左翼が変なダンスを踊ったから蓮舫は負けたのか

風雲急、風雲急!都民都民ご乱心!石丸2位蓮舫3位 立憲共産党は敗北! 若年層は石丸が首位! 左翼は時代遅れ左翼は時代遅れ左翼は時代遅れ!

都知事選が終わってからの私のタイムラインは概ねこんな感じであった。タイムライン構築を間違えたとしか思えない。可愛い犬より石丸さんのニヤついてるのかどうかよくわからん顔が流れてくるのはおかしい。そんなTLに住んでいる私が「一般の無党派層」の気持ちを理解できるはずはない。

そう、理解できるはずがないのだ。私は一応289選挙区の小選挙区当選議員を言えるし、都道府県知事も45くらいは言える。今考えてみたら47いえた。言えてしまった。頭がおかしい。もっと覚えることだらけだろう世の中は。ツイッターで政治を語る奴なんて重症度合いは違えど多かれ少なかれそういうものだ。自覚しろ!

そんなツイッター政治オタクが考えた蓮舫さんの敗因がネットの至る所に流れている。小池都知事の勝因はそこそこ、石丸さんが支持を集めた理由も結構見かける。ただツイッター民は石丸さんみたいなやつにパワハラとかイジメを受けた層が主力なので、基本的に彼への風当たりは厳しい。なので正直なところなぜかれが爆発的に「ウケた」のか首を傾げている層が多いだろう。

その敗因分析の中で、左翼が無党派に受けないノリを繰り広げたからだ、というのがあった。もっと具体的にいうなら、左翼にしか響かない公約に謎の盆踊り、公害としか言いようのないシールによくわからない1人街宣、笹の葉をバックに左翼がなんか踊っていて、その裏で蠢く共産党。小池都知事を緑のたぬきとや揶揄する元総理に、入れ替わり立ち替わりの立憲弁士。二条河原の落書ペースでスクロールしてもスクロールしても出てくる蓮舫さんの敗因。さて、この中に真実はいくつある!?

語られる「敗因」は大体こういうパターンだ。「〇〇によって無党派がはなれた」。どうやら無党派は頻繁に家出しがちらしい。そもそも無党派ってなんだろう。

無党派にも色々ある。無茶苦茶政治に詳しく関心が高いが故に支持政党に求めるハードルが高すぎてどこも支持出来ない層 特定の政党を応援しているわけではないが、選挙にはちゃんと行く層 選挙には行ったりいかなかったり、ただネットやテレビ等でうっすら政治の話を聞くことはある層 全く関心がなく投票に行ったこともない層。

さっきの段落、下に行けば行くほど、無関心層という概念が侵食してくる。政党を支持するというのは思った以上に骨の折れる行為だ。認識してある程度理解して好きにならなければいけない。さらに選挙と選挙の間の何もない期間も支持を継続するとなるともうそれは「大それた」という言葉で表してもいいかもしれない。大体の人はその段階までは至らない。関心がないから。そもそも政党の名前もよく知らない。関心がないから。街で誰かが活動していても、気にすら留めない。関心がないから。
 
 さて、その上で、今回の蓮舫陣営のあれこれに嫌悪感を持つためにはどれくらいの関心が必要なのだろうか。少なくても共産党を知っていて、嫌悪感を持っていなければ彼らと一緒に街宣をしていることにネガティヴなイメージは持てない。変な踊りはどうか。これはそこまで関心がなくても嫌悪感が出てくる可能性はある。街で変な人を見かけたら嫌な気持ちになる層もいるだろうから。
大規模街宣のために道が狭くなっていて邪魔をされたとか、選挙カーが煩くて生活に支障が出た、という類の話は全く関心がなくても嫌悪感だけ育つことはあり得る。

以上のように、政治的な関心度、或いは方向性によって無党派は分類でき、そのそれぞれの層によって嫌悪感を示す行為は変わってくる。これは政策をとっても同じことが言える。政治的関心度の高さ、方向性によって刺さる政策は当然変化してくるし、よく知っている層にとっては絶対許せないような施策でも多くにとってはどうでもいいこともある。逆に、ごく一部しか関係ないような政党や政局都合の話が投票行動に大きな影響を与えることもある。
この辺はこれを読んでいる人は大体感覚として理解できるのではないだろうか。
無党派なんて、簡単に理解できない。支持するは明快だけど、支持しないという行為が単純なわけがないのだ。

さて、話を戻す。今回蓮舫陣営の敗因として挙げられている多数の事象、これは具体的にどの層が引いたのかを考えていけば、敗因としてのぼんやりとした順位づけができるかもしれない。もっともっと正確なことを知りたいなら、今回の無党派層がどのような層だったのかも検討する必要がある。例えばここ十年の国政選挙の出口調査では無党派層は比較的野党が多めに獲得する傾向にあった。これは無党派層の中に「野党を応援しているが支持に至る政党はない」という層が多く含まれている可能性がある。これらの層が例えば立憲支持に多く流れ出したら、残りの無党派層は当然また別の種類のものとなる。「選挙の度に与党野党とフラットに選択していく層」「その時に勢いのありそうなところになんとなく入れる層」「投票所で初めて考える層」、今回の選挙は一体どの層が多かったのか。そしてその層を蓮舫さんはどの行為で逃したのか。敗因を突き止めたいなら、選挙戦術全部を解体しないといけない。何か一個の事象で全てを説明できるかのように振る舞う層は、「切り抜き動画」で踊らされている層と同じ穴のなんちゃら、化かしているのか化かされているのか馬鹿にしているのか。

選挙戦を全解剖するのは選対じゃないと出来ない。外部からできるのは見える範囲をバラしていって、そこから全体像を推測するだけ。それに価値があるかと言われれば難しいが、表面上の切り抜き敗因分析に踊らされているよりはマシかもしれない。公開情報だけでもある程度は辿ることができるし、幸いツイッターには選挙戦に参加した人たちも多くいる。その知恵や視点を繋ぎ合わせれば、敗因の7割くらいには辿り着けるだろう。

で、

それをやる気のある人ってどれくらいいるの?

そこまでして敗因を考えている人なんて殆どいない。見えている範囲で思いついたことしか言わない。私も含めて。ツイッターなんぞそんなもん。さらに言うなら、自分が嫌悪したものに敗因というレッテルかハッシュタグかわからんものをつけて流す奴らもいる。実際そう見えているんだから仕方がない。おんなじ見え方をする層にはそう映るだろう。だが、その層は本当に「無党派」を理解しているだろうか。

政治オタクの中にはエコーチェンバーに陥っている政治界隈や政治家を馬鹿にする人も多いが、そもそもこんなことで盛り上がっている時点で小さな小さな井戸の中の話だ。小さな井戸の熱量や理屈で選挙が動くことがあるため、ここがどこへでも行ける大海だと勘違いしそうになるが。

こんな内容でこんな長文書いている私も含め、我々は支持政党思想問わず抜け出せない深い井戸の中にいる。そこから見える空なんて、星空のほんのほんの一部だけ。

共産党がいる街宣にだけ引く無党派もいれば、あなたがしているその投票依頼に、選挙活動に関わること自体に「キモい」と思う無党派もいる。

抜け出せない。ならもっともっと掘るしかない。票やら出口調査やらあらゆる公開情報を使って。

正直、政治オタクの常識は世間の非常識と喚くことができたらそれでよかったのだが、ここまで来たらもっと掘りたくなってきた。政治活動における「キモさ」とは何か、何がどの層に嫌われるのか、とことん掘り下げてみよう。もちろん気が向いたら。というわけで次回を待て。ついでに自戒せよ。ついでにネコと和解せよ。

次回未定!乞わないよご期待!

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