それぞれの16歳。

1日の中で1番忙しい時間帯に、携帯の着信音が鳴りました。

相手は25年来の友人です。

もしもし？と、慌ただしく家事をこなしながら出た電話口で、友人はさめざめと泣いているではありませんか。

詳しく話を聞いてみると、友人の息子が、これまで死に物狂いで取り組んでいた部活を、1週間も休んで彼女の家にしけこんでいたと言うのです。

そんなことする子じゃなかったのに！女のせいで息子が変わった！と、大まかに言うとそのような苦しみを吐露する電話でした。

しかし、友人の息子は16歳。

部活で汗を流す健全さだけではなく、女の子の柔らかさに夢中になる健全さも持ち合わせていくお年頃です。

私には息子がいないので、かつては「ママ大好き！」と言ってくれていた最愛の息子を、どこのどいつだか知らない若い女に持っていかれてしまう友人の悔しさや悲しみのすべては理解することができません。

ただひとつ言えることは、「あんた自分が16歳だった時を思い出して」ただそのひとことです。

友人は今でこそ落ち着いて、愛情深いお母さんとなりましたが、彼女の16歳の頃なんて「16歳の女の子が興味を持つことすべて」を実行したのではないかと思うくらい、それはそれは凄まじいものでした。

部活をサボって彼女とホニャララしてたなんて、友人の過去をすべて知る私から見たら、まったく勝負になりません。

それを聞いて、ホントだわ！と豪快に笑った友人ですが、親から見た我が子の16歳という年齢は、寂しくて切なくて、とてつもなく羨ましいものだそうです。

16歳は、青春のど真ん中。

部活もいいけど、女の子との青臭い情事もいい。

すべてが美しく、そして将来思い出すとちょっとだけ恥ずかしくなる、そんな素晴らしく愛おしい日々なのだなと思いました。

ちなみに私の16歳は、HIPHOPダンサーだった2つ年上の先輩にずっと片思いをしていました。

月日は流れて、とあるいとこの結婚式。

相手方の親族として出席していた先輩と、まさかの再会を果たしました。

私たちは、遠い親戚となったのです。

全然興味ないのに先輩の好きな音楽ばっかりを聴いていた16歳の私に、15年後、先輩と親戚になるよって、嘘みたいな未来を教えてあげたいな。