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コンサルテーション精神医学

むかし読んだ『ナースのためのリエゾン〜精神医学へのアプローチ〜』と言う名作があります。

保坂隆先生が南山堂から出版しています。

その本に、こんなことが書かれています。

軽度の脳血管障害で神経内科に入院中の60代女性の患者さんに軽度の振戦・歩行障害などのパーキンソン症状が出現したため、アーテンが処方されました。

数日後に、夜間に急にソワソワし始めて『下で家族が待っています。帰ります。』と言ったり、『天井に蛇がいます!』と大騒ぎし始めたとのこと。

下で家族が待っていますは妄想と考えられますし、その声が聞こえていたら幻聴ですね。

また天井に蛇がいますは、幻視です。

翌日この様なエピソードを覚えていなかったら(意識障害や意識混濁があると考えられたら)せん妄状態とも言えます。

原因は認知症があるのかも知れませんし、脳血管障害による器質精神病の可能性も否定出来ません。

ですが症状発現のタイミングを考えると、アーテンによるせん妄、すなわち薬剤性のせん妄が最も考えられます。

幻視・妄想→せん妄状態→薬剤性のせん妄

以上のことは、コンサルテーション精神医学の知識のある医師じゃないとわかりません。

神経内科医のみならず各科の医師は、自分が処方しているお薬で様々な精神症状が出ることを知らずに処方している医師が少なからずいます。

患者さんの看護をしている看護師でも、コンサルテーション精神医学の知識が無いと分からないことが多いですね。

精神症状のある患者さんは、必ずしも精神科の病棟や外来だけにいる訳ではありません。

これを知らない医師や看護師などの医療従事者は、残念ですが多いのが実情です。

経験年数の問題ではなく、薬と精神症状との関係の知識の有無の問題です。

コンサルテーション精神医学の知識のある医師はすぐに対応出来ますが、これを知らない医師や看護師は患者さんの精神症状に振り回されたり、精神症状のために医療従事者の指示に従えない患者さんを怒鳴りつけたりします。

これが、患者さんの虐待に繋がる一因です。

保坂隆先生のこの本には、臨床で診られる様々なケースが書かれています。

あなたが臨床で困らせられている患者さんには、もしかしたら何らかの精神症状が出ているのかも知れませんね。


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