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一口楽曲分析Vol.3 Chocolate insomnia/神前 暁

本日の一口楽曲分析はアニソン!
尊敬する神前 暁先生の一曲で、アニメ〈物語〉シリーズ セカンドシーズン『猫物語(白)』の主題歌、「chocolate insomnia」です。


物語シリーズはアニメとしても素晴らしい作品です。子供でも大人でもない時期の若者はすべからく見るべきです。自分も全部見ました。まだ観てない人は是非みて!
Netflix「〈物語〉シリーズ セカンドシーズン」
https://www.netflix.com/title/80992195?s=i&trkid=13752289

自分は『猫物語(白)』の放送をリアルタイムで見てまして、そのクオリティの高さに感動した記憶があります。第一話が始まり今作の主人公である羽川翼の独白のシーンの後に挿入されるオープニング(これも映像作品として素晴らしいんだ!)を見てまず、すげー!と思ったのが今日取り上げたい最後の3小節なんですね。

今までの羽川翼のキャラソンから大きく変化し、明るくアップテンポな曲調で盛り上がっていく曲を締めくくる一フレーズなんですが…
まずはアニメーションの流れの中で見てみてほしいですね。

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爽やかで、鮮やかだ… アッという間も無く一瞬で綺麗に終わりまで持っていかれて、これは上手く一本取られましたね!という感じです。
詳しく見てみましょう

ハーモニー

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コードを見てみるとE♭のダイアトニックは無視して、Maj7の連続のみで構成されています。Maj7って爽やかなサウンドでいいですよね。
カート・ローゼンヴィンケルの記事でも言いましたが、何かのコードの形を平行移動することで、コード同士のつながりを自然に聴かせながら、ダイアトニックなコードの体系から逸脱することができるんですね。



今回の移動のルールとしてはE♭のⅣから始めて、四回四度進行すれば♭Ⅱに辿り着くので、そこから裏コードの様に半音下に最終的に解決する、という仕組みになっています。
今回のことから私が学ぶべきことは、四度進行し続けていればいつかは目的地にたどり着く、ということです。

リズム

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曲全体としては4/4の8ビートなのですが、サビを経て盛り上がってこのエンディングに突入すると、8分音符3つ割のリズムにバンド全体でリズムをキメます。コードの変わり目と小節の頭がズレていますね。
そのリズムの力の作用によって強制的に意識をハッとさせられるんですね。
今まで4分でノッていたところから、付点四分という少し飛距離のあるジャンプをすることになり、その4回のジャンプの後、最後の4部音符2つでエネルギーを貯めて、最後のトニックである明るいE♭Maj7へ羽ばたいていくんですね。(ここ、映像でも羽川が翼をもって羽ばたいていくシーンになっていて、映像と音楽がしっかりリンクしています)

蛇足ですが…

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この平行移動のコード、ノンダイアトニックであるならば、どのスケールから来ているのか?ということを図の様にモーダルインターチェンジを使って説明することも、一応可能です。メロディーもその場所でのスケール構成音内の音になっていますね。
しかしまあ、おそらく最初にあったアイデアはMaj7を平行移動させてみたらどうなるだろう?というとこから来たものでしょうし、これは後付けの理屈でしょうね。
ただ、もしこの進行の上でアドリブをするのであれば、このようにE♭の何のスケールに切り替わっているのか把握するのはすごく役に立つでしょう。


いかがだったでしょうか。今日はこの辺りで終わりにしましょう。ありがとうございました。
皆さんも物語シリーズ観ましょう!

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