深夜に英語会議に呼び出されて赤ちゃんになってきた
午前0時にいきなりteamsのWeb会議の召集が掛かってきたので参加したらおれがほとんど関わっていない仕事の英語会議でした。こんな最悪の異世界転生あるか?
仕事を終え、レモンサワーをあおりながら優雅に退勤後の時間をAPEXとかいう大量ストレス&人生破壊ゲームで浪費していた折、いきなりteams会議の召集がかかった。
担当者と電話が繋がらない為におれが雑に一次対応をしたシステム障害についての対策会議だったようだ。相変わらず担当者と連絡が取れない為おれが呼び出されたらしい。
おれはそのシステムについての理解はほとんど素人同然で、それこそ会議に呼び出した所で赤ちゃんが会議に参加しているようなものなのだが、仕方ないので参加することにした。
参加者を見るとほとんどの参加者が外国人だった。急に大量のアルファベットが視界に入ってきて困惑したおれは、何はともあれ一言「ハロー」とだけ言い残し、光よりも早く自分のマイクをミュートした。
この英語会議に対するビビり加減から察せる通り、おれは英語がすこぶる苦手で、1ヶ月間本気で対策をして望んだTOEICでは500点しか出せなかった。大学5年生の時に受けたので、だ。
「心を閉ざそう」
おれは英語会議に何かの間違えで巻き込まれた時は、いつもそう考えるようにしている。心が開いているから、会議で何も喋れない情けなさや、会議の内容を理解しようという焦りを感じるのだ。心を閉ざせば良い。限りなく英語のように聞こえる川のせせらぎだと思えば、英語会議など屁の突っ張りもいらない。
そう決心した矢先、その会議に参加していたおれの上司が突然
「kokimu(仮名) san, do you have any comment?」
と、おれにエニーコメントを求めてきた。
突然のコメント要求に全身が粟立った。コメント・・・?は・・・?おれはただランクマで勝ちたいだけなんだが・・・?
しかし上司から振られたコメント、他の参加者もおれのコメントを聞く為に黙っているこの状況、ダンマリを決め込むにはあまりにも分が悪い。
やるしかない・・・イチかバチかそれっぽいことを言うしかない。
レモンサワーでレモンになった脳をフル回転させてコメントを捻り出す。
「I don't have comment.」だ。これで行こう。
これならなんか相手もそれ以上踏み込めないし、会議の流れも切らない。
そう決心してマイクのミュートを解除し、渾身のI don't have comment.を放つ。果たしてお前らにこれが避けられるかな?
放った後、しばしの沈黙。やったか・・・?
通信ラグにしては長すぎる沈黙の後に上司が口を開いた。
「Oh terrible noise...I muted him...」(多分こんな感じだったと思う)
気づくと、おれのマイクはおれのが操作していないにも関わらずミュートになっていた。
ハッ・・・!これは・・・!
社用PCに接続している自分のイヤホンを見る。
これつい最近洗濯した奴だ・・・
これは・・・生き残ったか・・・?
マイクトラブルともなれば相手も無理にコメントは振れない。
相手はノイズに耐えながらおれの英語を聞くか、おれを最初から存在しない物として会議を進行する二択しかない、この二択で前者を選ぶようなバカは社会人にはなれない。
おれは勝ちを確信し、レモンサワーの2本目を開けた。会議は進行しているが、もうおれには関係ない。おれのプライドと精神衛生はノイズによって守られた。
その後、おれの存在を黙殺した会議は非常にスムーズに進んだ。
日本人の上司と海外担当者が互いに流暢な英語で、状況確認をしていた。
なるほど・・・
これは・・・
この会議におけるノイズは、おれか・・・
完全に全てを理解したおれは、深く考えるのを辞めて残ったレモンサワーを飲み干した。
おれは少しだけ泣いていた。
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