『ビジュアルで覚える IELTS基本英単語』の著者 嶋津幸樹インタビュー(転載記事)
世界最大の教育機関ピアソンが選んだ、アジアNo.1英語教師の嶋津幸樹。彼の著書数として9冊目、IELTS特化の英語教材としては4冊目となる新刊『ビジュアルで覚える IELTS基本英単語』がジャパンタイムズ出版より発売となりました。今回の新刊を執筆することになった動機やこの本の特徴についてインタビューしました。
そもそもこの本を執筆することになったきっかけは?
IELTSの指導をしているときにあることに気がついたのです。それはどうしてもIELTS7.0を超えない生徒の共通点として基本英単語を適材適所で使えていないこと、低頻出語彙は知っているけど適切なアウトプットができていないため違和感のある表現を使ってしまうことです。この2点を解決する教材が存在していないことに気づき、その内容をまとめた書籍を執筆することにしました。
基本英単語を適材適所で使えないとは具体的にどのようなことですか?
先日あるビジネスミーティングに参加している時にアメリカ人の方にHand it off to you.って言われたんですね。この表現はビジネスではよく使いますが、「コントロールや責任をあなたに引き渡す」という意味で、「次に話をしていいよ」という意味合いが込められています。名詞形のhand(手)は当たり前に知っているかもしれませんが、このhandを動詞形にして様々なコンテクストで使うのは意外に難しいことなのです。Hand it off to you.というある種の命令文はIELTSでは使う頻度が少ないため、今回の本には掲載していませんが、例えばIELTSスピーキングでは過去のある出来事について描写することが求められます。買い物をした時の描写をするときに「手ぶらで出かけた。」という表現をhandを使って咄嗟にI went out empty-handed.と表現することが英語学習の上級者でも難しいのです。IELTS7.0を目指すような上級者は数多くの難易度の高い語彙を覚えていますが、handのような基本英単語を使ってある意味シンプルな表現さえも出来ないことに気づいたのです。それは単純に英単語の学習=難しい英単語をたくさん覚えるという形式に慣れてしまっているからなのです。英語学習の上級者こそ、英語を母語とする小学生が使うような表現を意識的に学習する必要があると感じています。そのため僕が実際にIELTSスピーキングで8.5を獲得した時に使った表現や子どもの教材などで使われている一見簡単そうに見える表現をコロケーションと例文で掲載しました。「手をつなぐ」という表現も瞬時にhold handsとアウトプットできない英語学習者は基本英単語を徹底的に磨き直すことをオススメします。
確かに上級者ほど簡単な単語は軽視してしまうかもしれませんね。低頻出語彙を適切なアウトプットにできない理由は何なのでしょうか?
英単語には受動語彙(receptive vocabulary)と発表語彙(productive vocabulary)の2つの種類があります。受動語彙は見てわかる聴いてわかる語彙、発表語彙は話せる書ける語彙です。英語学習者の多くがこの受動語彙に偏り、どのような状況でどのように使うかなど、語法を意識して実際にアウトプットしてみるという作業を怠ってしまう傾向にあります。単純にrequirement=「必要条件」で覚えるのではなく、requirementといったらmeet the minimum requirement「最低限の必要条件を満たす」と瞬時にコロケーションの形で発表語彙に切り替えて頂きたいのです。meet the requirementではなくmeet the minimum requirementのように少し長めのコロケーションを意識して実際に試験で使われる場面を想定して後半は 10 の分野別に2000の英単語を厳選しました。
後半の分野別2000語彙では少し長めのコロケーションと短めの例文を掲載してアウトプットに繋がる構成にしています。Very few snakes are poisonous.のようにストーリー性のある内容と共に英単語を覚えることが有効とされています。1960年代に確立された理論で反義語や同義語を同時に提示すると学習者は習得するのが難しくなるというものがあります。そのため接頭辞で分別が付くもの以外は反意語を掲載していません。そしてストーリー性があるとはどういうことかというと例えば、Rabbits are fast and tortoises are slow.「うさぎは速くカメは遅い。」はfastとslowという対義語が同時に提示されていますが、ストーリー性があることで学習負担は減るということもあります。英単語帳を作る上で大切なことは対義語などを同時に示し学習者を混合させないこと、ストーリー性を持って関連付けて記憶に定着させる構成にすることです。ライティングの一般文(General Statement)で使えるような誰もが頷ける例文やIELTSやBBCなどで実際に使われたコロケーションを掲載しています。
全ての見出し語とコロケーション・例文には綺麗なイギリス英語の音声付きなので、見出し語と意味を黙読するだけではなく、見出し語を音声で聞いた瞬間にコロケーション・例文を口から出す練習を繰り返すとevaporate=「蒸発する」だけではなくevaporateと聞こえた瞬間にWater evaporates when heated.という例文が自然に口から出てくるようになります。
つまりアウトプットを意識して難しい単語も覚えていく必要があるということですね。その他に今回の新刊の特徴はありますか?
そうですね。まず基本英単語と共に数多くのビジュアルを掲載して文字ではなく視覚情報で英単語をイメージしてもらう構成になっている点です。類義語の微妙なニュアンスの違いを解説文と共にビジュアルで定着させることが出来ます。そして全ての見出し語にコロケーションと例文、そして同語源の英単語や必要最低限の派生語を掲載しています。
そして何よりも苦労したのが1つの見出し語からストーリー性があり印象に残りやすい物語文や解説文を大量に作成したことです。今回の執筆では、IELTS9.0を保持するGovindiさんに英文構成担当として関わっていただき、議論を重ねて、1つの単語から連想できる単語を書き出し、それを日本語と英語のコードスイッチング&コードミックシングという技法で文章を作りました。2020年の週末はこの例文選定と解説文に多くの時間を費やしましたが、理想的な内容が出来上がったと思います。
相当な時間をかけられたのが伝わります。それでは最後にIELTS受験者にメッセージをお願いします。
まずこのインタビュー記事をここまで読んで頂きありがとうございます。ここまで読んで頂いているということはIELTSのスコアを必要とし、英語を駆使して自分の好きなことを追求する準備をしている方が多いのではないかと思います。僕自身もIELTSを初めて受験するときにはネット上の情報を片隅から漁り、ありとあらゆる情報を掻き集め、独学でIELTS8.0を獲得しました。IELTSをこれから受験する皆さんには改めてどのような自分になりたいか、IELTSのスコアを獲得してどこで何をしたいかという目標設定をして頂きたいと思います。その段階で自分に足りない要素は何なのか?英語4技能のうちどの技能が弱点になっているのか?どのような学習法であれば夢中になって継続して頑張ることができるのか?目標達成に必要なことを洗い出し、現在の自分を見つめ直してみてください。まずはその目標と現在の自分の距離感を感じ取り、必要なアクションを取っていきましょう。日本で英語を学んできた方の多くはおそらく基本英単語を適材適所にアウトプット出来ない自分に気づくことと思います。そんなときには本書を手にとって頂き、スピーキングとライティングのアウトプット技能向上を意識した学習を行ってください。決してIELTSスコア獲得や英語学習という行為自体を目的にしてはいけません。その先にある、英語を使って自分の好きなことを好きな世界で成し遂げることを意識して学習を続けてください。今回の新刊が皆さんの夢の実現の一助となれば幸いです!
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