見出し画像

大倉が脱皮するとき〜「大倉くん」から「たっちょん」へ〜

 「大倉忠義」という名前を"聞いたことがある"くらいの人からすると,その目に彼はどう映っているのだろうか.「美形」,「かっこいい」,「アイドル」,「シュッとしてる」.... 彼の出で立ちや容姿と関ジャニ∞というコミカル...だけどバンドもできてかっこいい曲も歌えてドラマにもたくさん出てるグループの両者に挟まれたとき,自身の所属するグループの「らしさ」とはギャップ的に「大倉忠義」はきっとポジティブに捉えられていることだろう.

 ボクも1eighterとしてこれらのたっちょんに関するイメージを支持したい.高身長で顔も小さくて足も長くて美声で...容姿や身体的特徴を見ると彼はアイドルになるべくして生まれてきたと言われても納得のできるアピアランスを誇っている.今や35歳を目前にして5人組の新生関ジャニ∞としてさらに目立つ存在となった彼は,髪の毛を赤く染めちゃったりなんかして,なかなか人を選ぶ髪色ではあるが,一切の不自然さなく自身に取り入れているところがやはり「どこまでもアイドルだなぁ...」と思わせられる.

 しかし,普段からエイトに接していない方は知っているだろうか.彼がかなりのゲラであるとこ,コスいとこ.ビビりなとこ,「手が変」なとこ....... **デビューしてから15,6年.その内の12年間エイトを見てきたボクは古参とみなされてもいいファン歴だと自分では認識している.熱量の上がり下がりはあれど,見守り続けることをやめず,関ジャニ∞,そして大倉忠義を眺め続けてきたボクが見るに,彼は良い意味で「変わった」**と強く思う.当時はそこまで認識していなかったが,ある時より前,彼は「アイドル」を演じていたのではないかと今では感じる.過去を遡れば遡るほどコミカルな毛色の強いグループのなかで,ボクの中では,たっちょんは最も嵐に近いアイドルだとみなしていた.

 もちろん,今でも彼は類稀なるアイドルであると心から強く確信している.ただ,今の彼が表している「アイドル」というのは,これから述べていく,従来の“作り込まれた”アイドルというよりも“本人が本来的に持ち合わせている”アイドルというのを表現しているのではないだろうか.今回のnoteでは大倉忠義というアイドルが作り込まれたアイドルという皮から脱皮して,ありのままの大倉として人前に立つようになったのではないかというボクのこの予測を筋立てて考察していきたいと思う.

「大倉くん」時代

 昔から彼は「大倉」とか「たっちょん」とか「たつ」とか色々なあだ名が存在していたが,ボクがエイトにハマった2008年小学6年生のときに抱いていた彼へのイメージは「大倉くん」だった.というのも,エイトが世間に知らしめられる一発目のシングル曲『無責任ヒーロー』をテレビで披露したりPVを見たりすると,ちゃらけたメンバーたちが大勢いるなかで大倉はシュッとしてる感じというか,PVのなかではシャツ出しでお菓子食べてるショットもちょいちょいあるけれど「基本、イケイケサラリーマン」といった印象を感じた.

 ボクが当時購入した初回限定盤Bには関ジャニ∞の2008年の夏ライブツアーで披露されたユニット曲が収録されており,大倉は錦戸とデュオを組み,名曲『torn』を長野ビッグハットで披露したものが入っていた.エイトのなかでもとりわけイケメンな2人による大人なダンスナンバーは錦戸はじめ,彼らが持ち合わせているかっこよさをさらに引き立たせ,この初回限定のDVDを見てボクのなかでさらに「大倉くん」みが強くなっていったのである.(ちなみにこれを視聴していた当時のボクはなぜか亮ちゃんのカッコよさの裏に潜んでいるギャップ的な可愛さを小6にして既に見出していたので「なにカッコつけてんだよー笑」と密かに笑っていた).

 「大倉くん」みをさらにさらに強化させたのは『無責任ヒーロー』がリリースされるちょい前に放送されたドラマ『ヤスコとケンジ』だ.このドラマはTOKIOの松岡昌宏が主役を張った恋愛漫画を実写化したものであり,多部未華子演じる女子高校生・沖康子が,ある時を境に通い出した塾で椿純というイケメン高校生に一目惚れし,恋愛へと持ち込もうと努力をするのだが,松岡演じる康子の兄の沖健児(少女漫画を描く漫画家)が妹の康子を守ろうとあの手この手で強引に遂行するのだが,まあ色々と空回りしてしまうという,ドキドキもするし笑いもあって見てて飽きない物語である.イケメン・エリート高校生として大倉は椿純を演じるのだが,さすが原作が少女漫画.この時の彼の髪型は茶髪のミディアムストレートでベージュ目のYシャツとネクタイ(制服)(しかもネクタイは緩めずにちゃんと結んできちっとしてる),土日の塾のときはださすぎずかっこよすぎない「ザ・高校生が着そうな服」を着こなし,周囲にいる人々をその存在だけで魅了させてしまうほどの威力をもった,まさに「美少年」という表現が当てはまる爽やかな高校生なのである.いくらドラマとはいえ、ここまでのかっこよさを表現できるのはその役柄を演じる大倉が持ち合わせる本来的なかっこよさに他ならない.松岡演じる暴力的な,というかそんな表現には収まりきらない元暴走族・総長の沖健児に色々と振り回されるがクールにそれをひゅるりと穏便にやり過ごす彼からは優しい美少年高校生はもちろん,内面的な人の良さをも当時のボクは感じられた.

 思えば2008年は関ジャニ∞にとっても大倉自身にとってもかなり大きな1年だった.『無責任ヒーロー』で大ヒットを飛ばすことはもちろん,大倉はこの年に初めての自身のソロコンサートツアーを敢行した年でもあった.普段はチームで動いているメンバーがソロライブを開くとき,決まって最初のツアーでは歴代のジャニーズメドレーをやったり,東山さんや光一くんに示されるような和をモチーフにしたパフォーマンスを後輩が披露するのがなんとなくボクのなかで慣例になっていると勝手に思っているのだが,その例に洩れず大倉もそれを引き継ぎ,パーカッションという自身の得意分野を生かし,太鼓パフォーマンスを披露するなどまさにジャニーズ的な“ソロ”ライブを行うのであった.

 今回の節にもあるように「大倉くん」と言いたくなってしまうようなザ・アイドルな雰囲気をこのライブ・コンサートでも惜しげなく披露していた.その最たるものが今の彼にとってもしかしたら黒歴史になっているであろう『だってアイドルだもん』というCD未収録の彼のソロ曲である.この曲を知っているeighterはそうそういないとは思うが,とりあえず百聞は一見に如かず.この曲の歌詞に注目してほしい.

だってアイドルだーもん
大 大 大 大 くーまー
だってアイドルだーもん
L・O・V・E おおくーらー
 キュートでプリティー
誰にも負けないよ
 Uuuuuu.....Wow! たっちょん♡

 _________

 好きな食べ物は カレーライス
朝 昼 夜 いつでもカレーライス
バカだと言われても 食べ続けるよ
だって美味しんだもん!

 僕の趣味は ピクニック (ピクニック)
リュックにおやつを 入れてピクニック

 好き 好き 好き 好き イチゴキャンディー
虫歯が出来ても 食べ続けるよー
だってだって 甘いんだもん!

 hey!hey!.....hey!

 だってアイドルだーもん
大 大 大 大 くーまー
だってアイドルだーもん
L・O・V・E おおくーらー
おちゃめで ぶりっこ
おなかが空いちゃったよー
 Uuuuuu.....Wow! たっちょん♡

 _________

 hey!hey!hey!hey!hey!
(hey!hey!hey!hey!hey!)
hey!hey!hey!hey!hey!
(hey!hey!hey!hey!hey!)
hey!hey!hey!
(hey!hey!hey!)
hey!hey!hey!
(hey!hey!hey!)
hey!hey!hey!hey!hey!
(hey!hey!hey!hey!hey!)

 _________

 そりゃ寂しい夜だってある
そんな時は ママにチュウしてもらうんだ
でもごめんね、ママよりも
大好きな子がいるんだ
それは やっぱり クマたん♡♡♡

 _________

 だってアイドルだーもん
大 大 大 大 くーまー
だってアイドルだーもん
L・O・V・E おおくーらー
おちゃめで ぶりっこ
おなかが空いちゃったよぉーーWow!

 たっちょん♡
たっちょん♡
たっちょん♡
たっちょん♡

 ここまでブリブリなアイドルを演じられると「ザ・アイドル」というよりも,芸人のゆってぃ並みにどこかぶっ壊れてるのではないかと思わせられてしまうほどの何かを感じずにはいられないが,ポップでかわいい曲調に載せたこの歌詞を彼はピンクのパジャマみたいな衣装を着て,さらさらミディアムロングの髪型でゆさゆさと髪を揺らしながらブリブリに歌って踊る彼(当時23歳)はまさにアイドルであった.それはもう,ハラスメントを感じさせるほどのアイドルだ.

 良い意味でも悪い意味でも彼の歴史にあるこの作り込まれた精巧なアイドル像は2008年2009年を境にどんどんと薄まっていったように感じる.まあ,この期間があまりにも濃すぎたといっても過言ではないが,彼は徐々に自身の本質的なところから大倉がグループで担う「アイドル」としての表現を掌握していくのである.それが具体的にちゃんと見えたのはテレビ朝日で放送されていた関ジャニ∞のレギュラー番組『関ジャニの仕分け∞』なのである.

「たっちょん」時代

 前節では「大倉くん」時代といういわば“作り込まれたアイドル”を表象してきた彼だが,関ジャニ∞のなかの大倉忠義,「たっちょん」として初めてメインのスポットライトを浴びたのが『関ジャニの仕分け∞』で,ここでありのままの彼を大衆向けの番組のなかで見ることができたということについて述べていきたい.

 『仕分け∞』が始まって当初は深夜に放送され,テレビ局の会議室をなんとなく番組用にセットし,番組側が用意した問題をもとにメンバーたちが「ある/なし」や「できる/できない」という選択肢から1つを選び,不正解を選んでしまった者には女性からのビンタを喰らうなどの罰ゲームを受けるというごく単純なバラエティ番組だ.今までに出された問題は様々に存在しており,例えば100円グッズと1万円グッズを仕分けるものであったり,プロが作った料理と素人(スタッフ)が作った料理の仕分けであったり,はたまた20代女性と40代女性を仕分けるもの(失礼!)もあった.

 なかでもファンが特に注目を集めたのが「ジャニーズ愛仕分け」であった.この仕分けではジャニーズの先輩にあたるグループやアーティストの代表曲のなかからクジで一曲が選抜され,その選抜された曲をメンバーがカラオケで歌唱し,穴抜きになった歌詞を自身で当てはめてちゃんとその曲を知っているかどうかを試される企画であり,歌詞の3箇所が穴抜きになっているけれどきちんとそこを埋め合わせ歌いきることができたら「ジャニーズ愛あり」,1箇所でもミスってしまうと「ジャニーズ愛なし」と判定されてしまう割と残酷な企画だ.とはいえジャニーズ事務所はJr.時代に様々な先輩の楽曲をカバーし,特にその先輩グループの代表曲というものは何度も何度もテレビやライブなどで披露するため,そこまで難しい問題でもない.しかしながら,そう難しくない問題であるが故にミスった時のリスクは計り知れないということで緊迫した空気感のなかその歌唱を見守り,そして成功する姿や時に失敗する姿を見る/見てしまうというのがこの企画の見どころだ.

 この企画はゴールデンの枠に移行しても尚続いたものではあるが,なんといってもこの現場における大倉の姿は特に見どころであった.普段はシュッとしてる感じで,このような状況のなかでもサラッと立ち振る舞ってサラッと成功するイメージを持たれていることだろう.しかし,いざ蓋を開けてみるとそれとは真逆で,メンバーの誰よりも緊張し,そしてメンバーの誰よりも分かりやすくビビり散らす.とりわけ順番を決めるくじ引きで大倉が一番最後を引いてしまったときは本当に面白く,メンバーが自身の番が来た際に1人またひとりと消えていくにつれて表情を段々と曇らせていき,そのメンバーが見事歌いきって成功を迎えるという誰もが安堵し,その成功を讃えるシチュエーションのときでさえも,待機室のなかで暗い表情を浮かべてモニターを眺める姿がそこにはあった.これを見ていると,まるで失敗してくれたほうが自身が失敗したときに仲間がいて安心するという,非常に人間らしい姿を見出せるのだが,その姿を大倉が見せているというところがまたエモみを感じてしまう.

 番組が深夜からゴールデンに移って移行もこの企画は何度か放送されたのだが,ここで大倉は別の企画でさらに注目を集めるようになる.それが有名なアーケードゲーム『太鼓の達人』を使った企画「最強アーティスト軍団にリズム感対決で勝てるか仕分け」である.関ジャニ∞のなかでドラムを務める大倉はそのリズム感を生かし,この企画をきっかけに「太鼓の達人」がめちゃくちゃ上手いことが判明し,トーナメント戦通じてチャンピオンを獲った彼は多くの防衛戦を行うこととなる.放送時間が土曜日のゴールデンということもあり,そしてリズム感を測る際に用いるツールが子どもに人気な『太鼓の達人』ということもあり,ここで大倉の知名度はグンと上がったのだ.当時彼は様々なメディアで「最近子どもたちから「達人!達人!」と声をかけられる」と口にしていたものだった.それくらい影響力のあるゲームであるが故に本人はじめ大倉以外のメンバーたちも固唾を飲んでチャンピオンとしての称号を防衛する姿を見届けていた.

 演奏を開始する前の大倉は「ジャニーズ愛仕分け」同様ビビりまくるのだが,いざ始めると顔は真剣そのもので,ほとんどの回において彼はパーフェクトを収め,完封勝利を収めるのであった.まさにここで,彼の「たっちょん」み溢れる人間らしい姿を目撃できるのと同時に,なんやかんや優勝してジャニーズアイドルの「たっちょん」も見れる神企画であった.

 彼が直接こう言及したワケではない(少なからずボクは聞いたことがない)のだが,この企画を経験したことによって彼のメディアのなかでの振る舞いに大きな変化が生じた気がする.それまでは演技でカバーしていた自身の本業である「アイドル」を表現していたのだが,「ジャニーズ愛仕分け」や太鼓の達人を使った「リズム感対決仕分け」という強制的でありながらとてつもなく大きなプレッシャーを抱いた状況のなかで様々な修羅場をくぐり抜けてきた彼は,もはや演技では覆い隠すことのできない自分らしさでもって成功と失敗を経験してきた.それでも特に「リズム感仕分け」ではビビりながらも子どもたちに尊敬されるくらいの実力を披露してきた彼はきっとそれまでには味わえなかったタイプの快感を味わったことだろう.『関ジャニの仕分け∞』がゴールデンに移ってからはeighterにとって大変面白い企画も多く放送されたが,回を重ねていく毎に段々と企画が単調化してしまい,その企画というのも関ジャニ∞らしさを引き出せるものではなかったために番組は段々と沈み行く感じで終わってしまったが,大倉にとってこの番組は大きな転換点になったに違いない.

「大倉くん」が『関ジャニ∞クロニクル』に出ているところを想像できる!?

 今回のnoteで伝えたかった「『関ジャニの仕分け∞』で大倉って変わったよね.ありのままの姿になったよね!」という主張の裏付けは前節で語ったので,最後にここでは節のタイトルにもある『関ジャニ∞クロニクル』と大倉について考えてみようと思う.

 200X年の時期は特に大倉はまさにアイドルとしての「大倉くん」時代であった.しかしながら,『クロニクル』をちゃんと観たことある方ならご存知の通り,ここでの大倉は非常に自由奔放で人間味が溢れているのだ.名企画「いきなりドッヂ」では姑息で裏ありまくりな大倉をみることができたり「女心を理解出来るか?」では丸ちゃんに対しては喧嘩っ早いところを見せたり「イケメンカメラ目線スポーツ」ではパッと見,グループのなかで1番2番くらいにかっこいい容姿を誇っているのに,いざスポーツをしながらカメラに移る彼を見てみると二日酔いみたいな顔になっていたり,おしっこ漏らしてそうな顔になっていたり,エロいことする前の顔になっていたり....そして毎回手が変になってしまったりポンコツなところをたくさん見せてくれた.これを受けて拗ねてしまったり猛抗議したり喜怒哀楽の激しい彼であったが,果たしてこの姿を200X年のときに見ることはできただろうか.また,考え方を変えてそんな当時の彼が『クロニクル』に出ていたら,このような素の表情や言動をしていただろうか.

 1eighterとしてこれを考えたとき,その答えは「No」である.ここまでの素の姿を見せることはきっとなかっただろう.しかしながら,もちろん今も含めて,彼は飾らず(「飾らなさすぎ」なときもちょいちょい笑)eighterたちに笑顔を届けてくれる.その転換点は一体どこなんだろうと考えたとき,ボクの頭の中では今では遠い過去の歴史とされている『関ジャニの仕分け∞』であると感じるのである.この番組がなかったら大倉は一体どんなアイドル/人間としてカメラの前に立っていたことだろう. 

 笑顔も怒りも苦しみも何もかもを包み隠さず表現する大倉の姿を見て,ふとこんなことを考えるのである.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?