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A Shifting Design / Kurt Rosenwinkel の分析 1
カートの名曲、A Shifting Designのトランスクライブをしているので記事にしていこうと思います。
Star of Jupiter (2012)のテイクを見ていきましょう。
この曲は1コーラス34小節と少し変則的な小節数を持つ、複雑なコード進行でSwingするカートの名曲です。
歪んだギターでこのコンテンポラリーなチェンジを高速でスウィングしながらメロディを紡いでます。
カッコいい…
前テーマ、1コーラス目です。
いきなり難解です。この曲のキーはいったい何なんだ?という感じです。曲の冒頭から速いサイクルで(この場合は2拍ごと)で、わざと関係の遠いハーモニーを置いていくというのは、コルトレーンのGiant Stepsに似てますね。メロディの中心はEっぽいです。
平行移動
同じコードの形を平行移動させていく、という手法はこの辺りのコンテンポラリージャズではよく出てきます。開始8小節の中だけでもこれだけ出てきます。
平行移動することによって、1つのキーのダイアトニックなサウンドから逸脱することができる、特殊なハーモニーへと動くきっかけを音楽的に作ることができる、という利点があります。サウンドも印象的ですし。
アナライズ 1-8小節
なんとなく理由付けができそうなコードを分析してみました。
譜面右側(3,4,7,8小節)はEbのメジャーからEbのマイナーに行っています。おそらくこれは前述の平行移動によって生まれたのだろうと思います。F→E♭→C#、G→F→E♭と長2度で平行移動していますね。
5,6小節目はいろいろな見方ができそうですがBメジャーとその派生として見るのがラクだと思います。コードのルートはBメジャーのⅡ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴと上行していて、Ⅲではセブンスコードに、ⅣはBmエオリアンへのモーダルインターチェンジ、Ⅴ7はオルタード系とそれぞれ変化していると見ることができます。
9-14 小節
リフです。この曲の後半にも登場します。2つ目のコードなのですが、とても難しいです。メロディーもA♭ですし、譜面にあるような単純なDmでは決してないと思いますが、詳しくは後述するのでここではこの表記で済ませます。
メロディーはDm系にブルーノートを足したと考えると自然なのではないでしょうか。最後にある、Fのトライアドがいいですね。リフを切り裂いて次の展開へもっていく力があります。F/G。Susだ。
ここでブレイク。印象的でカッコいいメロディが炸裂して曲の後半へとなだれ込んでいきます。
ここもすごいことになっています。#と♭が混じって見づらいのが申し訳ないですが、コードがEメジャーとF#メジャーで平行移動している中で、メロディはA♭メジャーを高らかに歌っています。当然ながら一つのメジャースケールの中では説明がつきません。一瞬一瞬でサウンドが成り立つように音を選んでいるのでしょう。
Eメジャーのコードの上では、A♭メジャースケールをソ、レ、ラと完全4度ずつ下がっていて、それぞれコードのM7,#11,♭9(!)となっています。
メロディーが四度進行して、一瞬とは言えルート音と半音でぶつかる。メカニカルかつやばい雰囲気がします。
F#メジャーのコードの上ではA♭のミドソとメジャートライアドを弾いていて、これは比較的容易に説明がつきます。ルートの全音上のメジャートライアドは元のコードの9,#11,13となり、リディアン系のサウンドとなります。
このフレーズ、1下りの音の塊のトップノートを見ていくとA♭のソ、ミ、レ、ドと下がっています。こういうのもクリシェと言っていいんですかね。
そして書いていて気づいたのですが、このフレーズ、ペンタしか使ってないんですね。ギターを持つと、とりあえず歪ませて弾きまくりたくなるあのペンタと同じサウンドとは思えません。すごいです。
今回はここまでにして、前テーマの後半は次回になります。
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