かる。物価高騰で書籍も高くなっている。本屋に行って大量の本の中から自分を求めている本を探す時間もない。本を読むにしても、落ち着いて読むことができない。それだけでなく、買った本が面白くない、つまらないもの。つまり、買うことや消費することを失敗したくないという考えも要因の一つに挙げられる。

こういった人たちにおいて本というものは情報やコンテンツを消費するものとしては、「タイパ」が悪いものである。倍速視聴文化の社会性や個人の生活を見ると本屋が減り続ける要因が見えてきたと言える。

政府は本屋を支援するべきなのか?

ここからは、最初に挙げた政府が本屋を支援するべきなのかを私見ではあるが語っていく。

結論から言うと政府が本屋を支援する必要はない。具体的に言うと本屋を支援するお金を他のことに使うべきだと考える。個人的に本屋が減ることはとても悲しいことだが、時代は変化し続ける。変化していく過程で増えていくものもあれば、減っていくものもある。世界というものは残酷である。もし、支援するのであれば、自治体レベルでやってほしいと思う。

SNSでも、こういった支援は必要ないという意見もある。そういった意見の中には、図書カードや本を買うお金を配布すればいいじゃんみたいな意見もある。

確かに、そういった支援の方が本屋と読者両方に利益がある。しかし、図書カードを配って本を買ったとしても、その買った本を読むまでの行動を起こすのか。その図書カードが無くなってから自分のお金を使って本を買うに至るのか。結局そういった支援はその場しのぎにしかならない

そうではなく、種本でも扱った自分たちが本を読む環境が整い、時間やお金、精神的にも余裕がある状態を作る。または、作りやすい環境づくりを社会全体が行った方がいいと私は考える。本を読む環境、時間、金銭的にも余裕を作り、社会に溢れるコンテンツを自分のペースで観たり読んだりすることが本質的な解決方法だと思う。

もちろん、こんなのは理想論だし、すぐに解決できる問題ではない。そこで、長期的に解決に向けて支援するのが政府の仕事だ。本屋を支援するよりも、我々の生活がより、豊かで余裕のある生活ができるようにしてもらいたい。

終わりに

今回は、「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ ー コンテンツ消費の現在形」を読み、アウトプットを目的としてこの記事を書いた。間違って言う部分も多いだろうし、意見が合わない部分もあると思うが、ご了承いただきたい。

また、ここに書いた内容だけが種本のすべての内容ではないので、本編を知りたい方は是非、本を取っていただきたい。(最後の最後でステマぽくなった)

ここまで読んでいただきありがとうございました。

それでは、また。

・今回の種本


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