#59 あいつ

4年になって、はやくも2か月が過ぎた。りこらのクラスでは、昼休みにババ抜きなどのトランプゲームもしている。ゲームは、男女混合でやっているとのことだった。りこに聞くと、「今のところ、女子はまとまってるわ。去年と比べて、男子はおとなしいわ。去年は男子とはよくもめたわ。けど、去年の男子のほうがけんかのやりがいがあったわ。」と言って、去年のことを話し出した。

飼育係のりこらが大切に世話をしているカナヘビに、「こんなカナヘビどうでもいいわ」とあいつが言った。それが原因で、りこらのグループとあいつらのグループとの口論は、業間中続いた。次の授業の前に、先生が「かわいそうなことは言わないこと」と男子に言ったので表面上の対立は終わった。次の業間にも、りこらはあいつらの不満を言い合った。「先生のいる時と、先生のいない時とでは、私らに言うこと違うわ。」「あいつ、先生が来たらコロッと態度を変えるからな。」「ま~、カナヘビのことは、先生が怒ってくれたのでスカッとしたわ。」などと話をした。

やがて終りの会の時間になった。先生は「今日の宿題は漢字ドリル25ページです」と言った。りこは『算数の時間に、算数ドリルも宿題にするで~と言っていたのに・・・。ラッキー♡』と思って、隣に座っているさきちゃんを横目で見て、小さくガッツポーズをした。「では、帰りの用意をしましょう」と先生が言った。その時だった。「先生、算数ドリルの宿題は?」とあいつが言った。「よく言ってくれましたね。先生が忘れていました。みんなもう一度連絡帳を出して、追加して書いてください。算数ドリル10も宿題ですよ・・・。忘れないように・・・。書きましたか?。それでは終わります。さようなら」

「今日の宿題は、国語だけやったのに・・・」「余計なこと言わんといたらいいのに・・・」「ほん~まに、腹立つわ」「あいつら、絶対許せへん・・・」終りの会が終わり、廊下でりこらの女子グループは集まってつぶやいた。

「おじいちゃん、今の話は、ほん~の一つやで・・・」とりこは語気を強めて言った。

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