国会の景色の変え方 〜投票直前に見て欲しい10の道しるべ〜

新企画、「ゆる国会」のススメ 投票日から始める熱量ゼロの政治参加の第一弾は、投票日前に配信です。

 「ゆる国会」企画紹介


 本題に移る前に、今回の企画の説明をします。これは投票日から政治や国会に継続して興味を持ってもらうために、選挙後に行われる特別国会から国会を一緒に見ていこう、という趣旨のものです。国会を見る上で必要な知識やリアルタイムで今何が行われているのか、などをこのnoteやTwitterを連動して盛り上げていきたいと思います。今回の選挙の結果次第では波乱が起きる可能性もあるため、その辺りの血生臭い?情報もできる限りわかりやすくお伝えしていければと思っています。特別国会と臨時国会ってなにが違うの?という公民の授業でやったことから国会の豆知識まで色々カバーしていくので、国会が終わった頃にはあなたも一人前の国会マスターになっているかもしれません。
 最終的には、国会で好きな分野や好きな議員さんを見つけてもらって、その分野の委員会や好きな議員さんが立つときは見る、そして選挙の前はその議員さんの演説を暇なら聞きにいく、みたいな人が増えていってくれればいいなーと思っています。

 さて、ここでひとつ疑問が生まれた人もいるかもしれません。

 投票日から始めるのは結構だけど、じゃあ今回の選挙どうするんだよ!

 もう投票先を決めている人は大丈夫でしょうが、選挙はいかないとと思いつつも投票先はまだ迷っている、何を基準にしたらいいかわからない。そんな人のために投票の参考になる情報をいくつかまとめようと思います。

 ただ、大前提として知っておいて欲しいことがあります。今から紹介する10のことは、全部参考程度の話でしかありません。あなたがどんな基準で誰に投票しようと、間違いなんてないんです。もし仮にあなたが票を入れた候補者が不祥事を起こしたとしても、それはあなたの責任でもなんでもありません。その時は、次選ぶ時は今回の反省を生かして投票すればいいだけの話です。

民主主義のいいところは、やり直しが効くことがだと思っています。この党に任せてみて、期待外れなら別の党に入れる、そうしたことを繰り返していくうちに、この政党を育ててみたい、応援したいという存在に出会えるかもしれません。取っ替え引っ替えでも、行き当たりばったりでもいいんです。それでも意思を示し続けること、興味を持ち続けることが民主主義を守り、育てます。

 なので、どうしても迷った場合は「顔」で選んでも大丈夫です。顔と言っても、選挙ポスターだと加工されている場合があるのでできるだけ全員会ってみた上で判断できればベストなんですが、それは実際には難しいでしょう。なので、そういう時は候補者さんの名前をネットで検索してみましょう。多くの候補者は公式HPを持っており、SNSや動画サイトのアカウントで積極的に発信している方も多くいます。その中の演説動画を少し覗いてみて、「いい表情をしているな」「信頼できそうだな」という人に入れてみてはいかがでしょうか。案外こういう直観は馬鹿にできません。選挙通の中には、候補者の演説前後の振る舞いや表情でいい戦いをするか苦戦するかわかる人もいるそうです。すごいですよね。
 自分が一番大事にしたい政策が一致する、年齢が近い、若い人に頑張ってほしい、女性議員を増やしたい、そういう何かこだわるポイントが一つでもあれば、それが合致する人に入れるといいと思います。投票前、五分でいいのでネットサーフィンして候補者さんの素顔を覗いてみましょう。

 あなたの一票、ちゃんと生きています!〜死票の話〜

 こういう話をすると、毎回死票のことが話題になります。公民の授業で「小選挙区制度は死票が生まれやすい」と説明されたことを覚えてらっしゃる人も多いかもしれません。死票とはどういうことかというと、ざっくり言えば当選者以外に投じられた票、ということです。
 
 例えば、

A候補 70000票 当選
B候補 65000票 落選

の場合、B候補を当選させたいと思った65000人の意思は叶えられなかったことになります。現在の衆院選は小選挙区制度ですので、選挙区の当選は一人です。なのでたとえ一票差でも、票が多かった方が当選します。接戦であればあるほど死票は増えると言っていいでしょう。

 ただ、日本の衆院選では比例代表制度も同時に存在するため、上記のように惜しい票差で落選した場合は「比例代表で復活」することができます。比例代表で当選する候補の決め方は公明党や共産党などを除いて多くの政党は小選挙区で惜敗した候補から順番に、ということになっているので、惨敗ではなく惜しい負け、に持っていくために票を投じることは無駄にはなりません。(ちなみに日本の選挙では小選挙区で当選した人が偉くて比例復活はあまり褒められたものではない、という風潮がありますが、別に小選挙区で当選した議員と比例で当選した議員の間に何か差があるというわけではありません

 その一方で、本当に当選に結びつけられない場合も存在します。例えば、小政党の公認候補や政党や団体の支援のない無所属候補。どうしても現在の選挙制度では大政党が有利になるので、自民党と立憲民主党、関西で言えば日本維新の会など大政党、地域で強い力を持つ政党が立候補している中それ以外の政党や無所属の候補が議席を獲得するのはかなり難しいです。なので、思想的には小政党に近いけど、当選が難しそうだから無駄にしないために大政党の候補や比例に、という方は結構多くいらっしゃいます。

 確かに、その一面は否定できません。ただ、本当に文字通り死票になるかと言えばそうでもありません。例えば、政党で言えば政党交付金。こちらは選挙における選挙区や比例それぞれでの得票数で金額が変わってくるので、応援したい政党が明確にある場合は一票を投じることはなんの無駄にもなりません。また、政党要件と言って、全体で2%の得票数を得られれば政党として交付金や重複立候補などの大きなアドバンテージを得ることができるので、特に政党を選ぶ比例代表においては素直に応援している政党を書くのがベストです。
 一方、小選挙区です。現在多くの会社が情勢報道を行なっており、「当選しそうな候補」と「厳しい候補」は結構はっきりと分かれています。基本的に与党系の候補は一本化されているので、与党を応援している方は自民党、か公明党の候補に入れれば大丈夫です。ただ、問題は与党に入れたくない場合です。

例えば、

A候補(接戦)自民党
B候補(接戦)立憲民主党
C候補(劣勢)その他の野党


という記事を新聞で見た時に、自民党のA候補に入れたくない場合、BかCのどちらを選ぶべきかは難しい問題です。政策的や人間的にC候補を応援したいけど、勝ち目があるのはB候補だし、という方も多いでしょう。野党軽候補が乱立しているときに与党を勝たせないために一番勝ち目のある候補へ投票することは戦略投票と言ってある程度一般的なことではあります。

 ただ、これは残酷な一面もあります。この場合B候補に票が集まるということは、C候補は本来得られるはずだった票を逃すということになるからです。たとえ落選しても票数として健闘していれば、政党からその能力を認められて再挑戦する機会を与えてもらえるかもしれません。政治家の動きを評価する基準はやはり票数です。なので、C候補がすごくいいな、頑張って欲しいなという方がいれば、勝つか負けるかは度外視して一番推せる人に投票して欲しいと思います。
 無所属の独立系候補であっても、得票数が10%を越えれば選挙に出るために払わなければいけない供託金(小選挙区は300万円)が返ってくるので、そういう意味で無駄にはなりません。(実際今年の三重県知事選など政党の支援を受けていない無所属の方の供託金が返ってきた事例もあります)推しに尊い一票を!
 一方、とにかく与党を勝たせたくない、国会の景色を変えることを優先したい、という方は、新聞などの情勢報道を見て一番勝ち目のある野党候補に小選挙区は票を投じる、という行動もありだと思います。一番最後にあなたの一票でより結果がわからなくなる大激戦の選挙区も貼っておきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 国会の景色を変えるということ〜政権交代以外でも国会は変わる〜

 今、国会の景色を変える、と言いました。これは抽象的な表現ですが、どういうことでしょうか。 
 基本的に、衆議院で多数をとった政治勢力から首相や内閣は誕生するのが今の仕組みです。なので衆院選は政権選択選挙と言われ、非常に重要なものとして扱われます。
与党が過半数を割って、今の野党が過半数をとれば政権交代となります。(連立など複雑な要素があるためそう単純にはいきませんが)基本的にはこれが一番重要なポイントです。

では、衆議院で過半数を取ったほうが勝ちで、負けてしまったら何も変わらないのか、というとその限りではありません。

「3分の2ライン」「絶対安定多数」「安定多数」

 これらの言葉、聞いたことありませんか。これはいずれも国会においては大きなポイントとなる用語です。
それぞれの用語を見ていきましょう。

 安定多数(244)

国会では全議員が出席する本会議とは別に、議員さんは皆委員会に配属されます。常任委員会は全部で17あって、それらのうちどれかには所属することになっています。国会中継でお馴染みの予算委員会も常任委員会の中の一つです。それぞれの担当分野や名称などはまたの機会に紹介するとして、普段の国会のメインはこの委員会となっています。ざっくり説明すると、委員会で審議して採決してから、本会議では委員長からの報告と討論、そして採決、このような流れになっています。なので、法案の議論も基本的には委員会で行われるということです。ここの委員長ポストを全て与党が握り、委員の半数を与党が占めることができる議員数を、安定多数といいます。
 正直、そう言われてもピンと来ませんよね。ちょっと図解します。

政府が通したいA法案を可決するのに必要な委員会の人数

委員会(定数10)

委員長(与党) 与党委員 与党委員 与党委員 与党委員 与党委員
        野党委員 野党委員 野党委員 野党委員 野党委員

これが基本的に最低限法案を通すことができる委員の数です。この場合野党が反対しても与党と野党で賛否が同数になり、その場合は委員長が賛否を決めることになります。もしこれを割ってしまえば、たとえ与党が過半数を占めていても委員会ごとに野党の協力がないと国会運営は難しくなります。

絶対安定多数(261)

委員長(与党) 与党委員 与党委員 与党委員 与党委員 与党委員
        与党委員 野党委員 野党委員 野党委員 野党委員

 全ての委員会で最低これくらいの与党議員がいる状態が絶対安定多数です。ちゃんと説明すると、各委員会で委員の数でも野党を上回り安定的に国会を運営できる議席数、ということになります。あくまでこの場合の「安定」は政府与党視点から見た話です。

3分の2ライン(圧倒的多数)(310)

 これは最近では憲法改正の議論の時によく出てくる数字です。憲法改正を発議して国民投票にかける場合は、衆参両院の3分の2以上の賛成が必要となってきます。そのためメディアでは憲法改正に前向きな勢力「自民党」「公明党」「日本維新の会」「国民民主党」などが3分の2を占めるかを注視する向きもあります。ただ憲法改正については党内でも分野ごとに賛否が分かれる場合も多く、果たして政党の枠組みだけで判断していいのかは疑問が残ります。また、憲法改正をめぐる国会の議論は政局などと連動して非常に混乱しやすいので、3分の2を占めたら即改憲に繋がるかというとそうとも言えません。いずれにせよ広範な合意形成の努力が求められます
 ちなみにもし来年の参院選で衆参ねじれ(衆院で与党過半数 参院で野党過半数)が起きた場合はこのラインは重要になってくるのですが、それはまたいつかご紹介します。

現状

現状の議席数だと、自民党公明党の与党は「安定多数」「絶対安定多数」を確保し3分の2にはわずかに届いていません。一強多弱と言いますが、そういった言葉がふさわしい国会の勢力図となっています。ただ、世論調査では「与野党伯仲」を求める声が多くなっており、実際世論調査でも自民党は議席を減らすことが濃厚と言われています。今回は世論調査ごとに与党の議席数が大きく異なる読めない選挙と言われていますが、「絶対安定多数」「安定多数」ともに割り込む可能性があります。

 そうなると、国会の景色は大きく変わります。まず野党の議席が増えることで野党の委員長ポストが増えます。与党委員長は与党に甘く、野党委員長は与党に厳しいと単純化はできませんが、残念ながら与党に対して甘く公平とは言えない、と野党から批判を浴びた委員長もいました。どうせ法案が通るから、ということで数に任せた乱暴な国会運営を批判されたこともありました。これらは安倍菅政権でのことであり岸田政権がどのような国会運営をするかは未知数ですが、「過半数を握っていればどうせ強行採決で全部決まって野党は何もできないんだろ」ということではありません。
 国会において基本的に野党はブレーキが大きな仕事です。与党はアクセルが仕事です。勿論与党内でブレーキをかけたり野党から政策のアクセルをという視点も重要ですが、この基本的なポジションはやはり忘れてはいけません。

 ブレーキ役にもいろんな種類はあります。立憲、共産、国民、維新。それぞれ野党の中でも動きは様々に異なり、どのブレーキ役を望むかは人次第だと思います。どう違うのかわからないという人も多いかもしれませんので、その辺は特別国会以降一緒に見ていきましょう!

 ただ、今の与党の国会運営に不安がある。ちょっと賛同できない法案も数の力で決まってしまう、ということに不安を持っている方は、政権交代をしないでも与野党伯仲ということによりブレーキ機能を強化することはできる、ということは頭の片隅に置いておいて頂ければなと思います。

 まあ、与党支持者の方は迷わず与党に入れることが正解だとも思います。その上で、今後自民党側がどのようにして国会に臨むのか、見守っていただければ嬉しいです。その上でダメだと思ったら参院選は別の政党に入れればいいだけの話ですもんね。やり直せるのが民主主義のいいところです。

 また、与野党抜きにして少数政党にも重要なポイントはいくつかあります。その一つが、20名という数字です。

 衆院で20名を超えると、議員立法を提出することができます。議員立法は政党ごとに提出するものではないですが、20名以上の議員を抱える政党であれば他党の協力を得なくても自党の議員だけで議員立法を提出することができます。これらが実際に審議され成立するかはまた複雑な要素が絡んできますが、政党にとっても議員立法は大きなアピールになり、またその作成のために大きな経験を得ることができるので、20名に満たない政党にとっては20名は大きなポイントと言えるでしょう。

 本当に大事なこと

 色々とまとめてきましたが、一番大事なのは投票した候補と政党を覚えておくことだと思います。自分が入れた候補や政党が国会でどういうことをやっているのか、自分の地域を取り上げてくれたりするのか、それに興味を持つことが政治参加の第一歩です。とにかく、どういう基準でもいいので投票して、その結果を追いかけ続けましょう

 今どういう基準でもと言いましたが、できるだけお願いしたことがあります。それは白票を入れないことです。正直、白票を入れたくなるという気持ちはわかります。相応しい候補がいない、という意思表示になはるかもしれません。ですが、白票は選挙に一切影響を及ぼすことはありません。政治家の多くは白票は気にしません。なので、できればよりマシな方を選ぶ、なんとかいいところを探してみる、そして入れた候補を覚えておく、それだけでも立派な政治参加です。

 ちなみに投票するときは、あまり余計なことは書かないようにしましょう。投票所に書いてある候補者名や政党名をそれぞれそのまま書くのが無難です。立憲民主党と国民民主党は今回略称が同じ民主党なので、どちらかの政党に入れたいとはっきりしている場合は、政党名をフルネームで書くと問題ありません。(なぜこうなったかは少しややこしいので省きます)

まとめ

さて、ここまで

死票
戦略投票
政権交代
安定多数
絶対安定多数
3分の2ライン
20名(法案提出権)
投票先を覚えておくこと 
白票

と九つのポイントを上げてきました。最後に10個目、最後の道しるべを発表したいと思います。それは、開票特番を見ることです。
 残念ながら今の日本は選挙期間中の報道より開票特番の方が内容が濃い、と色々なところで指摘されています。ただ、開票特番はそれだけ各社気合を入れて取材をし政治家のあらゆる面を掘り下げようと頑張っているのも事実です。なので、これを見て政治家の色々な一面を知ってもらって、「ゆる国会」に繋げて頂ければなと思います。

おまけ ここの有権者さんは特に注目!接戦区リスト!!

今回の選挙、色々と言われていますが、かなり接戦区が多く選挙後のことが全く見えない状態です。なので今回投票に行けば大きく政治を変えることが可能となっています。
各社接戦区が多すぎて把握できないと思うので、様々な調査を参考にこちらで本当にどちらが勝つかわからない接戦区を44ピックアップしました。是非開票特番、そしてその選挙区の方は投票の参考にしてみてください

▶︎北海道
北海道3区 北海道6区 北海道10区
▶︎東北
青森1区 秋田1区 秋田2区
▶︎北関東
茨城5区 茨城6区 茨城7区 栃木4区 埼玉1区 埼玉3区 埼玉8区 埼玉15区
▶︎南関東
神奈川4区 神奈川5区 神奈川7区
▶︎東京
東京5区 東京10区 東京15区 東京22区 東京23区
▶︎北陸信越
新潟3区 石川3区 福井2区 
▶︎東海
岐阜4区 静岡6区 静岡8区 愛知1区 愛知4区 愛知5区 愛知9区
▶︎近畿
滋賀4区 京都4区 大阪7区 兵庫6区
▶︎中国
岡山3区 岡山4区 鳥取2区
▶︎四国
愛媛3区
▶︎九州沖縄
福岡2区 長崎3区 鹿児島1区 沖縄4区

これ以外にも自民党甘利幹事長の神奈川13区はじめ多くの選挙区が接戦となっており当落が全くわからない状態です。今回ほど票の入れがいがある選挙はなかなかないので、みなさん是非選んできてください!


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